作:マティアス・イェシュケ 絵:エファ・ムッゲンターラ 訳:かのうのりたか
出版:フレーベル館
男の子はいつも一人ぼっち。
そこで友だちを探しに行くことにした。
それに協力してくれたのは一匹のネズミ。
友だち探しの長い旅が始まります。
あらすじ
男の子ペーター・プムは、一人ぼっちでとても寂しく感じていました。
そこにやってきたのは、ネズミのクラウス。
ペーター・プムはクラウスに、友だち探しの旅に出ることを伝えました。
すると、クラウスも一緒に行くと言います。
でも、ペーター・プムはどうやって友だちを探せばいいかわかりません。
そこでクラウスが「きみが好きなものを同じように好きだと思う人をみつけることだよ」と教えてくれました。
こうして2人は旅に出ました。
森にやってきた2人はカラスに会いました。
ペーター・プムは聞きました。
「温かいキイチゴのソースをかけたバニラアイスを食べることが好きって聞いたけど、本当?」
すると、カラスは「好きじゃない。それならウサギのところへ行きな」と言いました。
ウサギのところへやってくると、ペーター・プムはまた聞いてみました。
「温かいキイチゴのソースをかけたバニラアイスを食べることと、のんびりハンモックに寝ることが好きって聞いたけど、本当?」
しかしウサギも「好きじゃない。それならカモメのところへ行きな」と言いました。
カモメに会うと、ペーター・プムは言いました。
「温かいキイチゴのソースをかけたバニラアイスを食べることと、のんびりハンモックに寝ることと、くるりととんぼ返りをするのが好きって聞いたけど、本当?」
けれどカモメも「好きじゃない。それならカモシカのところへ行きな」と言いました。
それを聞くと、ペーター・プムは砂浜に座り込んでしまいました。
大きなため息をついています。
それを見たクラウスは「2人で一緒にやればきっと見つかるよ!」と励ましました。
暗くなってきたので、2人は砂浜で眠ることにしました。
翌朝、2人はカモシカのところへやってきました。
そして、また聞きました。
けれどやっぱり好きじゃありません。
ペーター・プムの友だちは本当に見つかるのでしょうか・・・?
『ペーター・プムのともだちさがし』の素敵なところ
- 繰り返しのやり取りと、どんどん増えていく好きなもの
- ずっと一緒にいてくれるクラウス
- 長い旅を一緒にしたから気付いたこと
繰り返しのやり取りと、どんどん増えていく好きなもの
この絵本のおもしろいところは、好きなものがどんどん増えていく繰り返しです。
他の生き物に会う→好きかどうか聞く→好きじゃないと言われる→他の生き物を紹介される
という繰り返しで進んでいきます。
その中で、次の相手に好きかどうか聞くたびに、好きなものが一つずつ増えていくのです。
最初は「温かいキイチゴのソースをかけたバニラアイスを食べることが好き」という一つだけでしたが、話が進むうち「温かいキイチゴのソースをかけたバニラアイスを食べることと、のんびりハンモックに寝ることと、くるりととんぼ返りをすることと、朝早く散歩して野ばらのにおいをかぐことと・・・」と、最終的には8個も聞くことに。
子どもたちも、
「どんどん増えてくじゃん!」
「長すぎる~」
「増やさなきゃいいのに・・・」
と、毎回増えていく質問に、驚きつつ、おもしろがっていました。
ページをめくるたびに始まるリズミカルな繰り返しと、繰り返されるたびに起こる変化、そのせいで中々友だちが見つからないと言う皮肉が、この絵本のとてもおもしろいところです。
ずっと一緒にいてくれるクラウス
そんな旅に、最初からずっと一緒にいてくれるネズミのクラウス。
どうしていいか途方に暮れているペーター・プムにアドバイスをしてくれたり、落ち込んでいる時に励まして元気をくれたりと、とても大切な存在です。
きっと、クラウスがいなかったら、旅を始めることもできなかったでしょう。
その姿からは、ペーター・プムのことを大好きなのが伝わってきます。
2人が友だちじゃないのが不思議なくらい。
繰り返しの間に挟まれる2人の時間や、2人の会話は癒しの時間。
生き物たちから「そんなもの好きじゃないよ!」と厳しめに拒否されるので、心が折れかけますが、2人の時間がペーター・プムも、見ている子どもたちも回復してくれるのです。
長い旅を一緒にしたから気付いたこと
さて、二人三脚で旅を続けてきた2人。
長く険しい旅を終え、ネズミのクラウスはあることに気付いたのです。
それはとても単純で、とても大切なことでした。
近くにいたからこそ気付かなかったのかもしれません。
きっと、見ている子どもは薄々気づいていたことでしょう。
けれど、2人の中ではっきりと気付き、確認することが大切だったのだと思います。
苦しい思いもたくさんした長い旅。
それを2人でやりきったからこそ気付き、実感できたんだろうな~という納得感も、この絵本のとても素敵なところです。
二言まとめ
好きかどうか聞くたびに、どんどん質問が増えていく繰り返しがおもしろい。
近すぎて気付かなかった、大切なものに気付かせてくれる物語です。
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