作:スティーブ・アントニー 訳:せなあいこ 出版:評論社
宮殿を出たところで、女王様の帽子が風で飛ばされてしまいました。
女王様と大勢の衛兵が帽子を追いかけます。
帽子はロンドン中の名所を駆け巡り・・・。
あらすじ
女王様は、大切な人に会うために、バッキンガム宮殿からお出かけです。
そこに風が吹き、お気に入りの帽子を吹き飛ばしてしまいました。
女王さまにも、衛兵にも手が届きません。
帽子はどんどん飛ばされていきます。
トラファルガー広場を越え・・・
ロンドン動物園を抜け・・・
地下鉄の中を飛び・・・
ロンドン・アイを通り過ぎ・・・
まだまだ飛ばされていく、女王様の帽子。
次に飛ばされる場所は・・・?
『女王さまのぼうし』の素敵なところ
- 次々出てくるロンドンの名所
- 大勢の衛兵による、名所でのわちゃわちゃ館
- 帽子の辿り着いた場所
次々出てくるロンドンの名所
この絵本の楽しいところは、帽子と一緒にロンドンの名所めぐりができるところです。
風で飛ばされた帽子は、捕まらないままロンドン中を巡ります。
その飛ばされる場所が、名所中の名所ばかりなのです。
トラファルガー広場、ロンドン動物園、ロンドン・アイ・・・。
もちろん、あの「ロンドンと言えば」という名所も出てきます。
大変そうな女王様をよそに、見ている方はちょっとした観光気分。
「すっごい大きい観覧車!」
「ロンドン橋ってここかな?」
「あ、これ見たことあるよ!」
など、魅力溢れる名所に心を奪われていました。
大勢の衛兵による、名所でのわちゃわちゃ館
そんなリアルに描かれた、本物そっくりの名所めぐりですが、絵本ならではの非現実感もこの絵本のとてもおもしろいところです。
それは、数えきれないほどの衛兵がついてきているということ。
トラファルガー広場では、ライオンの像を一列になった衛兵が、次々登って越えていきます。
ロンドン動物園では、動物が頭に乗っていたり、サルの登り綱に捕まっていたりと、動物園の全ての柵を壊してきたのかと思うほど。
地下鉄では、ブロックのように隙間なく詰め込まれているだけでなく、電車の上にまで捕まっている衛兵がいる・・・。
など、大勢だからこそのわちゃわちゃっぷりがすごいのです。
衛兵たちの捨て過ぎる必死さが、この絵本のおもしろさを引き立たせているのでしょう。
現実の名所ではできない、非現実感のおもしろさもこの絵本の素敵なところです。
帽子の辿り着いた場所
さて、飛ばされた帽子が辿り着く先は、意外な所でした。
そこは元々女王様が向かっていた目的地。
帽子の着地と一緒に、大切な人の正体もわかります。
このロンドン中を巡った結果、目的地に辿り着く流れが、ピタゴラスイッチのようで、とても楽しく気持ちいい。
そして、最後の場面で、この後は大切な人と、穏やかな時間を過ごすのだろうなとほっとした気持ちになるのです。
なんの変哲もないお出かけから、ロンドン中を巡る壮大な追いかけっこが始まり、なんの変哲もない日常に戻ってきてほっとするという、起伏の大きな物語の流れも、この絵本のとてもおもしろいところです。
二言まとめ
帽子を追いかけながら、リアルに描かれたロンドン中の名所を巡ることができてしまう。
現実離れした衛兵たちの頑張り具合に、笑顔がこぼれる絵本です。
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