作:いまいあやの 出版:BL出版
静かで自由できままな一人暮らし。
でも、そこに予期せぬ来訪者が現れた。
静かで自由できままな一人暮らしは幕を閉じ、賑やかな歌声がいつも聞こえる生活に。
迷惑?それとも・・・。
あらすじ
クマのベルナルさんには友だちも家族もいなくて、いつも一人ぼっち。
でも、ベルナルさんは平気です。
そんなベルナルさんのただ一つの楽しみは、お気に入りの帽子をかぶって散歩をすることでした。
ある日、散歩の途中に寝ていると、キツツキが来て帽子に穴をあけ住み着いてしまいました。
家に帰って気付いたベルナルさんはキツツキを追い出そうとしましたが穴から動きません。
それどころか、他の鳥が来ると新しく穴を作ってしまうのでした。
鳥たちは増える一方。
すると、不思議なことが起こりました。
鳥たちが増えるたび、帽子がどんどん高くなっていったのです。
鳥たちの歌声や遊ぶ様子を見ていると、ベルナルさんも楽しい気持ちになってきました。
秋になり、ベルナルさんが鳥たちのエサをもって出てみると、帽子が空っぽになっていました。
ベルナルさんは「静かな元の暮らしに戻れるというものさ。心配なんてしてないぞ」と言いながらも、
鳥たちのエサを用意して、毎日窓の外を眺めていました。
冬になり、ベルナルさんは冬眠する時期になりました。
鳥たちが戻ってきたときのためになんとか起きていようとしましたが、深い眠りに落ちてしまいました・・・。
鳥たちはどこへ行ってしまったのでしょう。
ベルナルさんはまた鳥たちに会えるのでしょうか。
『ベルナルさんのぼうし』の素敵なところ
- 自然と人工物が違和感なく共存する温かい絵
- ベルナルさんの偏屈だけどかわいいキャラクター
- 見ているうちに欲しくなる魅力的な帽子
この絵本はベルナルさんと鳥たち以外は人間で、ベルナルさんは人間の町を歩いていたりします。
ベルナルさんの家の外見は人間の家のようですが、中を見ると床は草できのこや花が生えていて、蝶も飛んでいます。
おしゃれなテーブルや、帽子からは木の枝が生えてきているなど、自然と人工物が溶け合って描かれています。
しかし、そこに違和感はなく、最初は気にも留めないほど。
後々、ゆっくり見てみるとその共存に気付いたりします。
それがとても自然で魅力的で温かいのです。
そんな人間の中で暮らすベルナルさんですが、独り身の頑固なおじいちゃんといった風。
鳥たちを気遣ったり、楽しい気持ちを感じながらも素直になれない。
そんな偏屈だけど優しいキャラクターが、言葉の端々や行動に現れていて、とても魅力的です。
そして、そのベルナルさんがかぶっている不思議な帽子。
たくさんの鳥たちが楽しそうに住み着いている様子に、「あ、アヒルもいる。」「カラスもいる!」と、夢中になる子どもたち。
「私も欲しいな~」と言ったり、「僕は動物の住んでる帽子がいい」など思わずほしくなってしまう魅力がたっぷり。
鳥たちがとても写実的なのも本当にありそうと思わせてくれる要因かもしれません。
読むと、ベルナルさんやその帽子が大好きになる魅力あふれるお話です。
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