文:マック・バーネット 絵:ジョン・クラッセン 訳:なかがわちひろ 出版:あすなろ書房
ある日、女の子が見つけた虹色の毛糸。
女の子は、その毛糸でセーターを編みました。
でも、その毛糸はなくなりません。
町中の人や建物すべてにセーターを編んでも・・・。
あらすじ
雪が降る、すすまみれの暗い町。
ある冷たい日の午後、そこに住む女の子アナベルは、箱を拾った。
中に入っていたのは、色とりどりのきれいな毛糸だった。
アナbrつはうちに帰ってセーターを編んだ。
セーターが出来ても、毛糸はまだ残っていた。
そこで、アナベルの家の犬マースにもセーターを編んだ。
それでも、毛糸は残っていた。
アナベルとマースが散歩に行くと、男の子ネイトがセーターを見て笑った。
アナベルが「羨ましいんでしょ」と言うと、ネイトは「まさか!」と答えた。
でも、セーターを作ってあげると、嬉しそうに着ていた。
毛糸はまだ残っている。
学校に行くと、みんなアナベルのセーターを見て、ひそひそ話した。
ノーマン先生がひそひそ話を怒り、アナベルに言った。
「セーターが目立ちすぎて、授業にならない」と。
アナベルは、目立たないように、みんなにもセーターを編むことにした。
それでも毛糸はまだ残っている。
そこでアナベルは、町のみんなと動物たちにもセーターを編んだ。
でも、まだ残っている。
家やポスト、車など色々なものにもセーターを編んだ。
町の景色が、黒から色とりどりへと変わっていった。
アナベルと不思議な毛糸の話は世界中に広まって、たくさんの人がきれいな色のセーターの町へやってくるようになった。
そんなある日、おしゃれなことで有名な王子が、海の向こうからやってきた。
王子は、毛糸の入った魔法の箱を買おうとした。
けれど、アナベルは売らなかった。
どんなにお金を積まれても。
そこで王子は・・・。
『アナベルとふしぎなけいと』の素敵なところ
- だんだんと色づいていく町と人のきれいさ
- 使っても使ってもなくならない毛糸のおもしろさ
- ハラハラする最後の場面と、変わらないアナベルの安心感
だんだんと色づいていく町と人のきれいさ
この絵本を見て、まず目を奪われるのは、虹色のきれいな毛糸でしょう。
雪の白と、すすの黒しかない町。
町の人の服も暗い色。
どこか白黒映画のような、重たい雰囲気の町並みです。
そこに現れた虹色の毛糸で編んだセーター。
それはもう、町の中でくっきりと浮かび上がるほど、美しい存在感を放っています。
それが友だちへと、先生へと、町の人へと、動物たちへと広がっていきます。
さらには町の建造物や車にまで。
この少しずつ色が広がって行く様は、まるできれいに塗り絵が完成していくような楽しさを感じさせてくれ、見ているだけでテンションが上がります。
そして、町中がセーターで覆いつくされた時、
「わ~!すごいきれいになった!!!」
と、感嘆の声があがるのです。
この少しずつ「きれい」が広がって行く様子が、この絵本の面白くて素敵なところです。
使っても使ってもなくならない毛糸のおもしろさ
また、色が広がって行くのに、毛糸は全然なくならないのも、この絵本の面白いところ。
アナベルがセーターを作るたび、
「それでも、毛糸はまだ残っていた」
という、言葉が入ります。
クラスメイトと先生のセーターを作っても、町中の全ての人のセーターを作っても、
「それでも、毛糸はまだ残っていた」
のです。
この繰り返しがたまらなく面白くて、子どもたちもこの言葉が出るたびに、
「えー!まだなくならないの!?」
「こんなにたくさん使ってるのに!」
「いつなくなるのかな?」
と、声をそろえて大合唱。
広がって行く色と、なくならない毛糸の不思議さに、すっかり夢中になっているのでした。
ハラハラする最後の場面と、変わらないアナベルの安心感
さて、アナベルのセーターで、活気づいていく町。
このまま幸せに終わると思いきや、事件が起こります。
おしゃれな王子が、噂を聞きつけやってきたのです。
毛糸を買おうとする王子。
絶対に売らないアナベル。
そこで王子はある行動に出ます。
とても自分勝手な行動です。
子どもたちも、急に不安になり心配になります。
「大丈夫かな・・・」と。
しかし、その結末はとてもアナベルらしいもの。
アナベルの最初から最後まで一貫した姿から、安心感や幸せの本質を感じさせてくれるのも、この絵本のとても素敵なところです。
二言まとめ
最初は暗かった町が、虹色のセーターによって、だんだんと色づいていく様子がとても楽しく美しい。
でも、一番大切なのは、毛糸の美しさではなくて心の美しさなんだと、アナベルの姿を通して気付かせてくれる絵本でです。
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