お元気様です!
登る保育士ホイクライマーです。
最近、保育所の給食を巡り、4時間以上食べさせ続けるなど、様々な事件や事案が取りざたされていますよね。
もちろん、それらは絶対に許されないことです。
ですが、イヤイヤ期、好き嫌いなど、子どもの食事が大変なのも事実です。
イラっとしてしまうこともあります。
そんな中で、保育所の食育って、なにを目指しているのでしょうか?
好き嫌いをなくす?完食できるようにする?
その最終的な目標を勘違いして、苦しんでいる先生や被害に合っている子どもがけっこういる気がしています。
そこで、今回の記事では、食育に関する法律などを元に、そもそも保育所での食育が「なにを目標としているのか?」という基本に立ち返り、保育所での食育の在り方について考えていきたいと思います。
保育士の方はもちろん、家庭でも基本的な考え方は変わらないので、保護者の方にも参考になると思います。
では、いってみましょう!
保育所における食育の目標
そもそも、保育所での食育の目標ってなんなのでしょう?
それは一言で言うと、
「楽しく食べること」
です。
「保育所保育指針」では「食べることを楽しみ、食事を楽しみ合う子どもに成長していくこと」
「楽しく食べる子どもに~保育所における食育に関する指針」では以下の5つ、
- お腹がすくリズムのもてる子ども
- 食べたいもの、好きなものが増える子ども
- 一緒に食べたい人がいる子ども
- 食事づくり、準備にかかわる子ども
- 食べものを話題にする子ども
が目標として示されています。
そのどれもが、「食べることが楽しい・幸せ」だと思うことへと繋がっています。
つまり、「好き嫌いをなくす」ではなく「好きなものを増やす」、
「全部食べる」ではなく「自分が気持ちよく食べられる適量がわかる」、
というのが、本来目指すべき子どもの姿になってきます。
栄養を摂ることは大切です。
できれば、色んなものを食べてもらえるようになって欲しいと思うでしょう。
ですが、その気持ちが強くなり過ぎて、食事を嫌な時間にしてしまっては本末転倒。
前提として「楽しい」という気持ちがある中で、食べられるものや量が増えていくことが最も大事なのだと思います。
そう考えると、きっと言葉のかけ方も変わってくるのではないでしょうか?
保育所全体や保護者と協力するのが必須
ただ、保育所内でも世間でも、「好き嫌いしない」「残さず食べる」ことを目標にするのが当たり前という、固定観念があるのも事実です。
完食させないと、保育士として力不足だと思ってしまったり、そう見られてしまう環境もまだまだ多いことでしょう。
そうなると、焦りやプレッシャーから、必要以上に頑張ってしまったり、子どもに頑張らせてしまいがちです。
そこで重要なのが、保育所全体や保護者と食育の考え方を共有し、協力して進めていくことです。
「食には個人差があること」、「完食を目指すのではなく無理なく食べられる量を食べること」を前提としていること。
そこから「楽しく食べる中で食事量が増え、その結果として完食してくれたらいいな」くらいの感じで、ゆっくりと進めていくこと。
この共通認識をみんなで持ち協力していくと、かなりやりやすくなるでしょう。
保護者に関しては色々な価値観もあり、一筋縄ではいかない家庭もあったります。
なので、少なくとも保育所内では共有し、そこから各家庭にも広げていくのがスムーズだと思います。
「楽しく」だけじゃ難しいこともある
とはいえ「楽しく」だけでは、どうしようもないこともあります。
特に乳児や3歳児など、年齢が低い子は「楽しく」だけでは、食事量や食べるものが偏りがちになってしまうのも事実です。
特に食わず嫌いなどは、一度口に入れ、味がわかってしまえば食べるものだって結構あります。
「楽しく」食べるために、嫌がるから食べさせようとしないというのも違う気がします。
それに、結構頑張って食べた結果、完食したことが自信になり、食への意欲へ繋がることもあったります。
もちろん、「楽しく」気を紛らわせたりしながら、色々なものを食べられればそれに越したことはありませんが、それは中々の理想論。
食事の時間はそんなにあまいものでもありません。
その押し引きはかなり繊細です。
そんな時に、基準にして欲しいのが「食事を嫌いにならないこと」。
「これ以上食べさせようとしたら、苦手な食材だけじゃなく、食事そのものが嫌いになってしまわないか?」
「食後まで嫌な気持ちが残ってしまわないか?」
これらを考えて、引き際や落としどころを見つけるのが大切です。
「この一口で最後にしよう」
「いっぱい食べたからおしまいにしようか」
など、しっかりと区切りをつけて終わりにすれば、子どもも満足感を持って食べ終わることができると思います。
食事介助が辛くなった時の対処法
けれど、引き際が見えなくなることって、結構ありませんか?
特に偏食や食への意欲が薄い子の食事介助をしていると起こりがち。
食べさせようとする→イヤイヤor遊び食べされる→イラっとする→さらに食べさせようとする→イヤイヤされる→意地になってくる・・・。
こうなってくると、なんとかして食べさせてやろうと引き際が見えなくなりがちです。
ぼくも、よくこの状態になっていました。
では、そんな時どうしたらいいのか?
