とびらのむこうにドラゴンなんびき?(4歳~)

絵本

作・絵:ヴァージニア・カール 訳:松井るり子 出版:徳間書店

13人の小さなお姫様。

散歩先で大きな優しいドラゴンを見つけます。

そのドラゴンを、内緒でお城に連れていきましたが・・・。

あらすじ

昔、ある国のお城に侯爵と侯爵夫人と、13人のお姫様が住んでいました。

ある日、13人のお姫様は森の手前の野原まで、遊びに行くことにしました。

出かける前に、お母さんの侯爵夫人と約束をしてから。

約束は3つ。

森には入らないこと。

陽が沈むまでには戻ること。

動物は決して連れてこないこと。

13人は大きな声で返事をすると、出かけていきました。

野原に着くと、12人のお姫様たちは、楽しく遊び始めました。

でも、末っ子のガンヒルダは、楽しくありません。

そして、一人で森の小道に入っていってしまいました。

森を歩いていると、茂みの隙間から炎が見えます。

なんと、そこにいたのはドラゴンでした。

だけど、とっても優しそう。

ガンヒルダはドラゴンを追いかけっこに誘うと、ドラゴンも楽しそうに遊び始めました。

その頃、12人のお姫様は、ガンヒルダがいないことに気付きました。

ガンヒルダを呼ぶと、出てきたのはドラゴンです。

背中にはガンヒルダが乗っていました。

最初は怖がっていたお姫様たちでしたが、すぐにドラゴンと仲良くなりました。

ドラゴンに家がないことを心配したお姫様たちは、お城へドラゴンを連れていくことに決めました。

お母さんとの約束があるので、こっそりと・・・。

お姫様たちは、ドラゴンを、お城で一番高い塔へ連れていきました。

それから一週間。

誰にもバレませんでした。

ごちそうを食べ、居心地よく過ごしたドラゴンは、どんどん太っていきました。

8日目の夜、塔から炎が出ているのを、侯爵夫人が見つけました。

火事だと思い大急ぎで、塔に向かうと、そこにいたのはドラゴンです。

それを聞きつけ、侯爵も大慌てで駆けつけます。

そこでやっと、お姫様たちがドラゴンを連れてきていたことが発覚しました。

侯爵はカンカンです。

ドラゴンは広い野原に返してあげることになりました。

しかし、大きく太ったドラゴンは、押しても引いてもお腹がつっかえ、塔から出てこれなくなっていたのです。

どうやっても、塔から出すことが出来ず、数日が経ちました。

ドラゴンはさらに食べて、さらに太っていきます。

そして、ある朝・・・。

『とびらのむこうにドラゴンなんびき?』の素敵なところ

  • 気持ちいいくらい約束を守らないお姫様たち
  • とても優しいお父さんとお母さん
  • 自然と数えたくなる楽しい作り

気持ちいいくらい約束を守らないお姫様たち

この物語は、13人のお姫様が、散歩に出かけるところから始まります。

散歩に行く前には、しっかりと、わかりやすいお約束もしていきます。

特に動物を連れて来ない約束では、すでにお城にいるたくさんの動物の名前まで上げて念をおされます。

すでに、13種類もいるのですから・・・。

でも、あろうことか、ドラゴンを連れて帰ってきます。

そこには一片の迷いもありません。

一応、こっそりとバレないようにはしていますが。

この迷いのない、おてんばさが、この絵本の魅力なのだと思います。

そして、他の子でも、優しいドラゴンがいたら「絶対飼いたい!」と言うことは間違いないでしょう。

そういうところに、思い切り共感出来る所も、この物語に入り込んでしまう理由なのだと思います。

とても優しいお父さんとお母さん

さて、ドラゴンがお城にいることを知ったお父さんとお母さんは、もちろん怒ります。

しかし、その理由は約束を破ったことではありませんでした。

それもこの絵本のとても素敵なところです。

お父さんは言いました。

「ドラゴンの気持ちも考えなさい。ここは狭いし、外の方がお前たちとも、もっと愉快に遊べるじゃないか」と。

お母さんも言います。

「かわいそうに。森をのんびり歩きたいでしょうね」と。

ドラゴンの気持ちに寄り添った叱り方をするのです。

ここから、お父さんとお母さんの優しさがとても伝わってきます。

ただ、今回のドラゴンは、外で遊べないことよりも、美味しいケーキをたくさん食べられることを喜んでいるというのが、面白いところではあるのですが。

自然と数えたくなる楽しい作り

そんな、ドラゴンの行く末が気になる物語ですが、楽しいのは物語だけではありません。

随所に出てくる、つい数えたくなる作りも、この絵本のとても素敵で楽しいところです。

お姫様の数が13人と、とても多いこの絵本。

最初に、お父さんとお母さんが子どもを集めるのに、数を数えます。

すると、自然に子どもたちも、何人いるか数えたくなってしまいます。

ページの中を指差し確認しながら指折り数え、

「本当に13人いる!」

と、納得します。

13人分名前を呼べば、13個あるか確認したくなってしまいます。

また、お姫様だけでなく、随所に「たくさん」が出てきます。

お城にいるペットの数などです。

「たくさん」だけじゃなく、二人組なども出てきます。

二人組で散歩に行くので、13人だと一人余るのです。

すると、やっぱり自分で確認したくなり、

「ほんとだ!一人余っちゃう!」

と、納得。

「たくさん」が「楽しい」に繋がっているのです。

こうして、自然と数へ親しめるのも、この絵本の魅力だと思います。

二言まとめ

ドラゴンと仲良くなり、こっそり飼うという、やってみたいが詰まっている。

物語を楽しみながら、「たくさん」の数を数えたくなる絵本です。

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