再話・絵:石黒亜矢子 出版:長崎出版
仲の良い、大きなネコと小さなネコ。
でも、拾ったおにぎりの大小を巡って、大げんかしてしまいます。
そこで、賢いと評判のサルに相談しますが・・・。
あらすじ
あるところに、仲のいい大きなネコと、小さなネコがおりました。
いつも通り、一緒に遊んでいたある日。
2人は一つずつ、落ちているおにぎりを見つけました。
大喜びしたのも束の間、おにぎりを見せ合ってびっくり。
大きなネコの見つけたおにぎりはとても小さく、小さなネコの見つけたおにぎりはとても大きかったのです。
大きなネコは小さなネコが羨ましくなり、交換しようと言い出しました。
もちろん小さなネコは応じません。
2人は大げんかを始めてしまいました。
しかし、いくらけんかをしても決着がつきません。
そこで、賢いと評判のサルに相談し、解決してもらうことに決めました。
サルの住む高い木まで、頑張って歩きようやくたどり着いた2人。
サルを呼ぶと、木からするする降りてきて、2人の話を聞いてくれました。
話を聞いたサルは、秤を持ってきて言いました。
「大きさが違うからケンカするのだ。秤を使い、同じ大きさにわけてやろう」と。
2人は「名案だ」と、大喜びで賛成し、サルに分けてもらうことになりました。
さてさて、無事に同じ重さになるのでしょうか?
『おおきなねことちいさなねこ』の素敵なところ
- サルの気持ちいいほどの悪賢さ
- 哀愁漂う結末と教訓
- 色々な発見が楽しい森の中
サルの気持ちいいほどの悪賢さ
この絵本の醍醐味は、やはりサルの巧みな話術に、まんまと騙されてしまう場面でしょう。
最初から確信犯としか思えない、サルの流れるような話術。
もう、感心してしまいます。
そして、悪びれもせず、帰っていく姿。
これには、気持ちよさすら感じてしまうほどです。
子どもたちはすぐに感づいて、
「おにぎりなくなっちゃうよ!」
「あ~、どんどん小さくなる!」
と、焦りますが、無情に進んでいくお話。
このなす術がない感じも、この絵本の楽しく面白いところです。
哀愁漂う結末と教訓
そんな物語の結末は、とても哀愁漂うものになっています。
おおきなねことちいさなねこの、何とも言えない姿がとても印象的。
サルに頼む前に見せた、目の輝きはどこへやら。
がっくりと肩を落として、とぼとぼと帰っていくのです。
そして、最後に一言、教訓を残します。
その一言に、悲しみと、後悔と、やるせなさの全てが詰っているのがつらい・・・。
子どもたちも、
「仲よくしないとね・・・」
と、ネコたちの哀愁漂う背中から、悲しみを受け取っているようでした。
ただ、最後の最後に、ほんのちょっと救いがあるのも、この絵本の優しくて素敵なところです。
色々な発見が楽しい森の中
さて、物語も面白いのですが、たくさんの発見が隠れている絵も、この絵本の魅力です。
森の中には、色々な動物が暮らしています。
よく見ると、ネコ以外の動物たちも、色々なことをして、森の中で生活しているのです。
お母さんとはぐれるヒヨコ。
釣りをしているネコたちを、物陰から見ているオオカミ。
いい匂いにつられ、顔を出すモグラ。
ネコたちを隠れて見ているウサギに、隠れて近づくキツネ。
など、一つ一つのページに、さり気なく気になるものが描き込まれていて、物語そっちのけで気になってしまいます。
ページを見るたびに、新しい発見を楽しめるのも、この絵本の面白いところです。
二言まとめ
けんかを仲裁するサルの悪知恵に、見ている人は感心し、ネコたちは絶望する。
やっぱり、「仲良くした方がいいよね」と、心から思わせてくれる絵本です。
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