作:ペク・ヒナ 訳:長谷川義史 出版:ブロンズ新社
弱い者いじめが大好きな札付きのネコ。
ある日、ニワトリの卵を丸呑みします。
それ以来、段々とお腹が大きくなり・・・。
あらすじ
ニャンイという、やっかいもののネコがいました。
太っちょで、食いしん坊、弱い者いじめが好きな札付きのネコでした。
ニャンイの大好物は、産みたての卵です。
そんなある朝。
ニャンイは鳥小屋にある一つの卵を見つけました。
親鳥は留守です。
ニャンイはすぐさま、その卵を口に入れ、どこかへと行ってしまったのでした。
それから日ごとに、ニャンイのお腹は大きくなっていきました。
お腹の中で、卵の中身が育っていたのです。
ある日、お腹が痛くなり、ニャンイはトイレに走りました。
ニャンイはトイレで踏ん張ります。
ところが、踏ん張って出てきたのは、うんこではなくヒヨコ。
驚くニャンイのところへ、ヒヨコがよちよちと歩いてきて、胸に身をうずめます。
どうしたらいいかわからにニャンイでしたが、ヒヨコの頭をそっとなめてみました。
すると、気持ちよさそうに目を閉じ「ピヤッ・・・」と返事をするヒヨコ。
それを見て、ニャンイはなぜだか胸が痛くなりました。
そして、ヒヨコのことを「ピヤキ」と名付けたのでした。
ニャンイとピヤキの暮らしは一体どんなものになるのでしょうか?
『ピヤキのママ』の素敵なところ
- 見た目も行動も悪すぎるニャンイ
- ヒヨコを生んじゃうまさか過ぎる展開
- 変わっていくニャンイと周囲の姿
見た目も行動も悪すぎるニャンイ
この絵本で、最初に目に留まるのは、悪すぎるニャンイの姿でしょう。
その人相の悪さに負けないくらいの素行の悪さに驚きます。
特に、産みたての卵を、お母さん鶏の目の前でもてあそぶ姿は悪魔そのもの。
こんなに悪いネコはそうそう見ないことでしょう。
周囲からもやっかいもの扱いされているし、見ている子どもたちも「やだー!」と嫌っています。
でも、だからこそ物語の後半へと繋がっているのです。
ヒヨコを生んじゃうまさか過ぎる展開
そんなニャンイにも転機が訪れます。
いつも通り、卵を盗み食べるのですが、いつもと様子が違います。
お腹が大きくなっていくのです。
お腹の中で受精卵から、ヒヨコの姿へ育っていく様子が描かれているのもおもしろく、生命の誕生の神秘へもちょっぴり触れることが出来ます。
わかる子には、
「あ!鳥の形になってきてる!」
とわかり、ヒヨコが生まれるんじゃないかという期待感が高まります。
そして、本当に生まれるヒヨコ。
予想していた子も、そうではない子も、みんなびっくり。
「ヒヨコが生まれちゃった!」
「うんちだと思った!」
「卵生きてたんだ!」
と、まさかの展開に大盛り上がりでした。
変わっていくニャンイと周囲の姿
しかし、安心してばかりもいられません。
目の前には札付きの悪者ニャンイがいるのです。
ヒヨコだって食べてしまうかもしれません。
ニャンイがヒヨコの頭をなめようとする時など、みんな目を覆ってビクビクしていたくらいです。
でも、そうはなりませんでした。
ヒヨコが自分を慕う姿を見て、なにかが変わったニャンイ。
そこからのヒヨコとの生活は、とてもほっこりする、不器用で温かいものでした。
この絵本の素敵なところは、ニャンイの変わった姿だけでなく、周囲から認められる姿も描かれていること。
変わったことで、社会に受け入れられる。
それに対する、ニャンイの最後の一言がなんとも素敵なのです。
二言まとめ
手の施しようのないやっかいものが、守るべきものを見つけた瞬間変わっていく。
その不器用な一生懸命な姿と、それが認められる様子に心温まる絵本です。
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