へんしん~すがたをかえるイモムシ~(4歳~)

絵本

作:桃山鈴子 解説・監修:井上大成 出版:福音館書店

イモムシは、サナギ、成虫と、次々姿を変えていきます。

その様子を、本物そっくりな絵で、描き出したこの絵本。

イモムシがチョウチョへと変身していく姿を、目の前に本当のイモムシがいるかのように、観察出来てしまうのです。

あらすじ

春のある日。

菜の花の裏に、小さな白い卵があります。

卵が黄色くなって来て、中から黄色いイモムシが生まれました。

卵の殻を食べ、葉っぱを食べ、大きくなったイモムシは、皮を脱ぎます。

そしてまた、食べて太って、皮を脱いで。

大きく育ったイモムシは、茎に登って体を糸でくくりつけます。

じっと待っていると、背中が割れて皮を脱ぎ、サナギになりました。

それから、サナギの色が変わって透けてきます。

すると、背中が割れて、中からチョウが現れた。

丸くなった羽を開くと・・・。

モンシロチョウ!

夏の朝。

サンショウの葉っぱに、黄色い小さなまん丸卵がありました。

だんだんと、卵に黒い模様が出てきます。

中から生まれたのは、黒いイモムシ。

卵の殻を食べ、葉っぱを食べて皮を脱ぎます。

すると、身体の色が緑色になってきました。

さらに食べ、皮を脱ぐと、身体はきれいな緑色に。

茎に登り、身体をしっかり糸でくくり、しばらく待ちます。

背中が割れ、皮を脱いだら、サナギになりました。

何日か経つと、緑のサナギは黒と黄色っぽい色に。

背中が割れて、中からチョウが出てきます。

シワシワの羽を開くと・・・。

ナミアゲハ!

秋になるとクズのつぼみに、真っ白な小さな卵。

今度はどんなイモムシが生まれてくるのでしょうか?

『へんしん~すがたをかえるイモムシ~』の素敵なところ

  • 産毛まで表現された絵のリアルさ
  • イモムシのことが好きになってくる文章
  • 同じイモムシなのに全然違う3種類

産毛まで表現された絵のリアルさ

この絵本を見てまず驚くのは、写真かと見間違うほどの、絵のリアルさでしょう。

足の一本一本はもちろん、産毛や、模様、サナギのしわに至るまで、本物にしか見えません。

虫が苦手な人は、ページを触るのもためらうことでしょう。

そのリアルなイモムシが、食べて、脱皮し、サナギになる様子は、まるで目の前に本当のイモムシがいるみたいです。

また、このリアルさのおかげで気づくことがたくさんあるのも、素敵なところ。

イモムシの後ろ足と前足の形の違い。

サナギの模様の中に、成虫の羽の形がある。

など、リアルだからこそ気付くことがあるのです。

子どもたちも、

「本当の葉っぱみたいな色になった!」

「毛が生えてるんだね」

「形が変わった!」

と、絵本を見ると言うより、生き物観察をしているようでした。

イモムシのことが好きになってくる文章

絵のリアルさが魅力的なこの絵本。

ですが、文章も同じくらい魅力的です。

わかりやすいのはもちろん、妙にかわいさがあるのです。

「はっぱをむしゃむしゃ」

「よいしょよいしょ皮を脱ぐ」

「うねうねうねうね、皮を脱いで・・・」

など、イモムシの健気さや、一生懸命さが伝わってくる擬音。

これがリアルな絵と合わさって、「頑張れ!」という気持ちが湧いてきます。

最初は、

「虫苦手~」

「うわ~、気持ち悪い」

と言っていた、虫が苦手な子たち。

でも、読んでいるうちに、そんな声も聞こえなくなり、

「大きくなったね!」

「チョウチョになれた!」

と、応援や成長を喜ぶ声に変わっていました。

虫が苦手な子にも、感情移入させてしまうのも、この絵本の魅力的なところです。

同じイモムシなのに全然違う3種類

さて、そんな魅力的なイモムシが、この絵本には3種類登場します。

春、夏、秋によく見かけるチョウの幼虫たちです。

モンシロ、アゲハ、シジミと、子どもに馴染みのあるチョウですが、幼虫の姿は中々知りません。

同じチョウなのに、イモムシの姿も、サナギの姿も全然違う。

これを比べられるのも、この絵本の面白いところです。

特にシジミチョウのサナギなど、知らなければチョウのサナギだと気付かないでしょう。

比べることで、生き物の多様さや、面白さに気付かせてくれるのです。

同時に見かけやすい幼虫だったりもするので、見つけた時の発見に繋がるのも素敵なところ。

ぜひ、葉っぱの裏を探してみてください。

二言まとめ

本物そっくりな絵で描かれる、3種類のイモムシたちが成長し、チョウになっていく物語。

読めば、イモムシのことが前よりも好きになり、本物のイモムシを探したくなる絵本です。

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