こうしてぼくは海賊になった(4歳~)

絵本

文:メリンダ・ロング 絵:デイビッド・シャノン 訳:小川仁央 出版:評論社

ビーチで遊んでいた普通の男の子が、ある日海賊になった。

これは一日だけの海賊船での船旅を描いた物語。

そして、海賊を続ける理由の物語です。

あらすじ

男の子ジェレミー・ジェイコブが、海岸で砂のお城を作っていた時だった。

海から海賊船がやってきた。

パパとママに話そうとしたけれど、2人とも忙しそうで話を聞いてくれない。

そうしているうちに、海賊船からボートに乗って、海賊たちが海岸へとやってきた。

ボートから降りた海賊たちは、ジェイコブのお城の堀を見ると感心し、名前を聞いてきた。

名前を名乗ると、海賊の頭アミヒゲは、ジェイコブのような穴掘りが必要なのだと言う。

宝の箱を埋めるために。

アミヒゲは、ジェイコブに一緒に来るよう命じた。

ジェイコブは、明日のサッカーの練習までに戻ってくればいいかと考え、ついていくことにした。

こうして、ジェイコブは海賊になった。

海賊船には、宝の詰まった宝の箱を見せてくれた。

この宝の箱の安全な隠し場所を探しに行くのだ。

船は帆を上げ出航した。

海賊船では、大声を出した方がいいし、荒々しい言葉遣いも出来る。

野菜だって食べなくていいし、「食べなさい」と言われることもない。

晩ご飯の後はみんなにサッカーを教えた。

甲板でサッカーをしていると、ボールが海へ落ち、サメが食べておしまいになったけど。

家で寝る時間はとっくに過ぎていた。

でも、「寝なさい」「お風呂に入りなさい」「歯を磨きなさい」なんて誰も言わない。

海賊は、やりたくないことは絶対やらないのだ。

ジェイコブは永久に海賊でいたいと思った。

でも、海賊たちは布団にくるんでも、お話を読んでもくれないことにも気付いた。

ようやくうとうとし始めた頃、嵐になった。

船室には誰もいず、みんなデッキで動き回っている。

誰もジェイコブと一緒にはいてくれないし、慰めてもくれなかった。

やっぱりジェイコブは、海賊になんてなりたくなかったのだ。

ちょうどその時、雷が落ち、マストが真っ二つに割れた。

こうなっては戻るほかなかった。

だが、宝の箱を隠す場所がまだ見つかっていない。

困っている海賊たちの前に、ジェイコブが進み出た。

そして、「埋めるのに最高の場所を知っている」と叫んだのだ。

一体その隠し場所とは・・・?

『こうしてぼくは海賊になった』の素敵なところ

  • 全力で味わえる海賊感
  • 海賊のいい所と悪い所、両方味わえる
  • 色々な意味で最高の隠し場所

全力で味わえる海賊感

この絵本のなによりの魅力は、全力で海賊気分を味わえることでしょう。

調子っぱずれの海賊たちの歌。

腕を見込まれ、仲間に引き入れられる嬉しさと胸の高鳴り。

船長がなにか言うたび、復唱する仲間の大声。

出航のワクワク感。

大騒ぎな晩餐に、肉に酒。

そして嵐。

もう、「海賊だったらこうでしょう」という、要素が全て詰まっていてワクワクしない訳がありません。

子どもたちも、

「すっげー!」

「海賊楽しそうー!」

「宝だー!!!」

と、目をキラキラさせて見つめていました。

さらには、本当にそこにいるかのような、リアリティと迫力のある絵が、海賊たちの存在感を引き立て、自分がその場にいるような気分にさせてくれるのも素敵なところ。

より、ジェイコブになりきって、海賊船に乗り込むことが出来るのです。

海賊のいい所と悪い所、両方味わえる

そんな海賊船での生活は、ものすごく楽しく、ものすごく厳しいものでした。

この両面がきちんと描かれているのも素敵なところです。

口うるさく言う人もいないし、やりたいことだけやればいいという海賊の自由さ。

これに憧れない訳がありません。

好きなように遊び、好きなように寝る。

永久に海賊でいたくなる気持ちもわかります。

でも、その代償はもちろんあります。

自分の好きなようにできるということは、自分ですべてしなければいけません。

これは子どもには厳しい世界。

本も読んでくれないし、寝かしつけてもくれません。

温かい言葉や、見守ってくれることもないのです。

海賊の生活を通して、自由のよさと厳しさが伝わってくるのです。

これを見ると、子どもたちの中でも、

「それでも、海賊になりたい!」

「やっぱり家がいいな~」

と、色々な意見が出ます。

こんな風に、海賊のいい所、悪い所を考えながら、海賊生活をリアルに考えられるのも、この絵本のおもしろいところです。

色々な意味で最高の隠し場所

さて、紆余曲折の海賊生活ですが、ついに宝の隠し場所が見つかります。

これがなんとも意外なところ。

灯台下暗しとはこのことです。

ジェイコブの提案で、海賊たちもジェイコブも、みんな幸せな結果となりました。

でも、丸く収まっただけでなく、その後が気になる展開にもなっています。

その後のジェイコブ、海賊、宝の箱。

そのどれもが「どうなるんだろう?」と、ちょっと気になるのです。

子どもたちの間でも、その後を予想したりと、この「ちょっと気になる」がいいスパイスになっていました。

このハッピーエンドの中の余白も、この絵本の素敵なところです。

二言まとめ

一日だけの海賊生活を通して、海賊の自由気ままな生活を味わい尽くせる。

海賊の暮らしのいい所、悪い所、両方ともがよくわかる絵本です。

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