文:苅田澄子 絵:大島妙子 出版:アリス館
世にも恐ろしい幽霊納豆。
糸を引くたび「う~ら~め~し~や~」という声が聞こえてきます。
その声が、本物の幽霊よりも怖いのです。
あらすじ
男の子のだいくんは、お母さんとスーパーにやってきました。
スーパーの納豆コーナーで、だいくんは見たことのない納豆を見つけます。
ふたには「ゆうれいなっとう」と書いてありました。
納豆が大好きなだいくんは、こっそり買い物かごに入れました。
家に帰り、早速ゆうれいなっとうを開けてみます。
すると、中は普通の納豆。
ガッカリしつつも、納豆を混ぜていると、「ひゅう~、どろどろどろ~」という音が。
そして、糸を引いたそのとたん・・・。
「う~ら~め~し~や~」という、もの凄く怖い声を出したのです。
おまけに納豆が大きくなっていくではありませんか。
「怖すぎて食べられない」と、だいくんが困っていると、目の前に本物の幽霊が現れました。
その幽霊に、平気で話しかけるだいくん。
幽霊が「怖くないの?」と驚くと、ゆうれいなっとうの方が怖いといいます。
信じない幽霊に、だいくんが納豆の糸を引くと恐ろしい声。
幽霊も負けじと怖い声を出しますが、全く勝負になりませんでした。
悔しくて怒った幽霊は、納豆を一口パクリ。
その美味しいこと。
幽霊は悔しいのも忘れて笑顔です。
でも、美味しいだけではありませんでした。
納豆を食べてから、幽霊が怖い声を出すと、納豆と同じくらい怖い声が出たのです。
怖がるだいくんに、幽霊が納豆を勧めます。
だいくんは渋々食べてみましたが、その美味しいこと。
納豆を食べた後、だいくんも怖い声を出してみると・・・。
本当に怖い声になっているではありませんか。
この発見に、幽霊は大喜び。
仲間の幽霊にも食べさせるため、だいくんを連れて幽霊の国へ飛んでいってしまったのです。
だいくんと、ゆうれいなっとうは一体どうなってしまうのでしょう。
『ゆうれいなっとう』の素敵なところ
- 幽霊と納豆のまさかの共通点
- 怖い所はちゃんと怖い豊かな表情
- 幽霊たちとの楽しい時間
幽霊と納豆のまさかの共通点
この絵本で、まず面白いのが幽霊と納豆のコラボレーションです。
全然関係なさそうな、この組み合わせ。
パッケージは妙に凝っていて、置いてあったら思わず手に取ってしまうくらい魅力的なものの、なんで幽霊と納豆なのかわかりません。
しかし、開けて混ぜ始めると、その相性の良さにビックリします。
混ぜて段々どろどろになっていく納豆。
それとともに「ひゅう~、どろどろどろ~」。
確かに違和感がありません。
極めつけは、箸で納豆を持ち上げ糸を引いた時。
粘る糸とともに、「う~ら~め~し~や~」という、恐ろしく粘りのきいた怖い声。
これも物凄く自然に感じます。
そう、納豆と幽霊って結構似た者同士だったんです。
そんなまさかの繋がりに気付かせてくれるのが、この絵本の面白くて素敵なところです。
怖い所はちゃんと怖い豊かな表情
さて、この絵本は面白いだけではありません。
ちゃんと怖いのも素敵なところ。
納豆の声のエフェクトが、まずおどろおどろしい。
さらに、大きくなっていく納豆の怖さはまさにホラーです。
だけど、これだけではありません。
納豆を食べた人は声だけじゃなく、表情も恐ろしくなってしまいます。
美味しさににっこりした可愛い顔からの・・・、
「う~ら~め~し~や~」という恐ろしい顔。
急にホラーなタッチになるのでびっくり。
和んできた子どもたちも、
「うわっ!」
「怖いよ~!」
と、目を背けたり、隣の子へ避難したり。
かなりちゃんと怖がっていました。
このコロコロ変わる表情の豊かさと、メリハリがとても素敵で面白いところです。
幽霊たちとの楽しい時間
そんな幽霊納豆を持って訪れた幽霊の国。
ここでのひと時は、友だちと遊ぶかのように楽しいものでした。
周囲はとてもおどろどろしいのに、笑顔で楽しそうな幽霊たちとだいくん。
さらには親友同士と言った、幽霊とだいくんの仲のよい姿。
前半の怖さはどこに行ったのかというくらい、ほのぼのしています。
終わった後も、心がなんだかほっこりするのです。
怖さとほのぼの感のバランスも、この絵本の素敵なところなのだと思います。
二言まとめ
食べる前も、食べた後も、本気の怖さが詰った幽霊納豆。
読めば怖いもの見たさに、納豆を開けねばねばさせたくなってくるホラーな絵本です。
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