いっすんぼうし(4歳~)

絵本

作:はたこうしろう 出版:あすなろ書房

定番の昔話『いっすんぼうし』。

その中でも、絵がとても親しみやすく、かわいらしいのが特徴です。

その絵とピッタリ息の合った文章も、かわいくもかっこいい。

小さないっすんぼうしの魅力を最大限伝えてくれる絵本です。

あらすじ

昔、おじいさんとおばあさんがおりました。

ある日、2人は小さな子どもを授かりました。

生まれてきたのは、手のひらに乗るくらい小さな男の子でした。

男の子はいっすんぼうしと名付けられ、大切に育てられました。

いっすんぼうしは元気に育っていきましたが、体はちっとも大きくならず。

親指ほどの大きさでした。

友だちは、カエルや虫たち。

村の子どもは、いっすんぼうしを「ちび」とバカにしていたのでした。

ある日、いっすんぼうしは「みやこに行きたい」と言い出しました。

みやこにいけば、自分にも役に立てることがあるはずだと考えたのです。

おじいさん、おばあさんには、いっすんぼうしの気持ちがよくわかりました。

2人は悲しみながらも、いっすんぼうしを送り出すことに決めました。

次の朝。

いっすんぼうしはみやこへと旅立ちました。

おばあさんが縫ってくれた新しい着物を着て、お椀の笠に箸の杖、腰にはおじいさんが作ってくれた針の刀をさしています。

進んでいくと、大きな川へと出ました。

いっすんぼうしはお椀を川に浮かべ船にし、箸をかいの代わりにして、川を下っていきました。

何日も漕ぎ続け、みやこについたいっすんぼうし。

まずは、立派なお屋敷をたずねてみることにしました。

お屋敷のお殿様に会うと、いっすんぼうしはその熱意を精一杯伝えました。

お殿様はいっすんぼうしを気に入り、お屋敷に置いてくれることになりました。

いっすんぼうしはよく働きました。

その働きを見ていたのがお姫様。

お姫様は、いっすんぼうしを自分のお付きに取り立てました。

お姫様のため、一生懸命働いていたある日。

お姫様がお寺参りに行くというので、そのおともをすることになりました。

その帰り道。

突然、木の影から大きな赤鬼が飛び出して来ました。

お姫様を狙っています。

家来たちが逃げ出す中、一人だけ鬼に向かい飛び出したものがありました。

いっすんぼうしです。

小さな体のいっすんぼうしは、大きな鬼を退けることができるのでしょうか?

『いっすんぼうし』の素敵なところ

  • かわいらしくも躍動感たっぷりの絵
  • 絵とピッタリ息の合った、いっすんぼうしの魅力が詰った文章
  • 物語全体の動きがすごい

かわいらしくも躍動感たっぷりの絵

この絵本の大きな魅力は、そのかわいらしい絵にあるでしょう。

いっすんぼうしとういう、意志が強く、勇敢だけれど体が小さくかわいく見える。

そんなキャラクターを、かわいらしい絵の雰囲気が見事に表しているのです。

とても、強い目の力や精悍な顔つきと、ピョンピョン飛び跳ねる動きのギャップがもうかわいすぎます。

かわいいだけではなく、動きの躍動感も素敵なところ。

走り回り、飛び跳ね、たくさんの仕事をし・・・。

その全ての動きが、目の前でいっすんぼうしが動き回っているように見えるのです。

これも小さな体で動き回るいっすんぼうしのイメージに、ピッタリとはまっています。

また、絵のタッチや、背景の雰囲気など、色々なところに昔話特有の和の空気感が漂っているのも素敵です。

ただかわいらしいだけでなく、しっかり昔話という枠組みの中でかわいさが表現されているので、そのかわいさが浮いてしまうことがなく、お話と絵が溶け合っているのです。

絵とピッタリ息の合った、いっすんぼうしの魅力が詰った文章

そんな魅力的な絵と、文章との息がぴったり合っているのも、この絵本のとても素敵な魅力です。

わかりやすいのはもちろんのこと、絵のかわいさや躍動感が、文章にも詰まっているのです。

みやこについたいっすんぼうしが、街行く人に踏まれないよう、

「いっすんぼうしはぴょんぴょんと、蹴飛ばされないように、バッタのように飛び跳ねながら進んでいきます」

屋敷の門番へ話しかける時には、

「いっすんぼうしと申します」ぴょん。「お役に立ちたくて参りました」ぴょん。「どうぞ、お殿様に合わせてください」ぴょん、ぴょん!

と、飛び跳ねながらしゃべります。

もちろん、両手を広げ飛び跳ねるいっすんぼうしの絵とともに。

こんな風に、小さな体で一生懸命ないっすんぼうしのかわいさが、文章でも見事に表されているのです。

この絵とぴったり一致した文章で描かれる、まっすぐでで一生懸命ないっすんぼうしを見ていたら、そりゃ自然と応援したくなってしまいます。

物語全体の動きがすごい

さらに、この絵本にはまだ面白くて素敵なところがあります。

それは物語全体にたくさんの動きがあることです。

お城での仕事では、サイコロを振ったり、団子を持ってきたり、蜂を退治したり・・・。

と、所狭しと色々な仕事をするいっすんぼうしの姿が描かれます。

鬼と戦う時でも、鬼の拳に針の刀を突きたて、拳に登り、腕を伝って宙返り、着地し、力こぶを登って・・・。

と、一つのページにこれでもかと、いっすんぼうしの身のこなしが描かれるのです。

なので、見ている方はアニメのような躍動感を物語全体から感じます。

本当に、いっすんぼうしが、あちらこちらへ走り回り、飛び回っているような感覚にさせてくれるのです。

この物語全体の動きのすごさも、この絵本のとても素敵なところです。

二言まとめ

いっすんぼうしという、かわいらしく、すばしっこく、芯の強いキャラクターの大きな魅力。

それを絵と文章、描き方で見事なまでに表現した、いっすんぼうしの魅力が詰り過ぎた昔話絵本です。

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