文:アヌ・ストーナー 絵:ヘンリケ・ウィルソン 訳:若松宣子 出版:岩崎書店
小さなサンタの仕事は、森の動物たちへプレゼントを配ること。
しかしある時、小さなサンタに町の動物から「プレゼントが欲しい」とたくさんの手紙が。
困ってしまった小さなサンタは・・・。
あらすじ
はるか遠く、北に行ったところに、サンタが住む村がありました。
小さなサンタもここで暮らしています。
大きなサンタは町に行きますが、小さなサンタはお留守番。
森の動物へプレゼントを渡しに行くのが仕事です。
ところがある日、郵便屋さんがたくさんの手紙を持ってきました。
それはどれも町の動物たちからの手紙でした。
内容も全部一緒。
「小さなサンタさんは、どうして森の動物のところにしかいかないの?そんなのひどい」というものでした。
それを見て、小さなサンタは悲しくなりました。
プレゼントは町の動物たちの分もあるのです。
でも、小さなサンタは町へ行けないのです。
そこで、小さなサンタは、一番えらいサンタに相談しました。
すると大きなサンタは言いました。
「小さなサンタには町は遠すぎる。それに、大きなサンタのソリは、人間の子どもにあげるプレゼントでいっぱいだ」と。
小さなサンタは、一番えらいサンタの言うとおりだと思いました。
しかし、諦めきれません。
クリスマスまであと1週間。
小さなサンタは、森で一番物知りなフクロウに相談することにしました。
フクロウは、話を聞いた途端すぐに答えてくれました。
森の動物みんなでソリを押し、町まで行こうというのです。
森の動物たちもすぐに賛成してくれて、朝早くに出発しました。
雪の降る中、森を越え、山を越え、凍った湖へたどり着きます。
町はまだまだ先。
ちいさなサンタと動物たちは、クリスマスまでに無事辿り着けるのでしょうか?
『ちいさなサンタまちにいく』の素敵なところ
- 動物のための優しい小さなサンタ
- 険しさがひしひしと伝わってくる道中にドキドキ
- みんなで成し遂げた爽やかな達成感
動物のための優しい小さなサンタ
普通のサンタさんは、大柄なおじいさんで、人間にプレゼントを配るイメージです。
ですが、この絵本に出てくるのは小さなサンタクロースです。
町へは遠すぎて行けないし、ソリを引くことも出来ません。
近くの森の動物たちへプレゼントを配りに行くのがやっと。
サンタクロースの子どものような存在です。
けれど、心は優しい大きなサンタクロースと一緒。
プレゼントが欲しいという声があれば、遠い町だろうと、なんとしても届けたいと頭を悩ませます。
そして、動物たちの力を借りて、本当に配りに行ってしまうのです。
その姿を見ていると、応援したくなってしまうし、プレゼントをもらう予定の子であれば、なおさら力と熱がこもってしまいます。
自分のところにも、サンタさんが向かっていると思っているでしょうから。
この小さな体で、出来ることを精一杯やる小さなサンタの姿がとても魅力的なのです。
険しさがひしひしと伝わってくる道中にドキドキ
さて、みんなで協力し、ソリを押しながら出発した長い旅。
その道のりはとても険しいものでした。
森を越え、山を越え、凍った湖も越えていきます。
文章からだけでなく、絵からもその険しさはひしひしと伝わってきます。
辺り一面を真っ白にする猛吹雪。
急な坂道を、強い風に負けないようソリを押します。
凍った湖では目印がなく、迷子になりそうにも・・・。
さらには、みたこともないような不気味な光の列を目撃。
サンタ一行の大変さがしっかりと伝わってくるのです。
こんな険しい道のりの中、こんなに小さなサンタが、本当にたどり着けるのかドキドキしてしまいます。
ただ、ドキドキが強いほど、応援の声も大きくなっていくのです。
みんなで成し遂げた爽やかな達成感
そんな大変な道のりを乗り越えて迎えた最後の場面。
そこには、これまでの険しさと正反対の、晴れ晴れとした光景が浮かんでいます。
険しい道のりを乗り越えた達成感。
そして、みんなで力を合わせたから乗り越えられたんだという、団結感が物凄く感じ取れるのです。
終わったという安堵感も・・・。
きっと長く険しい旅を小さなサンタたちと、ページを通して歩んできたからこそ、最後の場面が輝いて見えるのでしょう。
サンタたちと一緒に目的を果たしたという達成感を味わえるのも、この絵本のとても素敵なところだと思います。
二言まとめ
まだ町に行けない小さなサンタが、動物たちの力を借りて、険しい道のりに挑戦する。
その姿に心が熱くなる、強くて優しい心を持った小さなサンタの成長物語です。
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