文:きむらゆういち 絵:高畠純 出版:福音館書店
コブタが取ろうとしていたリンゴが、穴の中へコロコロコロ。
取ろうとしますが、手がギリギリ届きません。
そこで他の動物にも手伝ってもらうことに。
取れそうで取れないモヤモヤ感が楽しい絵本です。
あらすじ
お腹の空いたコブタが、木になっているリンゴを見つけました。
しばらく待っていると、リンゴは木から落ちてきました。
喜んでいたのも束の間、リンゴは坂を転がって、細い穴の中へ入ってしまいました。
コブタは、穴の中へ手を伸ばしますが、中々リンゴへ届きません。
そして、手の先がリンゴへ「ツンッ!」とぶつかって・・・。
リンゴはさらに奥へと入ってしまいました。
そこへサルが通りかかりました。
理由を聞くと、コブタより手が長いから手伝ってくれることに。
ですが、やっぱりぎりぎり届きません。
そして、手の先がリンゴへ「ツンッ!」とぶつかって・・・。
リンゴはさらに奥へと入ってしまいました。
そこに今度はキツネがやってきました。
理由を聞くと、長い尻尾で取ってくれることに。
でも、やっぱりあと少し届きません。
そして、「ツンッ!」・・・。
どんどん奥へ入っていくリンゴ。
果たして、食べられる日はくるのでしょうか?
『もうちょっともうちょっと』の素敵なところ
- 大笑い間違いなしの繰り返し
- 手やしっぽを伸ばす必死さが滲み出た絵
- 「そんなのあり!?」な最後の場面
大笑い間違いなしの繰り返し
この絵本のなによりおもしろいところは、リンゴを取ろうとして奥に押してしまう繰り返しでしょう。
色々な動物がチャレンジしますが、みんな流れも結果も同じです。
「もうちょっともうちょっと・・・」
と、手が届きそうなところで、「ツンッ!」と押してしまい、「あっ!」という声と「やっちまった!」という表情。
この流れがたまらなくおもしろい。
この完成された流れは、まるでダチョウ倶楽部のよう。
「押すなよ押すなよ・・・」からの「ドボーン!」というコントをみているみたい。
子どもたちは、「もうちょっともうちょっと・・・」のところですでにニヤニヤ。
「ツンッ!」「あっ!」を見たら大笑い。
繰り返しだからこそ、予想が出来ておもしろい。
この鉄板の流れが、この絵本のおもしろく素敵なところです。
手やしっぽを伸ばす必死さが滲み出た絵
また、そのおもしろさをさらにおもしろくしてくれているのが、動物たちの気持ちが伝わり過ぎる絵です。
「あっ!」という時の、表情もさることながら、一番は手を伸ばす時の力の入り具合と必死さです。
肩まで腕を入り込ませようとする態勢。
足の先まで入った力。
少しでも腕を伸ばすためそむけた顔の向き。
手の先へ全ての集中を向ける表情。
そのどれもにリアリティが溢れています。
そこに加わる「もうちょっともうちょっと・・・」の掛け声。
それはまさにタンスの隙間に落ちたものを取る時のよう。
動物たちの姿を見ていると、その時を思い出し、見ている方にも自然と力が入ってしまうのです。
そして、この力の入り具合があるからこそ、解放される瞬間の「ツンッ!」「あっ!」がよりおもしろくなるのです。
「そんなのあり!?」な最後の場面
さて、そんな大笑いした後の最後の場面。
あっと驚く展開が待っています。
「めでたしめでたし」で終わるかと思っていたら、まさかの行動に出るある動物。
これには子どもたも「えー!?」と、びっくり。
まさかの行動にわやわやする動物たち。
一緒にわやわやする子どもたち。
この二つがリンクしてまあおもしろい!
まさか最後にドタバタ劇まで用意されているとは。
最初から最後まで笑いの絶えないところも、この絵本の素敵なところです。
二言まとめ
往年の鉄板コントのような、先の読める繰り返しがおもしろい。
最初から最後まで笑いの王道を突っ走る、笑いっぱなしな一冊です。
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