ゆうちゃんとめんどくさいサイ(3歳~)

絵本

作:西内ミナミ 絵:なかのひろたか 出版:福音館書店

めんどくさがりの男の子ゆうちゃん。

歯磨きをしないで遊んでいると、牙が生えてきました。

そこで、オオカミの家の子になることに。

でも、オオカミの家でもめんどくさがって・・・。

あらすじ

男の子ゆうちゃんが朝起きると、お母さんが洋服に着替え歯を磨くように言いました。

でも、ゆうちゃんはめんどくさがって、歯磨きもせず、パジャマで遊んでいました。

すると、歯がとんがって伸びてきたではありませんか。

お母さんに「牙のある子はオオカミさんの子どもにおなり」と言われましたが、ゆうちゃんは全然平気。

さっさと家を出ていってしまいました。

ゆうちゃんが森を歩いていると、オオカミの子がかごめかごめをしていました。

ゆうちゃんも入れてもらって遊んでいると、オオカミのお母さんが呼びに来ました。

子どもの数を数えてみると、なにやら一人多いですが、気にせず家に連れていってくれました。

家に着くと、オオカミのお母さんが「帽子を脱ぎなさい」と言います。

オオカミの子どもたちは、帽子を脱いできましたが、ゆうちゃんはめんどくさがって脱ぎません。

そのままお昼ごはんを食べようとすると、帽子がむくむく持ち上がってきました。

頭から角が生えてきたのです。

それを見たオオカミのお母さんは「角のある子はオニさんの子どもにおなり」と言われてしまいました。

でも、ゆうちゃんは全然平気。

さっさと出かけていきました。

森の奥へ行くと、オニの子どもたちが鬼ごっこをしていました。

ゆうちゃんも入れてもらって遊んでいると、オニのお母さんが呼びに来ました。

数を数えると、一人多いみたいですが、気にせず家へ連れて帰りました。

家に着くと、お風呂の時間です。

湯船につかる前に、お尻をよく洗いなさいと言われましたが、ゆうちゃんはめんどくさがりそのまま湯船に飛び込みました。

湯船から上がると、ゆうちゃんのお尻に尻尾が。

それを見たオニのお母さんは「尻尾の生えている子はトロルさんの子どもにおなり」と言いました。

でも、ゆうちゃんは全然平気。

さっさと出かけていきました。

森の奥の奥へ来ると、トロルの子どもが花火で遊んでいました。

ゆうちゃんも入れてもらって遊んでいると、トロルのお母さんが呼びに来ました。

数を数えると、一人多いみたいでしたが、気にせず家へ連れて帰りました。

家に着くと、パジャマに着替えなさいと言われました。

ゆうちゃんもめんどくさがらずにいい返事。

なぜなら、最初からパジャマを着ているから。

けれど、ベッドが足りません。

ゆうちゃんがトロルのお母さんの大きいベッドに入ると、「人間のにおいがするよ。人間の子は出ておいき」と追い出されてしまったのでした。

ゆうちゃんが暗い道を進んでいくと、一軒の小屋がありました。

いい匂いもしてきます。

ゆうちゃんが小屋に入ると、そこにはくむくじゃらの生き物がいました。

ゆうちゃんが「あんただれ?」と聞くと、「めんどくさいサイ」だと答えます。

そして、ゆうちゃんの牙と角と尻尾を見ると「俺に似ているから子どもになれ」と言ってきました。

それを聞いたゆうちゃんは、あっさりと了解。

めんどくさいサイの子どもになってしまいました。

でも、その翌日・・・。

『ゆうちゃんとめんどくさいサイ』の素敵なところ

  • 子どもの怖い代名詞へ自分から行く、怖いのもの知らずなゆうちゃん
  • わかりやすい繰り返しの中で変化していくゆうちゃんの体
  • 自分よりもめんどくさがりな相手

子どもの怖い代名詞へ自分から行く、怖いのもの知らずなゆうちゃん

この絵本でなによりもおもしろいのは、怖いもの知らずなゆうちゃんです。

まず、お母さんに叱られても全然平気。

お母さんに言われたら怖い言葉の代名詞。

「出ていきなさい!」

「他の家の子どもにおなり!」

これが全く聞きません。

それどころか、「いってきまーす!」と元気に出て行ってしまう始末。

これには子どもたちも、

「えー!?ほんとに行っちゃうの!?」

と、ビックリ仰天。

さらにおもしろいのが、その行先です。

これも怖いものの代名詞「オオカミ」「オニ」「トロル」の三大巨頭がそろい踏み。

「怖いから絶対やだ!」「オニの所なんて行きたくない!」と子どもたちが言う中、平気で行って一緒に遊び始めてしまいます。

この図太さと怖いもの知らずさが、自分には出来ないことをやってくれるワクワク感と、怖いもの見たさのドキドキ感を与えてくれるのです。

わかりやすい繰り返しの中で変化していくゆうちゃんの体

そんなゆうちゃんの冒険は、わかりやすい繰り返しで描かれます。

家を出て、子どもに会い、数えられ、家に行き、めんどくさがって追い出される。

毎回この構成で進んでいきます。

流れがわかっているからこそ、安心して見ることができたり、「数えられた時に一人多い」などのお約束のおもしろさが感じられるのです。

でも、この繰り返しの中で一つ変わっていくことがあります。

それがゆうちゃんの体です。

最初は牙だけだったのが、角が生え、尻尾まで生えてきます。

一つ家を経るごとに、人間から遠ざかっていくゆうちゃん。

驚きとおもしろさに加え、「どうなっちゃうんだろう・・・」という不安も感じます。

この不安感が、最後の場面へのいいスパイスとなっているのです。

自分よりもめんどくさがりな相手

さて、その最後の場面がなんともゆうちゃんらしいものでした。

色々なことを「しなさい」と言われて来たゆうちゃん。

ですが、めんどくさいサイのところでは違います。

自分よりもはるかにめんどくさがり屋のサイ。

これまで、そんな相手に会ったことはないでしょう。

それを反面教師にして・・・なんてことはありません。

ゆうちゃんはゆうちゃんです。

でも、ちゃんと人間に戻り家に帰ります。

けれど、この経験を特に活かさず、家でめんどくさがっていることでしょう。

この教訓的でなく、ゆうちゃんらしいままで終わるのが、この物語の本当に素敵なところだと思います。

二言まとめ

めんどくさがりなゆうちゃんの自由奔放さや、「怖い」生き物たちの家でのやり取りがおもしろい。

めんどくさがり屋を突き詰めるとどうなるかがわかるで本です。

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