作:マイク・クラトウ 訳:福本友美子 出版:マイクロマガジン社
小さなゾウのエリオットは、大きな街で一人暮らし。
高いところに届かなかったり、周りに気付いてもらえなかったりと苦労が続きます。
そんなある日、自分より小さなネズミを見つけます・・・。
あらすじ
エリオットは水玉模様の、小さなゾウです。
エリオットは大きな街に住んでいました。
いい街ですが、小さなエリオットには大変なこともありました。
人混みで踏みつぶされないようにしたり、
ドアノブが高くて、入り口を中々開けられなかったり、
冷蔵庫の中身を出すのに苦労したり・・・。
でも、それなりに楽しみもありました。
中でも一番の楽しみは、お菓子屋さんのカップケーキです。
ある日、エリオットはカップケーキを買いに来ました。
しかし、小さなエリオットに誰も気づいてくれません。
カップケーキを買うことは出来ませんでした。
エリオットがとぼとぼと家に帰る途中のことです。
ゴミ箱を見上げる、エリオットよりももっと小さいネズミを見つけました。
エリオットよりもっと困っています。
エリオットはネズミに声をかけました。
すると、ゴミ箱にある食べ物に手が届かなくて困っているのだと言います。
エリオットは鼻にネズミを乗せ、食べ物を取るのを手伝ってあげました。
エリオットは手伝っている時、世界一背の高いゾウになった気分でした。
次の日、エリオットとネズミは、お菓子屋さんにカップケーキを買いに来ました。
今度は買うことが出来るのでしょうか?
『ちいさなエリオット~おおきなまちで』の素敵なところ
- 人間の大きな街のリアルなサイズ感
- 自分よりもっと大変な人もいることへの気付き
- 一緒だと楽しいし生きやすい
人間の大きな街のリアルなサイズ感
この絵本のおもしろいところは、エリオットの住む街が、リアルな人間サイズの街だということです。
人の大きさも、建物の高さも、すべてが現実の世界と同じサイズ感です。
街だけじゃなくエリオットの住む部屋も、流し台やテーブル、冷蔵庫の大きさまで、大人の人間が住んで丁度いいサイズだから、まあ大変。
椅子に座るときは、積んだ本の上に座り高さを上げたり、
例倉庫の奥の方から物を出す時は、ほうきでかきだしたり・・・。
ちょっとのことでも、大仕事です。
カウンターが高すぎて、大好きなカップケーキだって買えません。
でも、街の大きさがリアルだからこそ、エリオットの大変さや、孤独感が伝わってくるのでしょう。
小さな体で、大きな街に暮らすエリオットの姿は、新しい街に引っ越してきた時の不安感に似ているかもしれません。
誰も自分のことを知らない、話せる相手もいない。
そんな不安な感覚です。
自分よりもっと大変な人もいることへの気付き
けれど、エリオットは、自分よりも大変な相手がいることに気付きます。
それは小さなネズミでした。
エリオットは苦労はしているけれど、日々のご飯に困ってはいないし、自分の家もあります。
ですが、ネズミは日々のご飯を食べるのにも苦労していました。
ゴミ箱からご飯を取ろうとして、それすら高すぎて届かないのです。
エリオットはネズミを手伝いました。
すると、これまでにはない、とても大きくなったような感覚を味わいます。
それはきっと、だれかと力を合わせることの力強さだったのでしょう。
小さくても、力を合わせることで、できなかったこともできるようになる心強さ。
そんなものを、エリオットとネズミの姿を通して、感じさせてくれるのです。
一緒だと楽しいし生きやすい
さて、そんな2人の最後の場面は、とても楽しいものでした。
これまでとは違う空気感。
最初は疎外感すらあった大きな街も、この場面ではエリオットとネズミを温かく包み込んでいるように見えてくるから不思議です。
きっと、孤独がなくなったからなのでしょう。
ネズミと一緒にいるエリオットの部屋の灯りからは、
「たった一人の、友だちや理解者がいるだけで、世界は変わる。」
そんなメッセージが伝わってくるようです。
希望と楽しさに溢れた結末。
そして、「2人になったエリオットとネズミが、この街でどんな暮らしをしていくのだろう?」と想像が膨らむところもこの絵本の楽しくて素敵なところです。
二言まとめ
街をリアルなサイズ感で描くことで、小さな体で暮らすことの大変さがとても伝わってくる。
その中でも、友だちと力を合わせることで、楽しく力強く生きていけることを感じさせてくれる物語です。
コメント