ゆうれいなっとう(4歳~)

絵本

文:苅田澄子 絵:大島妙子 出版:アリス館

世にも恐ろしい幽霊納豆。

糸を引くたび「う~ら~め~し~や~」という声が聞こえてきます。

その声が、本物の幽霊よりも怖いのです。

あらすじ

男の子のだいくんは、お母さんとスーパーにやってきました。

スーパーの納豆コーナーで、だいくんは見たことのない納豆を見つけます。

ふたには「ゆうれいなっとう」と書いてありました。

納豆が大好きなだいくんは、こっそり買い物かごに入れました。

家に帰り、早速ゆうれいなっとうを開けてみます。

すると、中は普通の納豆。

ガッカリしつつも、納豆を混ぜていると、「ひゅう~、どろどろどろ~」という音が。

そして、糸を引いたそのとたん・・・。

「う~ら~め~し~や~」という、もの凄く怖い声を出したのです。

おまけに納豆が大きくなっていくではありませんか。

「怖すぎて食べられない」と、だいくんが困っていると、目の前に本物の幽霊が現れました。

その幽霊に、平気で話しかけるだいくん。

幽霊が「怖くないの?」と驚くと、ゆうれいなっとうの方が怖いといいます。

信じない幽霊に、だいくんが納豆の糸を引くと恐ろしい声。

幽霊も負けじと怖い声を出しますが、全く勝負になりませんでした。

悔しくて怒った幽霊は、納豆を一口パクリ。

その美味しいこと。

幽霊は悔しいのも忘れて笑顔です。

でも、美味しいだけではありませんでした。

納豆を食べてから、幽霊が怖い声を出すと、納豆と同じくらい怖い声が出たのです。

怖がるだいくんに、幽霊が納豆を勧めます。

だいくんは渋々食べてみましたが、その美味しいこと。

納豆を食べた後、だいくんも怖い声を出してみると・・・。

本当に怖い声になっているではありませんか。

この発見に、幽霊は大喜び。

仲間の幽霊にも食べさせるため、だいくんを連れて幽霊の国へ飛んでいってしまったのです。

だいくんと、ゆうれいなっとうは一体どうなってしまうのでしょう。

『ゆうれいなっとう』の素敵なところ

  • 幽霊と納豆のまさかの共通点
  • 怖い所はちゃんと怖い豊かな表情
  • 幽霊たちとの楽しい時間

幽霊と納豆のまさかの共通点

この絵本で、まず面白いのが幽霊と納豆のコラボレーションです。

全然関係なさそうな、この組み合わせ。

パッケージは妙に凝っていて、置いてあったら思わず手に取ってしまうくらい魅力的なものの、なんで幽霊と納豆なのかわかりません。

しかし、開けて混ぜ始めると、その相性の良さにビックリします。

混ぜて段々どろどろになっていく納豆。

それとともに「ひゅう~、どろどろどろ~」。

確かに違和感がありません。

極めつけは、箸で納豆を持ち上げ糸を引いた時。

粘る糸とともに、「う~ら~め~し~や~」という、恐ろしく粘りのきいた怖い声。

これも物凄く自然に感じます。

そう、納豆と幽霊って結構似た者同士だったんです。

そんなまさかの繋がりに気付かせてくれるのが、この絵本の面白くて素敵なところです。

怖い所はちゃんと怖い豊かな表情

さて、この絵本は面白いだけではありません。

ちゃんと怖いのも素敵なところ。

納豆の声のエフェクトが、まずおどろおどろしい。

さらに、大きくなっていく納豆の怖さはまさにホラーです。

だけど、これだけではありません。

納豆を食べた人は声だけじゃなく、表情も恐ろしくなってしまいます。

美味しさににっこりした可愛い顔からの・・・、

「う~ら~め~し~や~」という恐ろしい顔。

急にホラーなタッチになるのでびっくり。

和んできた子どもたちも、

「うわっ!」

「怖いよ~!」

と、目を背けたり、隣の子へ避難したり。

かなりちゃんと怖がっていました。

このコロコロ変わる表情の豊かさと、メリハリがとても素敵で面白いところです。

幽霊たちとの楽しい時間

そんな幽霊納豆を持って訪れた幽霊の国。

ここでのひと時は、友だちと遊ぶかのように楽しいものでした。

周囲はとてもおどろどろしいのに、笑顔で楽しそうな幽霊たちとだいくん。

さらには親友同士と言った、幽霊とだいくんの仲のよい姿。

前半の怖さはどこに行ったのかというくらい、ほのぼのしています。

終わった後も、心がなんだかほっこりするのです。

怖さとほのぼの感のバランスも、この絵本の素敵なところなのだと思います。

二言まとめ

食べる前も、食べた後も、本気の怖さが詰った幽霊納豆。

読めば怖いもの見たさに、納豆を開けねばねばさせたくなってくるホラーな絵本です。

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