作:こしだミカ 出版:偕成社
海を綺麗にしてくれるナマコ。
ナマコのばあちゃんも、いつも通りゆーっくり海をきれいにしていました。
ところが、大きな嵐が来て、海も街もめちゃくちゃに。
そんな時、ナマコのばあちゃんが!?
あらすじ
ナマコのばあちゃんは、海の中でのんきに暮らしていた。
身の回りにあるものを、ゆっくり食べて、お尻から出して。
海の中では他の生き物たちが一所懸命生きている。
でも、ナマコのばあちゃんはのーんびり。
陸の上では、人間が一生懸命生きている。
でも、ナマコのばあちゃんはのーんびり。
ある日、海の底が身震いし、海の水がでんぐり返った。
でんぐり返った水は、陸に覆いかぶさり、陸の上にあったものを、海の中へ引きずり込んだ。
めちゃくちゃになった海の中で、身を固くしたばあちゃん。
と、次の瞬間。
猛烈な勢いで、身の回りに流れてきた物を食べ始めた。
食べて出して、食べて出して。
汚れた水が、ばあちゃんの体を通って、お尻からきれいになって出てくる。
海はばあちゃんの周りから、ちょっとずつきれいになった。
それを見た人間たちは、「救世主だ!」と大騒ぎ。
マスコミも駆けつけました。
ばあちゃんの勢いは止まらず、食べて出し続けていたら・・・。
ばあちゃんは、海の上に体が出てくるほど大きくなってしまった。
それを見て、最初は喜んでいた人間も、「化け物だ」「取り除くべきだ」と言い出した。
一体ナマコのばあちゃんは、どうなってしまうのでしょう?
『ナマコのばあちゃんは』の素敵なところ
- ばあちゃんの、何があってもいつも通りな安心感
- ナマコの知られざる凄さがわかる
- 始まる前に、ナマコの生態が超わかりやすく描いてある。
ばあちゃんの、何があってもいつも通りな安心感
この絵本の主人公、ナマコのばあちゃんはいつものんびりしています。
どんなに周りが大変そうでも、やることは変わりません。
食べて出して、食べて出して。
少しずつ海を綺麗にしてくれているのです。
そんなのんびり感が伝わってくる文章も楽しく、
「ふにゃーっとして、ぽてーとして」
という、決まり文句に、見ている方ものんびり脱力してしまいます。
しかし、ばあちゃんのすごいところは、なにがあってもいつも通りな所。
海が大荒れしても、やることは変わりません。
食べて出すだけ!
汚れに応じて、勢いは増しますが、やってることは変わらない。
さらに、人間の都合でやっかいものにされた時も、子どもたちが、
「かわいそう!」
「助けてくれたのに!」
と、怒る中、ナマコのばあちゃんは「ふにゃーっとして、ぽてーとして」います。
怒っていた子も、この姿を見せられたら、怒りがどこかへ消えてしまうみたい。
このいつも通りという、ばあちゃんの安心感が、この絵本のとても素敵なところです。
ナマコの知られざる凄さがわかる
さて、この絵本を読むと、ナマコの知られざる凄さがわかります。
見た目がなんだか気持ち悪かったり、毒々しい色だったりで、敬遠されがちなナマコ。
ですが、その驚く程の無害っぷり・・・、いや、むしろ有益っぷりに驚かされるのです。
地道に砂を食べ、汚れを吸収し、きれいにして出してくれるナマコ。
その結果、海も綺麗にしてくれます。
特に、大荒れし、真っ黒になった海をきれいにしていく姿は、もう地味とは言えません。
その姿はまさにダイソン。
もちろん現実では、ナマコ一匹でこんなにきれいにはなりませんが、たくさんのナマコがこれと同じことをしているのは事実でしょう。
絵本を通して、ナマコの凄い力や、ありがたさに気付かせてくれるのです。
きっと、前よりもナマコが可愛く見えることでしょう。
始まる前に、ナマコの生態が超わかりやすく描いてある。
そんな素敵な物語とナマコの力ですが、ある程度ナマコの知識がないと、100%は楽しめません。
そこで、この絵本では、一番最初に超わかりやすく簡潔に、ナマコの生態が載っています。
体はちくわみたいになっていること。
まわりの砂を食べ、栄養分を体に取り入れて、きれいになった砂をお尻から出すこと。
体を半分に切られたら、2匹になる時もあるほど、再生力が高いこと。
など、ナマコの基本的な生態を知ることが出来ます。
この生態は、絵本の中で全て活躍するので、最初に知っているとより物語を楽しめるのです。
こうしてナマコのことを知った上で、物語を楽しみながら、ナマコの魅力に触れていける作りが、とても自然で素敵なものになっています。
二言まとめ
ナマコのばあちゃんの、のーんびりとした大活躍を通して、ナマコの凄さを知ることが出来る。
読めば、ナマコを前より可愛いと思えるかもしれない絵本です。
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