シカクさん(4歳~)

絵本

文:マック・バーネット 絵:ジョン・クラッセン 訳:長谷川義史 出版:クレヨンハウス

体の四角いシカクさんの仕事を、体の丸いマンマルさんが勘違い。

シカクさんは、やったこともない仕事をすることに。

勘違いと勘違いが交差する、不思議で幸せ(?)なお話です。

あらすじ

体の四角いシカクさんが、秘密の洞穴にいました。

シカクさんは毎日洞穴に行き、四角い岩を一つ選ぶと、その岩を押して山のてっぺんまで持っていきます。

これが、シカクさんの仕事です。

ある日、シカクさんが仕事をしていると、体の丸いマンマルさんがやってきました。

シカクさんが岩を運んでいるのを見て、彫刻家だと勘違いするマンマルさん。

彫刻家がなにかわからないシカクさんが、マンマルさんに聞いてみると、「岩をアートにする人」とのこと。

マンマルさんは、四角い岩を見て、シカクさんが自分そっくりのアートを作ったのだと思ったようです。

すると、マンマルさん、シカクさんに自分にそっくりなのも作って欲しいと言い出しました。

そして、シカクさんが断る間もなく、行ってしまったのでした。

シカクさんは困りながらも、岩を削ってみることに。

でも、中々上手くいきません。

雨も降り出しました。

それでもシカクさんは頑張りました。

その結果・・・。

岩を削り過ぎて、なんにもなくなってしまいました。

あるのは辺りに散らばった岩の欠片だけ。

もう寝ずにやるしかありません。

・・・と思っていたけど、寝てしまいました。

雨が降り続ける中で。

そして気付けば朝。

外はいい天気です。

シカクさんはびしょびしょで目を覚ましました。

そこへ現れたマンマルさん。

作品を楽しみにしています。

一体どうなってしまうのでしょう・・・。

『シカクさん』の素敵なところ

  • とんとん拍子に進む勘違い
  • 健気なシカクさんの頑張る姿
  • 勘違いが勘違いを呼んだまさかのハッピーエンド

とんとん拍子に進む勘違い

この絵本のおもしろいところは、どんどん連鎖していく勘違いでしょう。

シカクさんの仕事を、彫刻家だと勘違いするマンマルさん。

話せば話すほど、シカクさんを彫刻家だと思い込んでしまいます。

それを見た子どもたちは、

「彫刻家じゃないのに・・・。」

「マンマルさん勘違いしてる!」

と、シカクさんと一緒に焦ります。

完全にシカクさんと同じ気持ちで、物語が進んでいくのもおもしろく、シカクさんの焦りや苦労が思い切り伝わってくるのです。

健気なシカクさんの頑張る姿

そんな無理難題を押し付けられたシカクさん。

ブツブツ言いながらも、健気に頑張るのが素敵なところ。

覚悟を決め、岩を掘り、失敗し、また堀り・・・。

雨が降ってくる中で、一人頑張る姿は健気そのもの。

岩が粉々になっても諦めないのだから本当にすごい。

シカクさんの姿を見ていると、応援したくなるし、なんとか完成させてほしいと心から思えてきます。

でも、流石に限界はあります。

自暴自棄になり、恨み言を言うシカクさん。

その姿は人間味に溢れ、これまでの頑張りを見てきたからこそ、

「しょうがないよ、彫刻家じゃないんだもん・・・」

と、諦めたシカクさんを、みんな受け入れてくれるのです。

勘違いが勘違いを呼んだまさかのハッピーエンド

ただ、マンマルさんは待ってくれません。

翌朝、ものすごくウキウキしながら、シカクさんの元を訪れます。

子どもたちもシカクさんも、

「もうだめだ・・・」

と、覚悟を決めたその時。

勘違いの奇跡が起こります。

結果はまさかのハッピーエンド。

シカクさんも、子どもたちもポカーン。

マンマルさんは幸せそう。

「よかったような、そうでもないような・・・」

この空気感がなんとも素敵。

ハッピーエンドなのに、なんだか腑に落ちない感じが残るちぐはぐ感も、この絵本の大きな魅力だと思います。

二言まとめ

勘違いに始まり、勘違いに終わるすれ違いっぷりがおもしろい。

シカクさんと一緒に、振り回される苦労をたっぷりと味わえる絵本です。

コメント

  1. 草枕(レンマ学) より:

    いつもお世話になっております。
    数の言葉ヒフミヨ(1234)の具体と抽象を想いここに来ます。
    「はじめてのさんすう⑤まる・さんかく・しかく」が具体なら、このシリーズは、抽象(?)・・・
    [●▲■の美しさって何?」本江邦夫著のカンデインスキー、モンドリアン、マレーヴィチ、この本には触れていないパウル・クレーらを想う・・・
     特に、モンドリアンの[進化]がオモシロイ・・・

    「シカクさん」「サンカクさん」「マンマルさん」の関係(縁起)は、数の言葉ヒフミヨ(1234)が[直交座標]を背負い込んでいるように観える・・・

    「仙厓の〇△□無法の禅画を楽しむ法」中山喜一郎著の、[○△□]から数の言葉ヒフミヨ(1234)への橋渡しを、パウル・クレーの「いとまごい」に託す・・・

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