ないしょのおともだち(4歳~)

絵本

文:ビバリー・ドノフリオ 絵:バーバラ・マクリントック 訳:福本友美子 出版:ほるぷ出版

両親には内緒の秘密の友だち。

それは、家に住み着くネズミの女の子。

2人は内緒の友情をはぐくみます。

でも、大きくなり家を出て、離れ離れになった2人は・・・。

あらすじ

昔、とても大きな家に、マリーという女の子が住んでいました。

この大きな家のすみにも家があって、ネズミの女の子が住んでいました。

マリーにもネズミにも、お父さん、お母さん、妹と弟がいました。

2人とも毎朝学校へ行き、同じように勉強していました。

ある晩、マリーが夕飯の後片付けをしていると、フォークを落としてしまいました。

ちょうど同じころ、ネズミも夕飯の後片付けをしていて、スプーンを落としてしまいました。

2人が同時に拾おうとしゃがんだ時、お互いに気が付きました。

でも、2人とも人間はネズミに、ネズミは人間に近づいてはいけないと両親に言われていたので、内緒にしておきました。

次の日、マリーはフォークをわざと床に落としました。

ネズミもわざとスプーンを落としました。

そして、お互いに手を振りました。

それから毎晩、マリーとネズミは同じことをして、手を振り合うのでした。

やがて、マリーは大きくなって家を出ていきました。

ネズミも大きくなって、家を出ていきました。

2人はもう会えなくなりました。

さらに時が経ち、マリーはお母さんになり、家族と一緒にとても大きな家に住みました。

ネズミもお母さんになり、家族と一緒にとても大きな家のすみにある、小さな家に引っ越して来ました。

マリーの娘のマリアは、毎朝学校へ行きました。

ネズミの娘のネズネズも、毎朝学校へ行きました。

2人とも学校で、同じように勉強しました。

ある晩、マリアは寝る前に本を落として拾おうとしました。

ちょうど同じころ、ネズネズも本を落として拾おうとしました。

そして・・・。

『ないしょのおともだち』の素敵なところ

  • 左右対称に描かれるマリーとネズミの生活と友情
  • 世代をまたいだ繰り返し
  • 昔とは少し違う最後の場面

左右対称に描かれるマリーとネズミの生活と友情

この絵本のなによりおもしろいところは、左右対称に描かれる、マリーとネズミの日々でしょう。

家族構成も一緒、住んでいる建物も一緒、学校での姿も一緒です。

その描き方もおもしろく、

「マリーは毎朝、通りの先にある学校に行きました」

「ネズミは毎朝、木の洞穴にある学校へ行きました」

というように、文章を対応させて繰り返しのようにしたり、絵の構図をまったく同じにしたりして、2人の生活を描いているのです。

子どもたちも、

「2人とも一緒だ!」

「人間とネズミなのにね」

と、その共通っぷりに自然に気付き、見た目はまったく違うのに、同じ生活を送るおもしろさを感じている様でした。

その好奇心もまったく一緒で、フォークとスプーンを落として以来、2人とも同じことをして、手を振り続けます。

この毎日ひそかに友情をはぐくんでいく姿が、なんとも微笑ましいのも素敵なところです。

世代をまたいだ繰り返し

けれど、時が経ち、大きくなれば別れの時が訪れます。

2人とも家を出て、一人暮らしを始めるのです。

離れ離れになり、お互いに娘が生まれ、母になった2人。

その後に奇跡は起こります。

家族と一緒に同じ家へと引っ越してきたのです。

そこからは、主人公がマリーの娘のマリアと、ネズミの娘のネズネズへと世代交代します。

2人は同じ様に学校に行き、勉強して日々を過ごします。

その流れや描き方は、マリーとネズミの時とまったく一緒。

世代を超えた繰り返しとなっています。

「マリーの時と一緒だね!」

「2人も会うのかな?」

と、子どもたちも、そのおもしろさとその後の展開への期待にワクワクです。

そして、本を落とすマリア。

「あ、ネズネズに気付くかも!」

と、待ちにに待った場面がやってきます。

これは繰り返しだからこそのおもしろさでしょう。

マリーの時と、マリアの時。

両方を同じ流れで描く繰り返しにしたことで、奇跡的な運命の巡り合わせをより強く感じられるのです。

昔とは少し違う最後の場面

さて、そんな物語の最後の場面は、繰り返しでは終わりませんでした。

同じように終わるのかと思いきや、マリアとネズネズは、お母さんたちができなかった一歩を踏み出します。

この一歩がなんとも素敵。

絵本が終わった後にも、マリアとネズネズの明るい未来が想像できるのです。

「もしかしたら、内緒じゃなくなるかも・・・」と。

そして、それはお母さんがマリーとネズミだからこそ。

マリーとネズミの両親は「危険だから近づくな」と言いました。

けれど、マリーとネズミは、娘たちにそんなことは言っていないでしょう。

だから、最後の勇気が出たのかもしれません。

それに、マリアとネズネズのことを知っても、きっと止めはしないでしょう。

それどころか、マリーとネズミが再開できるかもしれません。

こんな風に、最後の場面からとても色々な未来が想像できてしまうのです。

そんな夢や未来を想像させてくれる、繰り返しじゃない最後の場面がこの絵本のとても素敵なところです。

二言まとめ

人間とネズミの内緒の友情を、世代を超えた繰り返しで描く。

人間とネズミの繰り返しとお母さんと子どもの繰り返しの、二重の繰り返しがとてもおもしろい絵本です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました