作:アンマサコ 出版:ブロンズ新社
ケーキのお城。
それは、誕生日ケーキをつまみ食いすると、連れていかれてしまう場所。
そこから出ることが出来ないと、誕生日を迎えることが出来ません。
5歳になる、あいちゃんも・・・。
あらすじ
今日はあいちゃんのお誕生日。
友だちが来るまで、ケーキを食べてはいけません。
あいちゃんがケーキを食べたそうにしていると、ママが注意しました。
「我慢できない子は、ケーキのお城へ連れていかれちゃうんだって」と。
あいちゃんは信じず、こっそりとケーキをぺろりとなめてみました。
すると突然、ケーキにのっていたクリームとろうそくがしゃべりだしたのです。
2人は「あいちゃんをケーキのお城へ連れていく」と言いました。
そのとたん、あいちゃんはテーブルの上にいて、目の前にはあいちゃんの誕生日ケーキが、お城になってそびえ立っています。
ケーキのお城では、王様が待っていました。
王様に誕生日を聞かれ、5歳と答えると、ろうそくが足りないと言われます。
数えてみると、確かに4本。
王様は「5歳になりたいのなら、ろうそくをもう一本見つけるのだ」と言い、あいちゃんを大きな口で飲み込んでしまいました。
飲み込まれて、落ちたところはケーキたちがお茶会をしているテーブルでした。
ケーキたちは、あいちゃんを大歓迎。
みんなにケーキを勧められ、食べてみるとなんと美味しいケーキでしょう。
あいちゃんは次々とケーキを食べていきました。
ケーキをお腹いっぱい食べ終わると、あいちゃんの体に変化が。
なんと、あいちゃんが、いちごのケーキになってしまったのです。
そこで、あいちゃんは、ろうそくを探していたことを思い出しました。
ケーキたちは止めましたが、あいちゃんはケーキの体で、またろうそくを探しに出発したのでした。
歩いていくとメロンソーダの海に出ました。
水平線の向こうに、なにかが光っています。
あいちゃんはろうそくだと思い、クッキーに乗ってメロンソーダの海に飛び込みました。
ところが、魚たちがクッキーを食べていってしまいます。
小さくなっていくクッキーの舟。
ついに、あいちゃんは海の底へと沈んでいってしまいました。
あいちゃんが5歳になるのをあきらめかけたその時・・・。
『おたんじょうびケーキ』の素敵なところ
- 誕生日ならではの不思議な大冒険
- 幻想的でかわいらしさと美しさが融合した絵
- 誕生日のお祝いに、愛を感じる最後の場面
誕生日ならではの不思議な大冒険
この絵本の面白いところは、不思議な大冒険に出てくるものが、全て誕生日会と繋がっているところです。
冒険の舞台はテーブルの上。
そこにはジュースのグラスや、果物がそのまま置いてあり、現実のテーブルの上であることがわかります。
お城はもちろん、あいちゃんの誕生日ケーキそのままです。
海は誕生会にも出ていたメロンソーダで出来ています。
冒険に出る理由も、ケーキのろうそくが足りないから。
確かに、「歳の数だけろうそくを立てる」ことを考えたら、一本足りないと5歳になれません。
このように、冒険が全て現実の誕生日会と繋がって出来ているのです。
だからこそ、
「ほんとだ!ろうそく4本じゃ5歳になれない!」
「これ、誕生会にあったメロンソーダじゃない!?」
と、子どもがこの冒険を自然に受け入れ、夢中になってしまうのです。
幻想的でかわいらしさと美しさが融合した絵
この不思議な冒険を、さらに楽しく幻想的なものにしてくれるのが、かわいらしさと美しさが合わさった絵です。
かわいい中にも、どこか絵画のような美しさがある絵。
これにより、ただかわいいだけでなく、面白いだけでもない。
幻想的な、非現実感をこの物語に与えてくれているのです。
ケーキの砂漠、エメラルドグリーンの海、光り輝く最後の場面・・・。
どれも、かわいらしくも美しく、ずっと見ていたくなるほど、魅力的な世界が広がっているのです。
誕生日のお祝いに、愛を感じる最後の場面
さて、そんな冒険の終着点は、とても愛に溢れたものでした。
歳を重ねるうちに、忘れてしまいがちな誕生日の意味。
そんなことに、目を向けさせてくれる最後の場面。
「生まれてきてくれたこと」
「元気に大きくなってくれたこと」
それをお祝いする日なんだと。
そして、どれだけ愛されて生まれてきたのかを、改めて思い出させてくれるのが、この絵本の本当に素敵なところだと思います。
二言まとめ
あいちゃんが、5歳になるための不思議で楽しく、美しい冒険を通して描かれる。
お誕生日のお祝いの意味と、どれだけ愛され生まれてきたのかを、改めて考えさせられる絵本です。
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