作:桃山鈴子 解説・監修:井上大成 出版:福音館書店
イモムシは、サナギ、成虫と、次々姿を変えていきます。
その様子を、本物そっくりな絵で、描き出したこの絵本。
イモムシがチョウチョへと変身していく姿を、目の前に本当のイモムシがいるかのように、観察出来てしまうのです。
あらすじ
春のある日。
菜の花の裏に、小さな白い卵があります。
卵が黄色くなって来て、中から黄色いイモムシが生まれました。
卵の殻を食べ、葉っぱを食べ、大きくなったイモムシは、皮を脱ぎます。
そしてまた、食べて太って、皮を脱いで。
大きく育ったイモムシは、茎に登って体を糸でくくりつけます。
じっと待っていると、背中が割れて皮を脱ぎ、サナギになりました。
それから、サナギの色が変わって透けてきます。
すると、背中が割れて、中からチョウが現れた。
丸くなった羽を開くと・・・。
モンシロチョウ!
夏の朝。
サンショウの葉っぱに、黄色い小さなまん丸卵がありました。
だんだんと、卵に黒い模様が出てきます。
中から生まれたのは、黒いイモムシ。
卵の殻を食べ、葉っぱを食べて皮を脱ぎます。
すると、身体の色が緑色になってきました。
さらに食べ、皮を脱ぐと、身体はきれいな緑色に。
茎に登り、身体をしっかり糸でくくり、しばらく待ちます。
背中が割れ、皮を脱いだら、サナギになりました。
何日か経つと、緑のサナギは黒と黄色っぽい色に。
背中が割れて、中からチョウが出てきます。
シワシワの羽を開くと・・・。
ナミアゲハ!
秋になるとクズのつぼみに、真っ白な小さな卵。
今度はどんなイモムシが生まれてくるのでしょうか?
『へんしん~すがたをかえるイモムシ~』の素敵なところ
- 産毛まで表現された絵のリアルさ
- イモムシのことが好きになってくる文章
- 同じイモムシなのに全然違う3種類
産毛まで表現された絵のリアルさ
この絵本を見てまず驚くのは、写真かと見間違うほどの、絵のリアルさでしょう。
足の一本一本はもちろん、産毛や、模様、サナギのしわに至るまで、本物にしか見えません。
虫が苦手な人は、ページを触るのもためらうことでしょう。
そのリアルなイモムシが、食べて、脱皮し、サナギになる様子は、まるで目の前に本当のイモムシがいるみたいです。
また、このリアルさのおかげで気づくことがたくさんあるのも、素敵なところ。
イモムシの後ろ足と前足の形の違い。
サナギの模様の中に、成虫の羽の形がある。
など、リアルだからこそ気付くことがあるのです。
子どもたちも、
「本当の葉っぱみたいな色になった!」
「毛が生えてるんだね」
「形が変わった!」
と、絵本を見ると言うより、生き物観察をしているようでした。
イモムシのことが好きになってくる文章
絵のリアルさが魅力的なこの絵本。
ですが、文章も同じくらい魅力的です。
わかりやすいのはもちろん、妙にかわいさがあるのです。
「はっぱをむしゃむしゃ」
「よいしょよいしょ皮を脱ぐ」
「うねうねうねうね、皮を脱いで・・・」
など、イモムシの健気さや、一生懸命さが伝わってくる擬音。
これがリアルな絵と合わさって、「頑張れ!」という気持ちが湧いてきます。
最初は、
「虫苦手~」
「うわ~、気持ち悪い」
と言っていた、虫が苦手な子たち。
でも、読んでいるうちに、そんな声も聞こえなくなり、
「大きくなったね!」
「チョウチョになれた!」
と、応援や成長を喜ぶ声に変わっていました。
虫が苦手な子にも、感情移入させてしまうのも、この絵本の魅力的なところです。
同じイモムシなのに全然違う3種類
さて、そんな魅力的なイモムシが、この絵本には3種類登場します。
春、夏、秋によく見かけるチョウの幼虫たちです。
モンシロ、アゲハ、シジミと、子どもに馴染みのあるチョウですが、幼虫の姿は中々知りません。
同じチョウなのに、イモムシの姿も、サナギの姿も全然違う。
これを比べられるのも、この絵本の面白いところです。
特にシジミチョウのサナギなど、知らなければチョウのサナギだと気付かないでしょう。
比べることで、生き物の多様さや、面白さに気付かせてくれるのです。
同時に見かけやすい幼虫だったりもするので、見つけた時の発見に繋がるのも素敵なところ。
ぜひ、葉っぱの裏を探してみてください。
二言まとめ
本物そっくりな絵で描かれる、3種類のイモムシたちが成長し、チョウになっていく物語。
読めば、イモムシのことが前よりも好きになり、本物のイモムシを探したくなる絵本です。
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