作:桑原伸之 出版:小峰書店
小学校って未知の世界。
「小学校に行ったらどうなるんだろう?」
そんな疑問に一問一答で答えてくれるのがこの絵本。
きっと不安を解消し、期待に変えてくれるでしょう。
あらすじ
もうすぐ一年生。
小学校について、気になることがたくさんある。
先生は怖くないの?
とっても優しいよ。
それに、みんなの知らないこと、たくさん教えてくれるよ。
海の向こうになにがあるか、教えてくれるかな?
ひらがな全部書けないの。
大丈夫。
うみ、そら、いるか、はっぱ、おひさま、それからそれから、自分の名前、きむらしゅん。
ほら、こんなに書けた。
私、声が小さくて、しゃべるのが遅いの。
声が大きい子、小さい子、しゃべるのが速い子、遅い子、かけっこの速い子、遅い子。
色んな子がたくさんいるよ、楽しいね。
私、このままでいいんだよね?
絵を描く時間はあるよね?
もちろんあるよ。
海や、友だちの顔の絵、大好きな絵をたくさん描けるよ。
学芸会では大きな絵を描くのかな?
友だち出来るかな?
男の子、女の子、髪の長い子、短い子、隣に座る子はどんな子かな?
なぞなぞしてみようかな。
すぐ友だちになれなくたっていいよね。
他にも「大好きなサッカーできるよね。」「まだ、時計が読めないの。」「私、朝寝坊しないで起きられるかな?」と色んな質問が飛び出します。
どんな答えを返してくれるのでしょうか?
『もうすぐ一年生』の素敵なところ
- 一年生へのたくさんの疑問に答えてくれる
- 優しく具体的な答えで背中を押してくれる
- 今との共通点を伝えてくれる
一年生へのたくさんの疑問に答えてくれる
この絵本では、小学生になることへの疑問や不安に一問一答で答えてくれます。
子どもにとって、小学生になることはとても大きな変化です。
期待と一緒に、たくさんの不安があることでしょう。
字が書けない、時計が読めない、自分のしたいことが出来るかな?
などなど、その内容は一人ひとり違うと思います。
そこで、たくさんの疑問に、一問一答で答える形式が活きてきます。
たくさんの疑問の中には、きっと自分の疑問もあるはずです。
その疑問に答えてもらえることで、心を軽くしてくれるのがとても素敵なところです。
優しく具体的な答えで背中を押してくれる
また、答え方がとても優しく、具体的なのもいいところ。
語りかけるように、優しく「大丈夫」と寄り添ってくれるのです。
その寄り添い方が素敵で、疑問を必ずしも解決はしてくれるわけではありません。
「友だち出来るかな?」という疑問に、「すぐ友だちになれなくたっていいよね」とはっきりとは答えていなかったり、
「時計が読めないの」という不安に、「早く、時計が読めるようになりたいな」と「できるようになる」とは言わなかったり、
答えを与える訳ではないのです。
けれど、しっかりと不安や疑問に耳を傾け、話を聞いてくれる。
そんな相談に乗ってもらったような安心感があるのです。
同時に、答えが具体的なのも素敵なところ。
しゃべるのが遅い子には「声が大きい子、小さい子、しゃべるのが速い子、遅い子、かけっこの速い子、遅い子」と「色んな子」の中身を、
ひらがなが全部書けない子には「うみ、そら、いるか、はっぱ、おひさま、それからそれから、自分の名前、きむらしゅん」と書けることを、
具体的に伝えてくれます。
これにより、ただ「大丈夫」と言われるよりも説得力が増し、小学校でのイメージも湧きやすいのです。
今との共通点を伝えてくれる
さて、変化の多い小学校ですが、変わらないこともけっこうあります。
この変わらないところにも目を向けさせてくれるのは、この絵本のおもしろいところだと思います。
「絵を描く時間はあるよね?」「大好きなサッカーできるよね?」「ぼくの大好きなカレーライス出るかな?」などは、小学校でも変わらずあることです。
小学校へは変化にばかり目が向きがちです。
ですが、こうして変化のないことへも目を向けてくれることで、変わらないことがけっこうあることにも気付かされます。
自分の大好きなことが、小学校でも変わらずあるという共通点は、とても不安を和らげてくれることでしょう。
そこへ目を向けさせてくれることも、この絵本のとても素敵なところです。
二言まとめ
小学校への不安や疑問に、一問一答形式で相談に乗ってくれる。
話を聞いてもらうことで、心の不安がふっと軽くなり、小学校が楽しみになる絵本です。
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