文:マーガレット・ワイルド 絵:ロン・ブルックス 訳:今村葦子 出版:あすなろ書房
ウサギのロージーに、弟ができました。
産まれるのを楽しみにしていたロージー。
ですが、産まれてからは、弟を避けるようになりました。
だって、あまりに小さくて、怖いから・・・。
あらすじ
ウサギのロージーは、弟が産まれてくるのが待ちきれませんでした。
ですが、弟のボビーはとても早く産まれ、身体もとても小さかったのです。
重さは玉ねぎくらいしかありません。
そんな、息もしていないように見えるほど小さなボビーを、まじまじと見たロージーは怖くなってしまいました。
お母さんが「抱っこしてみる?」と言っても、断りどこかへ行ってしまいました。
日が過ぎて、ボビーはジャガイモくらいの重さになっていました。
今日は、ボビーをうばぐるまに乗せて、散歩をしています。
お母さんが「うばぐるまを押してみる?」と言いましたが、ロージーは断り、ちょうちょを追いかけて行ってしまいました。
ある朝、ボビーはカブラくらいの重さになりました。
でも、ロージーには、ボビーが病気のように思われ、避け続けていました。
その日、遅くなってから、ロージーは父さんとブラックベリーつみに行きました。
そこで、父さんがロージーに聞きました。
ボビーが嫌いなのかと。
ロージーは父さんに、ボビーが好きなこと。
でも、あんまりちっちゃくて怖いことを伝えました。
すると、父さんはある話をしてくれました。
仲良しなウサギとカメのお話です・・・。
『ロージーとちびっこかめさん』の素敵なところ
- 赤ちゃんを怖いと思う素直な気持ち
- 少しずつ大きくなって赤ちゃんの様子とわかりやすい例え
- ロージーの不安を解きほぐしてくれる父さんのおはなし
赤ちゃんを怖いと思う素直な気持ち
この絵本のとても素敵なところは、赤ちゃんを怖いと思う気持ちへ、寄り添ってくれるところです。
普段は赤ちゃんのことを「怖い」とは中々言えません。
「赤ちゃんはかわいいもの」という無言圧力もあります。
でも、実際には「怖い」と思っている子は、けっこういるのではないでしょうか?
触ったら壊れてしまいそうな感じ。
別の生き物のような姿。
どう接したらいいのかわからなさ。
そんな、得体のしれない怖さに、ロージーの姿を通して寄り添ってくれるのです。
「怖い」って思うのが自分だけじゃないこと。
それは悪いことじゃないんだということに、安心感や勇気をもらえることでしょう。
少しずつ大きくなって赤ちゃんの様子とわかりやすい例え
そんな、小さな赤ちゃんも、少しずつ大きくなっていきます。
その様子が、とても丁寧に描かれているのも、この絵本の素敵なところ。
少しずつ体重が増え、身体が大きくなっていく様子を見せてくれます。
その表現方法もおもしろく、野菜に例えて、重さを伝えてくれます。
玉ねぎ→ジャガイモ→カブラ→カリフラワー。
と、子どももどれくらいずつ大きくなっているかが、感覚的にわかるのです。
この少しずつ大きくなっていく経過と、重さの感覚は最後の場面で、とても重要になってきます。
ロージーの不安を解きほぐしてくれる父さんのおはなし
さて、ロージーの様子を見て、父さんがロージーの気持ちを確かめます。
そこで、諭したり説明するのではなく、ロージーが自分で考え気付くように伝えていくのも、この絵本の本当に素敵なところです。
そのために、父さんはカメの話を始めます。
その話の中では、赤ちゃんは少しも出てきません。
ですが、ボビーのことも含めた、物事の本質への気付きがあります。
その本質に気付いたことで、ボビーのことも肯定的に見ることが出来るようになるのです。
きっと、諭されていたら、ここまで納得感を持ってボビーと向き合えなかったでしょう。
カメの話を通して、自分で考え気付いたからこそ、しっかりと自分の気持ちもボビーのことも受け入れられたのだと思います。
二言まとめ
ロージーの、赤ちゃんに対する不安や怖さ、それを受け止める姿が丁寧に描かれる。
普段は中々口にできない、赤ちゃんへの「怖い」という感情に寄り添ってくれる絵本です。
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