作:こじましほ 出版:文溪堂
カエルの観光バスはまさかのヘビ。
ヘビに飲まれて、身体の中から観光します。
どんな所も登れるヘビは、実は観光バスに向いているかも?
あらすじ
ヘビ観光センターには、今日もカエルのお客さんがいっぱいです。
ヘビ6号車の発車時間になり、お客さんが乗り込んできました。
口から入り、身体の中の窓のある座席に座ります。
発車すると、花畑のトンネルを通ります。
次にキノコの下を通り、モグラの家の中へ。
地上に出ると、民家の排水管を登って雨どいから、住んでいる街を一望します。
と、そこへ忍び寄る影が・・・。
背後からネコに襲われ、排水管へ落ちるヘビ。
地上に戻されてしまいました。
ネコがいるので、戻るわけにはいきません。
コースを外れたヘビは焦ります。
近道をしようと穴に入ると、そこにはコウモリがいて襲われてしまいます。
なんとか逃げ出しますが、イヌを踏んづけ、イヌにも追いかけられることに。
さらに逃げた先には、人間の子どもがいて捕まってしまったから、もう大変。
子どもはヘビの尻尾を掴み、グルグル回し、ポイッと投げ、ヘビはそのまま池の中へ・・・。
踏んだり蹴ったりのヘビは、無事コースに戻れるのでしょうか?
『へびかんこうセンター』の素敵なところ
- ヘビに睨まれないカエル
- ヘビ目線とカエル目線の同時進行
- 新たなコース提案書
ヘビに睨まれないカエル
この絵本でまず面白いのは、カエルとヘビの組み合わせ。
本来なら天敵であるカエルとヘビが、仲良くしているのです。
乗車の仕方も怖すぎて、ヘビが口を開け、その中にカエルが入っていくという仕様。
はたから見たら、カエルがヘビに丸呑みされている様にしか見えません・・・。
子どもたちも、
「ヘビってカエル食べるよ・・・」
「大丈夫かな?」
と、若干心配し始めます。
あえて、天敵同士をくっつけるという組み合わせが、この絵本の面白いところだと思います。
見ている人の不安はありながらも、バスは発車し、観光が始まります。
ヘビ目線とカエル目線の同時進行
この観光が特徴的で面白い。
観光中、ページの上部にヘビの言葉が、ページの下部に観光客の言葉が書かれているのです。
この作りで、特に面白くなるのがアクシデントに見舞われた時。
ネコに襲われ落ちるヘビ。
ページの上部で、慌てふためいています。
対して下部では、「ジェットコースターみたい!」と喜ぶ子ども。
落ちた後も、コースへ戻ろうと焦るヘビ。
対して、観光客は「もう一回やって欲しいな」と、思い切り楽しんでいます。
こんな風に、ヘビの心境と、観光客の心境が180度違うすれ違いが、とても面白く特徴的なところです。
新たなコース提案書
そんなアクシデント続きの観光でしたが、悪いところばかりではありませんでした。
知られざる名所が発見されたり、いい所もあったのです。
そのいい所を、今回だけで終わらせないのが、このヘビのすごいところです。
絵本が終わった後に、新しいコースの提案書が出来ているのですから。
きちんと、今回危なかったところを修正し、新しく見つけた名所を織り込んだ新コース。
アピールポイントや、写真まで添えてあります。
転んでもただでは起きない前向きさと、プロ根性が垣間見える提案書も、この絵本のとても素敵なところだと思います。
二言まとめ
運転手とお客さんの気持ちを、同時進行で見ることが出来るのがユニークで面白い。
アクシデントあり、発見ありの、とっても楽しい観光が出来る絵本です。
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