作:キティ・クローザー 訳:ときありえ 出版:講談社
誰もが恐れる死神。
でも、死にゆく人の顔を見て、心を痛めている優しい死神がいたら。
そんな優しい死神と優しい女の子の出会いを描いたお話です。
あらすじ
死神くんは感じのいい小さな男の子です。
死神くんは死にゆく人を死の国へ連れていく仕事をしていますが、
連れていかれる人はみんな泣き、寒がります。
死神くんは死んだ人が寒くないように火を焚きますが、みんな地獄に来たと思い怖がります。
そんなある日、死神くんはエルウィーズという女の子を迎えに行きました。
エルウィーズはにっこり笑って言ったのです。
「とうとう来てくれたのね!」と。
そんなことは初めてだったので、死神くんはびっくりしました。
エルウィーズは病気でずっと体が痛かったのですが、今はちっとも痛くないと話してくれました。
エルウィーズは死神くんに遊ぶことを教えてくれました。
死神くんは毎日楽しく「生きている」という気持ちになりました。
でも、いつまでも死の国にいることが出来ません。
別の国に旅立たなければならないのです。
死神くんはひとりぼっちになり、なにもかもが空っぽな気がしました。
がらーんとした宮殿を「エルウィーズ・・・」とつぶやきながら歩き回りました。
死神くんは寂しさから立ち直ることは出来るのでしょうか。
『ちいさな死神くん』の素敵なところ
- 死や死神くんの繊細な心境を優しくわかりやすい言葉で描いている
- 死ということに目をそらさず、しっかりと光を当てて描かれている
- とても優しく温かい結末
扱っている題材から、文章や描写など複雑になりやすい内容を、本当にわかりやすい平易な言葉や、描写で描いています。
でも、そこにはしっかりとした重さがあり、死が決して軽くなるようなことがないのが本当にすごいところです。
そのため、死神くんの繊細な悩み、喜び、悲しみと言った感情の動きが、子どもにもしっかりと伝わり、自然と理解できるのです。
そして、死に対してしっかりと光を当てているのも素敵なところです。
死ぬことを泣いて悲しむ人がベッドから手を引かれ、船に乗り、死の国へ連れていかれる様子が、
死にゆく人の悲しみや恐怖とともにしっかりと描かれているのです。
それと同時に、エルウィーズの死ぬことにより痛みから解放されるという明るい死も描かれる。
明暗両方が過不足なく描かれていることで、死の重みが薄れないのだと思います。
そんなお話の結末は死神くんにもエルウィーズにも救いのある本当に温かいものです。
心から「よかったね」と思えるのは死神くんとエルウィーズの背景をじっくりと見てきたからでしょう。
とっても重く、とっても優しいお話です。
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