有効なのは「一度離れる」こと。
限界が見えてきたら、他の先生に代わってもらいましょう。
そうすることで、自分も子どもも気持ちの切り替えができます。
案外、それだけで子どもが食べ始めたりもします。
煮詰まった状態が、お互いに一番危険だし、ストレスもかかります。
乳児クラスは落ち着いた環境で食べるために、保育者がそれぞれ担当のテーブルについて食事を介助することが多いと思います。
ですが、その形に固執してしまうと、保育者の逃げ場がなくなってしまうという欠点もあります。
煮詰まってきたときに、「代わってください」「代わろうか」と当たり前に言い合える柔軟性も備えておきたいところですね。
「これって食育?」具体例
残した時に、調理室へ謝りに行く
これは、食育としてはあまりよくないですが、心の教育としては必要な場面もあると思います。
食べようとして食べきれなかった時「残しちゃってごめんなさい」と謝りに行く必要はありません。
むしろ、食が細いことが悪いことだという固定観念や、罪悪感を与えてしまうことになりかねません。
「美味しかったけど、食べきれなかった」と伝え、調理さんと給食の感想を話し合うなどのやり方であれば、食育としての効果はあるかもしれません。
ですが、子どもに「残した」と意識させる行為であることには変わりないので、そこは注意と自覚が必要です。
反対に、遊び食べなどで残したり、ふざけていてこぼしたりした場合には、調理さんに謝りに行くことも必要でしょう。
作ってくれた人の思いに触れることで、料理に対して意識が変わったり、無駄にすることで悲しむ人がいることに気付くかもしれません。
このように、なにを目的としているかにより、いい影響も悪い影響もある行為だということは意識しておきましょう。
「苦手なものも一口食べてみよう」の一口がスプーン1杯
苦手なものを一口食べて、味を確かめるのは大切です。
特に年齢が低いほど、色々な味を確かめることで、味への適応力が上がり、食べられるものも増えていきます。
ただ、その一口がスプーン1杯分だったりする時があります。
乳児用スプーン一杯分って、大人にしてみたらカレースプーン1杯分くらいの量。
その量を口に入れられて、苦手な味だったら食べられますか?
ぼくは椎茸が吐き気を起こすほど苦手なのですが、スプーン一杯入れられたら吐く自信があります。
少量なら味を確かめ、食べられるか考えられたかもしれないのに、大量に入れられ嫌いになることもあるでしょう。
「一口食べてみよう」の一口は、スプーンの先に少し乗るくらいで十分です。
食べられたら十分に認めてあげ、もう一口食べるか聞いてみて、食べないようなら「一口食べたもんね!」と気持ちよく終わらせてあげましょう。
励まし続けて完食させる
励まし続けることで、やる気を出して完食できる子は多いです。
もちろん、0~3歳中盤くらいまでは、集中力や体力の関係もあり、必要な場面も多いかもしれません。
ただ、自分で食べる力がある子に声をかけ続け、声掛けがないと食べられなくしてしまう。
年中・年長クラスになっても、同じように声掛けを続けてしまう。
こうなってくると、話は変わってくるでしょう。
最初に述べた通り、目標は「完食」ではありません。
特に年中・年長クラスであれば、自分で食べられるように「自立」していく必要があります。
自分の適切な食事量がわからないと、小学校で給食当番に、なにをどれくらいよそってもらうかの判断もできないでしょう。
絶対食べられないものは、残す判断も必要になってきます。
これらは自分で考え、食べていく中でしか身に着きません。
子どもの成長に合わせて、少しずつフェードアウトしていくことが大切です。
子離れしていきましょう。
もちろん、楽しく食べるための雑談はOKです。
まとめ
いかがだったでしょうか?
昔は「残さず食べる」が絶対のような時代もありました。
ですが、発達や教育の研究が進む中で、食育の在り方は大きく変わってきています。
特に乳幼児においては、「食べること」への根源的なイメージが形作られていく時期です。
ここで、「食べること」がポジティブなことなのか、ネガティブなことなのかで、その後の人生は大きく変わっていくでしょう。
だからこそ、「食べること」が「楽しいこと」だと、思えることが大切なのです。
ある程度の好き嫌いは、大人になる中でけっこう解消されたりします。
食事マナーも、人目を気にする年齢になったら、自分で直すこともあるでしょう。
毎日、目の前の食事に精一杯になりがちですが、少しくらい食べなくても死にません。
煮詰まってきたら、一度視線を上げ、長い目で見てみてください。
それと、他の人にバトンタッチしてみてください。
家庭であれば、他の子育て家庭と交流し、食事の時だけ交代してみるのがおススメです。
自分の子じゃないと、けっこう気楽に食べさせられたり、気付きがあったりして、食事を前向きに捉えなおせることもあったりします。
ぜひ、負のスパイラルに突入してしまう前に気持ちを切り替え、「楽しく食べる」へ戻ってこれるような方法を考えてみてください。
最後まで見ていただき、ありがとうございました!
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