作:マーカス・フィスター 訳:谷川俊太郎 出版:講談社
ネズミたちが幸せに暮らす島。
そこで一匹のネズミが、明るく輝く魔法の石を見つけます。
その石を巡り、島の未来が大きく変わっていくのです。
幸せな終わりか、悲しい終わり。
選ぶのはあなたです。
あらすじ
海の真ん中に島があった。
そこにはネズミのミロと、その仲間のネズミたちが幸せに暮らしていた。
夏の間、ミロたちは食べ物を集め、時折遊んだり、夜通し星を眺めながらおしゃべりをした。
でも、冬の嵐が来ると、ネズミたちは一日中じとじととした洞穴で丸くなり、温かい春を夢見るて過ごすのだった。
そんな嵐の過ぎたある日。
ミロが食べ物を探していると、岩の裂け目に不思議なものを見つけた。
それは見たこともない光る石だった。
ミロはその石を引っ張り出し、自分の洞穴へ持ち帰った。
その石は、暗くなるほど輝きを増し、ほんわかと温かかった。
ミロがその石を見ていると、仲間のネズミたちがすぐに集まってきた。
そして、みな石を欲しがり、ミロに石のあったところへ連れて行けとせがんだ。
そんな姿を見て、賢い年寄りのバルタザールが言った。
「石は島のもので、何か島のものを取ったら、お返しをしなければならない」ということを。
その話を聞き、ネズミたちの取った行動とは?
結末は「幸せな終わり」と「悲しい終わり」に分岐します。
どちらの結末を迎えるかは、あなたが選ぶのです。
『ミロとまほうのいし』の素敵なところ
- ホログラムが綺麗な魔法の石
- 物語の結末を自分で選べる面白さ
- 二つの結末があるからこそ、動かされる感情
ホログラムが綺麗な魔法の石
この絵本を見て、まず目をくぎ付けにされるのが、魔法の石の美しさです。
光を反射して、本当に金色に輝いている魔法の石。
角度によって色が変わるホログラムにもなっています。
見ているだけでキラキラと美しく、物語が始まる前から魅力的です。
まるで、本物の宝石を見ているようにうっとりとしてしまいます。
子どもたちも、
「本当の宝石みたい!」
「キラキラ光ってるよ!」
「いいな~、ほしいな~」
と、すっかり魔法の石のとりこです。
この視覚的な特別さ、美しさがあるからこそ、物語のネズミの気持ちがよくわかり、没入感へもつながるのでしょう。
物語の結末を自分で選べる面白さ
でも、その物語はハッピーエンドで終わるとは限りません。
この絵本には二つの結末が用意されているのです。
途中までは普通の絵本と一緒で、ページをめくり進んでいきます。
しかし、途中からページの上半分と、下半分が別々にめくれるようになるのです。
上半分をめくっていくと、幸せな終わりに向かいます。
下半分をめくっていくと、悲しい終わりを迎えます。
こうして、どちらを読み進めていくか、自分で選択できるのです。
自分の選択で、ネズミたちの運命が決まってしまう。
そんな重大な仕掛けも、この絵本の面白くて素敵なところです。
二つの結末があるからこそ、動かされる感情
また、結末が二つあるというのは、見ている人の心の動きにも大きな影響を与えます。
結末が一つしかない絵本なら、その結末を受け入れるだけです。
けれど、もう一つの結末があることで、違う行動を取ったらどんなことが起こるのか知ることが出来ます。
それを知ると、
「あー、そんな欲張ったら・・・」
「ちゃんと、お返ししたら、空っぽにならなかったね」
など、どうやったから「幸せな(悲しい)終わり」になったのかを、深く考えることに繋がります。
比べることが出来るからこそ、色々な角度から一つの物語を考えることができるのです。
特別な仕掛けならではの気付きを与えてくれるのも、この絵本の素敵なところです。
二言まとめ
本当に輝く魔法の石や、物語が分岐するなど、楽しい仕掛けが盛りだくさん。
その仕掛け全てが、見ている人をより深く、物語の世界に入り込ませてくれる絵本です。
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