きょうりゅうがすわっていた(4歳~)

絵本

作:市川宣子 絵:矢吹伸彦 出版:福音館書店

赤ちゃんが生まれるのを家で待つお父さん。

その家の前に、突然恐竜が座り込んだ。

なぜそこにいるかはわからない。

これは、赤ちゃんが生まれた日の、お父さんしか知らない特別なお話です。

あらすじ

お父さんとお母さんと男の子の、3人家族がマンションに住んでいた。

クリスマスの日。

家族は、男の子の誕生日会をしている所だった。

お父さんは、男の子が生まれた時のことを話し始めた。

お父さんは、お母さんが病院にいる間、マンションに一人で住んでいた。

ある朝、朝ごはんを食べていると、後ろから窓を叩く音がした。

そこはマンションの10階。

怖くて振り向けずにいると、窓が開いて、後ろから熱い息が近づいてきた。

そして、ペロリと、サラダを食べてしまったのだ。

恐る恐る窓からのぞくと、下の交差点に恐竜が座っていた。

恐竜は葉っぱを食べていて、人間は食べないように見えた。

いくら待っても恐竜が動かないので、お父さんは勇気を出して会社に行くことにした。

お父さんは、恐竜が腹ペコになったら人間を食べるかもしれないと思い、キャベツを30個買って帰った。

恐竜にキャベツをあげると、あっという間に食べてしまった。

それから毎日キャベツを30個食べさせた。

それを見に、見物人も集まってきた。

だけど、恐竜は動かない。

お父さんと恐竜は仲良くなっていった。

クリスマスが来て、お父さんは小さなクリスマスツリーを買ってきた。

もうすぐ生まれる赤ちゃんのためだ。

そのツリーを恐竜に見せていた時、下の方から小さな声が聞こえてきた。

すると、ずっと座っていた恐竜が立ち上がった。

お腹の下には卵があって、恐竜の赤ちゃんが首を出している。

恐竜も、赤ちゃんが生まれるのを待っていたのだ。

お父さんが「おめでとう」と祝福すると、恐竜はお父さんを背中に乗せて、ゆっくりと歩き出した。

一体どこへ向かっているのか・・・。

『きょうりゅうがすわっていた』の素敵なところ

  • 恐竜とお父さんが、少しずつ心通わせていく日々
  • ずっと座っていた秘密。
  • 恐竜と同じ日に生まれたという素敵すぎるエピソード

恐竜とお父さんが、少しずつ心通わせていく日々

この絵本で、まず驚くのは、急に現れた巨大な恐竜の姿でしょう。

それはお父さんも同じです。

最初は怖くて振り向くことも出来ず、仕事に行くのもためらうほど。

お父さんの怖がり方が、物語に現実感を持たせてくれます。

でも、ずっと怖がっている訳ではありません。

キャベツをあげていくことで、徐々に仲良くなっていきます。

始めは、自分が食べられないためにあげていたキャベツ。

ですが、あげるのが当たり前になり、フンの掃除もするようになりました。

恐竜も、雨の日には長い首で屋根になってくれるなど、心の距離が近づいているのを感じます。

特にお父さんの表情の変化が素敵なのです。

最初は怖がりつつ、険しい顔で接していたお父さん。

次第に笑顔になり、クリスマスツリーを見せている時など、親友に話をしているかのような安心感があります。

この二人の絆が心を温かくしてくれるのです。

ずっと座っていた秘密。

さて、そんな恐竜が座り続けている秘密も、とても素敵なところです。

ずっと動かなかった恐竜が動いたのは、赤ちゃんが生まれた時でした。

クリスマスの日、下から聞こえてくる鳴き声。

それを聞いて子どもたちも、

「赤ちゃんあっためてたんだ!」

「お父さんと一緒だ!」

と、大喜び。

生まれた赤ちゃんを見て、「かわいい~」と嬉しい悲鳴。

とっても幸せな秘密に、「そういうことか!」という納得感と、無事に生まれた嬉しさが湧きあがっている様でした。

恐竜と同じ日に生まれたという素敵すぎるエピソード

そして、もちろんこのお話は、男の子が生まれた日の話。

恐竜と一緒に、男の子も生まれています。

6歳の誕生日会で教えてもらった、お父さんしか知らない素敵なエピソード。

自分が恐竜と兄弟のような気分。

嬉しくないはずがありません。

そんな嬉しい中での最後の場面。

お父さんの一言と、裏表紙の絵の繋がりがとても素敵です。

裏表紙を見た時に、ひとりの女の子が、

「わ~・・・」

と、目を輝かせながら、言っていてのが印象的でした。

二言まとめ

お父さんと、大きな恐竜が仲良くなり、心が通じ合っていく姿に心温まる。

男の子が生まれてくる時に起きた、特別で素敵な誕生日のお話です。

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