なずずこのっぺ?(4歳~)

絵本

作:カーソン・エリス 訳:アーサー・ビナード 出版:フレーベル館

なずずこのっぺ?

これは昆虫語、虫たちの話す言葉です。

この絵本は昆虫語で描かれた、世にも珍しい絵本なのです。

あらすじ

地面から顔を出した植物の芽。

虫たちが集まって、話をしています。

話している間にも、どんどん伸びていく芽。

気付けば、虫たちよりも大きくなっています。

虫たちは、ダンゴムシの家を訪ね、梯子を借りることにしました。

芽に梯子をかけ、葉っぱの上に登り、本を読んだり寝転んだりとくつろぐ虫たち。

一夜明け、さらに大きくなった芽に、虫たちは木材やきのこ、ドングリなど、様々な材料を持って集まってきます。

そして、ツリーハウスのような秘密基地を作ってしまいました。

ですが、そこへクモが現れて、秘密基地を奪い、巣にしてしまったから大変です。

ガッカリする虫たち。

しかし、次の瞬間・・・。

『なずずこのっぺ?』の素敵なところ

  • なんと言っているのか想像するのが楽しい昆虫語
  • 言いたくなっちゃう昆虫語
  • 一本の植物の生涯を描いた物語

なんと言っているのか想像するのが楽しい昆虫語

この絵本のなによりの特徴は、昆虫語で描かれていることでしょう。

日本語は一つも出てきません。

「なずず このっぺ?」

「わっぱど がららん。」

「ムラジャランカ!」

これだけ見ると、訳が分かりません。

でも、お話の中で見てみると、なんとなく何と言っているかわかるのが、不思議で面白いところです。

それと、同時に正解がわからないのもおもしろいところ。

「これは何?って言ってるのかな?」

「来ないで!って言ってるんじゃない?」

など、それっぽいことはわかっても、本当にそう言っているかは誰にもわかりません。

きっとわかるのは、昆虫語博士くらいでしょう。

この、ああでもない、こうでもないと言いながら自分の中で翻訳するのが、この絵本でしか味わえない素敵なところです。

言いたくなっちゃう昆虫語

また、語感がよくて、言いたくなっちゃうのも昆虫語の楽しいところ。

どれもわかりにくいようで、いいやすい。

聞いていたら、自分でも言いたくなってしまう不思議な魅力が、昆虫語にはあります。

タイトルの「なずずこのっぺ?」を筆頭に、

「コーロージーン!」

「ずんずうううう!」

「じゃじゃこん!」

などなど、どれも言っていて、口が楽しくなるものばかり。

深く考えずに、真似して言うだけでも楽しいのもこの絵本の魅力でしょう。

一本の植物の生涯を描いた物語

さて、そんな言葉の楽しさが目立つこの絵本ですが、物語も深く、面白く、美しいものになっています。

それは自然界の時間の流れを感じる物語。

一本の植物の一生を描いた物語です。

一本の植物が芽吹いたことから始まり、その植物は虫たちの遊び場になっていきます。

やがて、クモが巣を張ったりと、色々な出来事がある中で、花を咲かせます。

もちろん、花が咲けば枯れる時が訪れます。

それとリンクするのが、虫たちの生活。

冬が近づいているのに、遊んでばかりもいられません。

楽しかった秘密基地生活も終わり、冬ごもりの準備に、花からは誰もいなくなります。

でも、春が来ると・・・。

というように、楽し気な命の輝き、その命が終わりに向かう儚さや物悲しさ、次へ繋がっていく連続性など、様々なものを一本の植物の一生を通して、感じられるものになっているのです。

二言まとめ

不思議で楽しい昆虫語で描かれたとっても変わった物語。

でも、その不思議さとは裏腹に、自然の中に流れる時間を感じとることの出来る、楽しく、儚く、力強く、美しい絵本です。

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