だいすき~そんなきもちをつたえてくれることば(6歳~)

絵本

作:ハンス&モニック・ハーヘン 絵:マーリット・テーンクヴィスト 訳:野坂悦子、木坂涼 出版:金の星社

「だいすき」「ほし」「いぬ」などの身近な言葉。

そんな言葉を詩で表現したのがこの絵本

子どもならではの感性で紡がれた詩は、どれもかわいく芸術的です。

あらすじ

一人の小さな女の子が詩を紡ぐ。

「だいすき」

さがしているの
あたらしいことば
だれもしらないことば
さがしているの
だいすき
わたしのそんなきもち
つたえてくれることば

「ゆめ」

よるまだおそくならないうちに
ねどこがあたたかくなってきたころに
ゆめをみるの
なにをしてもいいゆめ
なんだってできちゃうゆめ
なんでももっているゆめ
でも
なきたいきもち
さみしいきもちだけは
もっていたくないの

「いぬ」

いぬがほしいの
しっぽをふるいぬが
いつもいっしょにあそびたいの
もうわがままいわない
つまんないなんてぜったいいわない
いぬがほしいの
かわいいしっぽのいぬが
なにいろでもいいの
ちゃんとまいにちせわをするから
あしたもきょうもあさっても

「みどりちゃん」

ちいさいいぬはこいぬ
ちいさいうしはこうし
ちいさいベッドはゆりかご
ちいさいひこうきはかみひこうき
ちいさいパンはひとくちパン
ちいさい「ゃ」はちいちゃいの「ゃ」
ちいさいおばかさんはおばかちゃん
それからそれから
ちいさいはっぱはみどりちゃん

「ワン・ツー・スリー」、「めにはみえない」、「おおきなあし」、「なみだ」、「くも」・・・。

まだまだ、詩の世界は広がって行きます。

『だいすき~そんなきもちをつたえてくれることば』の素敵なところ

  • 普段からよく使う言葉が詩になっていてイメージしやすい
  • 子どもの話し言葉で紡がれるわかりやすさ
  • 詩のイメージにピッタリの絵

普段からよく使う言葉が詩になっていてイメージしやすい

この絵本の素敵なところは、普段からよく使う言葉で詩を作っているところです。

普通に言うだけなら、言葉にすれば簡単に伝わる言葉。

「星」といえば、空に輝く様子が伝わるし、「おばあちゃん」と言えば、おばあちゃんの顔が頭に浮かびます。

でも、それをあえて別の言葉を紡ぎ、表現していく詩。

そこにはいつも使っている言葉への、新たな気付きがあります。

いつも使っている言葉を深く考える機会にもなります。

美しい言葉での表現に触れることも、とても新鮮で気持ちにいい体験です。

それを身近な言葉で紡ぐことで、子どもでも味わいやすくしているのが素敵です。

題材になっている言葉がしっかりイメージ出来ていないと、おもしろさは半減してしまうでしょう。

いつも使っている言葉だからこそ、すぐにイメージが出来、その言い換えや比喩を楽しめるのです。

子どもの話し言葉で紡がれるわかりやすさ

また、子どもの話し言葉で、詩が紡がれているのもわかりやすいポイントです。

この絵本の詩は、普段子どもが日常会話で話す言葉しか使われていません。

なので、普通にしゃっべっている時の様に、スッと言葉が頭に入ってくるのです。

けれど、言葉や表現の美しさは、大人の詩にまったく引けを取らないのがすごいところ。

寝ているママに起きて欲しくて「目を開けてよママ。はやくほんとのママになって」

お日さまが出てくるのを待ちながら「雲に割れ目を作ってちょうだい。空に光の穴を空けて」

というように、わかりやすいのに詩ならではの知的なおもしろさ、美しさを感じさせてくれるのです。

詩のイメージにピッタリの絵

さらに、耳だけでなく、目でも詩のイメージを伝えてくれるのは、絵本ならではの素敵なところでしょう。

英語を教える「ワン・ツー・スリー」なら、たくさんの人形を並べて、女の子が一番前で先生になる様子が描かれ、

なぜ雲はずっと空にあるのか考える「くも」なら、女の子が空に浮かぶ雲に釣り糸をひっかける様子が描かれます。

こんな風に、詩の中で出てくる一場面が、絵になってイメージしやすくなっているのです。

目で見てイメージが湧けば、そのぶん言葉も頭に入ってきやすくなります。

わかりやすい言葉と、イメージしやすい絵。

その両方を使い、詩に触れたことがない子にも、詩のおもしろさや美しさが伝わっていく。

まさに、詩へ初めて触れる時にぴったりの絵本なのです。

二言まとめ

わかりやすい言葉と表現、イメージが湧きやすい絵で、詩のおもしろさや美しさを伝えてくれる。

初めて詩に触れる子にぴったりな詩集絵本です。

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