作:くさかみなこ 絵:品田紗桜里 出版:文研出版
森のように大きなネコ。
その背中には木が生え、本当の森になっていきました。
いつしか、ネコの背中だとは気づかずに、動物たちが住み着くように。
ネコも動物たちも幸せに暮らしていましたが・・・。
あらすじ
あるところに、大きな大きなネコがいました。
生まれた時は普通のネコでしたが、成長するうちに木より大きくなってしまったのでした。
森のように大きくなったネコを、他の動物たちは「もりねこ」と呼び、怖がるようになりました。
そのため、もりねこはいつも一人ぼっちでした。
もりねこの毎日はいつも同じです。
昼間は森の中で眠り、暗くなると海へ行き、魚を捕まえお腹いっぱい食べるのです。
ある、寒い日のこと。
小鳥たちが飛んできて、もりねこの背中に住み着きました。
そこがもりねこの背中だとは気づいていない様でした。
もりねこは夜になり、いつものように海へ魚をとりに行きましたが、その日は小鳥たちを起こさないよう、静かに歩くのでした。
小鳥に教えてもらい、今度はウサギが、もりねこの背中へやってきました。
ウサギももりねこの背中に住むことに決めました。
それから、噂を聞いた動物たちが、少しずつ集まるようになりました。
冬でも温かくて、優しいもりねこの森は、みんなのおうちになっていったのです。
背中にたくさんの動物が住み着いても、もりねこは昼間は眠り、夜になると静かに動いていたので、動物たちはもりねこに気が付きませんでした。
もりねこは、背中にみんなのぬくもりを感じ、幸せな気持ちになっていました。
ところがある夜、いつものように歩いていると切り株につまづいて、転んでしまいました。
背中の動物たちは大慌て。
森から逃げていく動物たちに、もりねこが声をかけますが、振り向いた動物たちはさらにびっくり。
もりねこの大きな目が、暗闇から光っていたのです。
おばけだと勘違いして、さらに逃げる動物たち。
もりねこは、また一人ぼっちになってしまいました。
動物たちの誤解が解ける日はくるのでしょうか?
『もりねこ』の素敵なところ
- 人知れず頑張る優しいもりねこ
- もりねこの変わっていくつぶやき
- 自分を知ってもらう嬉しさ
人知れず頑張る優しいもりねこ
この絵本で、なによりも印象的なのは、もの凄く大きなもりねこでしょう。
子どもたちも見た瞬間に、
「うわっ!でっかい!」
「木より大きい!」
と、その大きさに驚いていました。
そのインパクトから、どんなネコなのかと思いきや、とってもおとなしい。
昼間は寝ていて、夜は魚を食べるだけ。
その意外性にもびっくりです。
動物が住み着いたあとも変わらずおとなしいもりねこ。
動物を起こさないように歩く、優しい姿も見せてくれます。
誰からも気付かれないよう、動物たちのために頑張るもりねこ。
その姿に、子どもたちももりねこが好きになり、応援するようになっていきます。
だからこそ、転んでしまい動物たちに怖がられた時は、心が痛み、本気でもりねこが心配になります。
そして、最後の場面では、心から「よかった!」と思えるのです。
もりねこの変わっていくつぶやき
また、もりねこの心の動きが、よく出ているつぶやきも素敵なところ。
もりねこは要所要所でつぶやきます。
最初は一人ぼっちで魚を食べ終わった後に、「ひとりぼっちも気楽でいいさ」。
鳥が住み着いた後は、「ひとりのほうが気楽なのになあ」。
動物たちがたくさん住み着くと、「ひとりじゃないのも悪くはないな」。
というように、表情と相まって、もりねこの気持ちが他者と繋がり、ほぐれていく過程がとてもよくわかるようになっているのです。
自分を知ってもらう嬉しさ
さて、そんなお話の最後の場面。
これまで、気付かれないように動物たちの暮らしを支えていた、もりねこの正体がバレてしまいます。
でも、それは同時に、自分の存在を認めてもらったということでもあるのです。
知られていなくても幸せでしたが、知ってもらって仲良く出来ればもっと幸せです。
そんなことが、もりねこの姿から伝わってくるのが、この絵本のとても素敵なところです。
一歩前に出る勇気がない人に、もりねこが勇気を与えてくれるかもしれません。
二言まとめ
一人ぼっちだったもりねこが、どうぶつたちとの触れ合いを通して、一緒にいる幸せに気付いていく。
一緒にいるだけでも幸せだけど、互いをよく知ればもっと幸せになることに気付かせてくれる、優しい絵本です。
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