作:谷川俊太郎 絵:和田誠 出版:サンリード
一匹の、のみの紹介から始まるこの絵本。
そこから連想ゲームのように、関係のある人が紹介されていきます。
その広がりと、ひたすら増える紹介文がおもしろい絵本です。
あらすじ
一匹の小さなのみのぴこが跳ねています。
ぴこが跳ねているのは、ネコのごえもんの背中でした。
ネコのごえもんのしっぽを踏んでしまった男の子はあきらくん。
テーブルで漫画を読んでいるのは、あきらくんのお母さんです。
あきらくんのお母さんが、買い物に来たのはよくお団子を買うお団子屋さん。
眼鏡をかけた笑顔の男の人は、お団子屋さんにお金を貸した銀行員です。
銀行員の前にいる太っちょの人は、一緒に卓球をするお相撲さん。
お相撲さんが見ているテレビに映っているのは、お相撲さんが憧れている歌手。
お相撲さんの憧れている歌手のオウムを・・・。
まだまだ紹介は終わりません。
『これはのみのぴこ』の素敵なところ
- ひたすら長くなっていく紹介文
- 広がり過ぎて予想不能の関係者
- まさかの最後の登場人物
ひたすら長くなっていく紹介文
この絵本のなによりおもしろいところは、紹介文がひたすら繋がっていくところです。
1ページに1人紹介されていくのですが、その紹介文が全て接続されていくのです。
これはのみのぴこの
住んでいるネコのごえもんの
しっぽをふんずけたあきらくんの
まんが読んでるお母さんが
お団子を買うお団子やさんに・・・
というように、登場人物が出てくるたび増えていく紹介文。
これには、子どもたちも笑うしかありません。
「なっが!」
「どこまで続くの!?」
「ちょっと長すぎない!?」
と、驚きつつ笑いつつ、どこまで長くなるかチャレンジのような雰囲気に。
この長い長い一文を見るのも、読むのも楽しすぎるのが、この絵本のとてもおもしろく素敵なところです。
広がり過ぎて予想不能の関係者
また、紹介される人物の脈絡なさも楽しいところ。
4人目くらいから、ぴこと関係なくなっていき、6人目くらいからあきらくんとも関係なくなっていき・・・。
出てくる人の関係性が遠すぎて予想がまったくつきません。
ただ、この誰が出てくるかわからない感じも、この絵本の醍醐味です。
「この人誰!?」
「銀行員なんて知らないよ~」
など、出てくるたびに関係性が気になってしょうがありません。
「お相撲さんと仲良しなんだ!?」
「お相撲さん、歌手になりたいのかな?」
と、予想外だからこその想像も広がっている様でした。
まさかの最後の登場人物
さて、そんな長い長い紹介の最後の登場人物は、なんとも不思議でおもしろいものでした。
一周回っているようでそうでもなく、ちょっとずらされている最後の1人。
完全に一周回っていたら、
「戻ってきた!」
と、スッキリ終わるのですが、そんなこともありません。
だからこそ、なんだか不思議な気分になります。
また、一周回っていないからこそ、さらに紹介文を続ける遊びに繋がりやすいのも素敵なところ。
最後の一文から、さらに次の一周を自分でも考えてみたくなるのです。
一周回らないからこその、さらなる遊びの広がりもこの絵本の素敵なところです。
二言まとめ
予想もつかない登場人物と、ひたすら繋がっていく文章がおもしろい。
聞いている人も、読んでいる人も、読み終わった後の達成感が凄い言葉遊び絵本です。
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