きえたぐらぐらのは(4歳~)

絵本

文:コルネーリア・フンケ 絵:ケルスティン・マイヤー 訳:あさみしょうご 出版:WAVE出版

グラグラした歯は、大きくなった証。

抜けるのが、とっても待ち遠しい。

でも、遊んでいる時に歯が抜けて、そのままなくなってしまったから、さあ大変です!

あらすじ

お姉ちゃんのアナの歯は、三日前からグラグラしていました。

アナは「抜けた歯を、枕の下に置き寝ると、翌朝、歯の妖精がプレゼントをくれる」と、楽しみにしていました。

前の歯が抜けた時もそうだったからです。

アナが弟のベンにその話をすると、ベンは海賊にもグラグラの歯があるかを聞きました。

ベンは海賊ごっこが大好きだったからです。

アナは、「海賊にもあるかはわからないけど、ベンはもう少し大きくならないとグラグラにはならない」と、答えました。

話が終わると、二人は海賊ごっこを始めました。

しかし、海賊ごっこをするうちに、ベンがアナのお茶会セットなどをひっくり返してしまいました。

アナはベンに「赤ちゃんみたいなことをしないで!」と言いました。

これがいけませんでした。

ベンは、赤ちゃんと言われるのが大嫌いだったのです。

怒ったベンは、無茶苦茶に暴れました。

逃げるアナ。

その時、アナはぬいぐるみにつまずき転んでしまいました。

そして、気が付くと歯がなくなっていたのです。

アナは泣き出しました。

部屋を探しますが、散らかり過ぎて見つかりません。

その騒ぎを聞きつけて、ママがやってきました。

事情を伝えると、ママはベンも一緒に探すよう言いました。

でも、ベンは「嫌だ」と言い、ロフトベッドの下に座り込みました。

ママはアナと2人で、ひとまず部屋を片付けることにしました。

やっと部屋が片付きましたが、歯は見つかりません。

そこでママは「おもちゃの歯を枕の下に入れてみてはどうか」と提案しました。

アナは少し不安でしたが、やってみることにしました。

そして、ベンとはチョコレートで仲直りすることに。

アナとベンは、無事仲直り出来るのでしょうか?

また、おもちゃの歯でも妖精は来てくれるのでしょうか?

『きえたぐらぐらのは』の素敵なところ

  • 歯が抜ける、誇らしさと嬉しさが詰っている
  • アナとベン、両方の気持ちに寄り添った解決法
  • 物語以外の楽しさが詰った絵

歯が抜ける、誇らしさと嬉しさが詰っている

この絵本には、歯が抜ける嬉しさが詰まっています。

それは大きくなった誇らしさと、妖精からのプレゼントという楽しみがあるからでしょう。

物語の中でも、何度も口の中を確認したり、歯を下で触ってみたりと、抜けるのが待ちきれない気持ちが伝わってきます。

同時に、ベンがとても羨ましそうにしいる姿から、小さい子からの歯が抜けることへの憧れが伝わってくるのです。

歯がグラグラすると、不安になる子もいますが、この絵本を読めば、歯が抜けるのが楽しみになるかもしれません。

アナとベン、両方の気持ちに寄り添った解決法

さて、そんな歯ですが、姉弟ケンカの最中に、なくなってしまいます。

いくら探しても見つかりません。

ベンは意地を張っているし、アナは落ち込んでいるしで、最悪の状況です。

そんな中でのお母さんの関わりが、この絵本のとても素敵なところです。

アナへはおもちゃの歯を提案し、アナの「妖精にばれないか」という不安や、弟への不満をしっかりと受け止めつつ、解決していきます。

特に、

「ちょっと乱暴な弟がいるのは、アナのせいじゃないでしょう?」

というセリフが、とても優しく素敵です。

これを聞いて、アナも、

「その通りだ。ベンがいるのは私のせいじゃない。誰かのせいだとすればママのせいだ。」

と、心が落ち着き、不満も薄らいでいきます。

また、ベンへもチョコレートでの仲直りを提案し、責めることはしません。

ベンの性格をわかっているからでしょう。

それに、歯が抜けることへの羨ましさがあったことを感じていたから、それ以上なにも言わなかったのかもしれません。

さらに、仲直りチョコレートの後の、ベンへの関わりも本当に素敵。

アナも、ベンも、今回のことが気持ちの成長に繋がっているだろうなと、思えるものになっています。

物語以外の楽しさが詰った絵

そんな優しく、素敵な物語ですが、面白さは物語だけではありません。

実は、その背後でこっそり行われている物語があるのです。

それが、部屋に散らかったぬいぐるみたち。

こっそり、自分たちで動いています。

お茶会のテーブルに、自分たちでお茶を入れ、姉弟の海賊ごっこを眺める。

海賊ごっこに巻き込まれたライオンを、おもちゃの救急車で救助する。

など、別の物語が展開されているのです。

ぬいぐるみに注目して、ページをめくっていくだけで、別の物語が楽しめてしまうほど、しっかり物語性があるところが素敵で面白いところです。

二言まとめ

歯がなくなる事件を通して、姉弟の心の動きがとてもよく見える。

もうすぐ歯が抜けるという、嬉しさと誇らしさと、それを見る羨ましさが詰っている絵本です。

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