文:マック・バーネット 絵:ジョン・クラッセン 訳:なかがわちひろ 出版:あすなろ書房
二人の男の子が、庭に穴を掘り始めた。
縦に掘ったり、横に掘ったり。
ずっとまっすぐ掘ってれば、宝が見つかるのに・・・。
あらすじ
月曜日。
男の子のサムとデイブはイヌと一緒に、おじいちゃんの家の庭に穴を掘った。
二人は、すごいものを見つけるために、深くまで掘った。
でも、何も出てこないので、穴の中で休憩することにした。
あとちょっと掘れば、下には巨大な宝石がある。
休憩が終わり、今度は横に掘ろうということになった。
綺麗に宝石を避け、横に掘っていく。
あと少し横に掘れば、さらに巨大な宝石がある。
しかし、二人は、二手に分かれ、デイブは斜め上、サムは斜め下に掘ることにした。
またもや、宝石は見つからない。
こうして掘り続けた二人。
疲れ果て、穴の中で少し眠ることにした。
二人は深い眠りについた。
そして・・・。
『サムとデイブ、あなをほる』の素敵なところ
- ギリギリ避けていくやきもき感
- 長くなっていく迷路のような穴
- 少し怖くて不思議な結末
ギリギリ避けていくやきもき感
この絵本は、ひたすら穴を掘っていく物語です。
すごいものを見つけるために掘っている男の子。
実はその凄いものは、すぐ目の前にあります。
掘っている穴のすぐ横。
掘るのをやめた地面の真下。
でも、二人からは見えません。
この二人と、読者の目線が違うのが、この絵本のとても面白いところです。
掘っていく先の宝石を見て、
「あ!宝石がある!」
「あとちょっとで、つくよ!」
という読者。
でも、それを知らない二人は、気ままに方向転換してしまいます。
それを見て、
「えー!?あとちょっと掘ったら見つかったのに!」
と、やきもきするのです。
見つかる宝石がどんどん大きくなっていくのも面白く、
「今度はさっきより大きい!」
と、次こそ見つかる期待感と、それを器用に避ける二人の残念さが癖になります。
長くなっていく迷路のような穴
また、宝石に気をとられているうちに、どんどん長くなっていく穴も面白いところです。
縦に掘ったり、横に掘ったり、斜めに掘ったりと、まるで迷路のように続いていく穴。
改めて振り返ると、どれだけ深くまで来たのだろうと、心配になります。
地上なんてもちろん見えません。
子どもたちも、宝石の件がひと段落すると、
「すごい深いけど、帰れるのかな?」
「モグラさんが、助けに来てくれるかも」
と、その深さを改めて感じます。
少し怖くて不思議な結末
しかし、そこで終わらず最後まで描かれるのも、この絵本の素敵なところ。
だけど、そこに不思議なパラドックスが忍ばせてあります。
なんとなく見ると、
「不思議な穴だったね」
で、終わります。
でも、ページの色々なところをよーく見てみると、様々な違和感が・・・。
穴のこと、違和感のこと、サムとデイブのその後のこと・・・。
色々なことを深く想像してみると、なんだかゾワっとしてきます。
『世にも奇妙な物語』的な怖さが感じられるのです。
二言まとめ
軽ーく読むと、二人と読者のジレンマが楽しい、少し不思議なお話です。
でも、深ーく読むと、最初の場面と最後の場面の違和感がとっても怖いお話です。
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