作:ミュン・スジョン 訳:河鍾基、廣部尚子 出版:ライチブックス
ひらひらと広がるスカート。
それがどんどん広がって、世界の果てまで届いたらなんて素敵でしょう。
そんなことを考えながら、生き物たちの生きる世界を、美しいスカートとして描いていく絵本です。
世界の果てまで届くかな?
あらすじ
女の子は考えた。
「わたしのスカート、世界の果てまで広がるかな?」
そこで、まずは色々な生き物のスカートを、見てみることにした。
ミツバチのスカートは、黄色い花のスカートだった。
スカートの中には、羊飼いの世界が広がっている。
世界の果てまで広がらないけど、いい匂いはどこまでも晴れやかに広がっていくみたい。
カエルのスカートは、蓮の葉のスカート。
スカートの中では、ドラゴンがお城に火を噴いている。
世界の果てまでは広がらないけど、女の子が雨宿りをするにはぴったりだ。
お花のスカートは、花瓶のスカート。
スカートの中では、昔の武将が馬に乗って走っている。
世界の果てまでは広がらないけど、花が咲くにはこれで十分。
テントウ虫のスカートは、木の実のスカート。
スカートの中では、魚やライオン、ヘビなどの色々な生き物が暮らしている。
世界の果てまでは広がらないけど、この実が大きくなったら、お日さまの光みたいに輝くよ。
鳥のスカートは・・・。
そして、わたしのスカートは・・・。
『せかいのはてまで広がるスカート』の素敵なところ
- 自分たちの生きる世界でつくられたスカート
- スカートの中に広がる色とりどりの世界
- 自分で作る自分のスカート
自分たちの生きる世界でつくられたスカート
この絵本で、最初に感じるのが、細かく描き込まれたスカートの美しさでしょう。
でも、ただのスカートではありません。
それぞれの生き物が生きる世界を、スカートにしているのです。
カエルなら、乗っている蓮の葉。
トラなら、住んでいる山が。
魚なら、腰をおろすサンゴ礁が、スカートになっています。
スカートの中には、山ならば色とりどりの自然が、サンゴ礁なら虹色のサンゴや海藻たちが描かれます。
そのスカートは、まさに幻想的と言った表現がピッタリでしょう。
見ているだけで、スカートの中に引き込まれるようです。
子どもたちも、ページとともにスカートが広がるたび、
「お山がスカートになってる!」
「きれ~い、こんなスカート欲しい!」
「ニモも、こういうとこ住んでるもんね!」
と、目を奪われているようでした。
スカートの中に広がる色とりどりの世界
でも、このスカートは美しさだけではありません。
楽しさも描き込まれているのです。
それが、スカートの中に広がるもう一つの世界。
ミツバチのはく、花のスカートの中では、羊飼いの世界が広がります。
羊飼いの女の子が羊を追い、羊たちは自由に走り回っています。
トラのはく、山のスカートの中では、古代中国のような世界が広がります。
武術家が、青龍刀を持って山を駆け回っているのです。
このように、スカートの中には別の世界が広がっていて、その物語性を想像するのもとても面白いのです。
「あ、これアリスだ!」
「モアナみたいな子がいるよ!」
「ドラゴンを倒しに行くところじゃない?」
と、子どもたちも考察がはかどります。
自分で作る自分のスカート
さて、最後に出てくるのが、女の子のスカートです。
色々な生き物たちのスカートを見てきました。
そして、自分のスカートに絵を描き始めるのです。
これが本当に素敵です。
これまで出会ったスカートたち。
見てきたたくさんの物語。
それらがあったからこそ、このスカートは完成するのだろうなと感じさせてくれます。
と、同時に自分の欲しいスカートや世界は、自分で作っていくものなのだとも感じさせてくれるのです。
スカートを通して、自分の世界を自分で作っていく姿が、とても素敵です。
二言まとめ
生き物たちが暮らす場所を、スカートに見立てて描いた美しすぎる世界。
その世界を通して、自分のスカートはどんなスカートなんだろうと、考えさせてくれる絵本です。
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