作:サイモン・ジェームス 訳:千葉茂樹 出版:あすなろ書房
寂しくてたまらなく、どうしようもない時。
みなさんならどうするでしょう。
子どものスタンリーは段ボールの宇宙船に乗って、火星人に変身します。
そんな小さな火星人の一日です。
あらすじ
母さんが泊りがけで出かけることになった。
母を見送ったスタンリーは庭に出て段ボールの宇宙船に乗り込み火星に向かった。
しばらくすると宇宙船んが庭に戻ってきて、中からスタンリーそっくりの小さな火星人が出てきた。
兄のウィルが「スタンリー」と声をかけても、「僕は火星人だ」と言い張った。
ウィルは父の所に火星人を連れていき紹介した。
ちょうど晩御飯の時間だったので、一緒に晩御飯を食べることにした。
火星人は手を洗わないし、歯磨きもしないし、お風呂にも入らなかった。
翌日学校で親友のジョシュに「火星人じゃなくスタンリーだ」と言われけんかになった。
ジョシュを突き飛ばし、校長室の前で反省させられた。
その日の夜、母さんが帰ってきた。
お母さんを前に、火星人とスタンリーはどうするのでしょうか。
『スタンリーと小さな火星人』の素敵なところ
- 子どもの寂しさから出る行動がとてもリアル
- それを受け入れてくれる家族の姿が素敵
- スタンリーと火星人を別の人物として描く文章
言い張ったり、頑なだったり、受け入れられなかったり。
寂しさからいつもと違う行動を取ってしまう子どもらしさがとてもリアルに描かれています。
でも、それを家族が否定せず、火星人として受け止めて言葉を返していく姿は心が温まります。
言葉一つ一つに幼い心への気遣いが感じられます。
しかし、同世代の親友には火星人を受け入れてもらえないのも、子どもの世界ならではです。
そんな物語全体を通しての文章にも心配りがあります。
宇宙船に乗り込んだ後は一貫して火星人として描いているところです。
スタンリーだと匂わせることは一切せず、火星人として受け入れます。
スタンリーと火星人が入れ替わったという流れで。
描かれる家族の心配り、描く作者の心配りが合わさって、どうしようもない子どもの気持ちが優しく描かれているのが素敵なところ。
読んでいて温かい気持ちになる絵本です。
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