作:アナ・レナス 訳:おおともたけし 出版:永岡書店
今の気持ちを、色で表すと何色でしょう?
普段は混ざり合っている、色んな気持ち。
それを色ごとに分け、気持ちを整理していく絵本です。
あらすじ
あるところに、その時の気持ちで体の色が変わる、カラーモンスターがいました。
今日の気分はとても複雑で、体の色はいろんな色が混ざってごちゃごちゃ。
しかも、自分がなぜ複雑な気持ちなのかわかっていません。
そこへ女の子がやってきました。
女の子は、ごちゃんごちゃの気持ちを整理する手伝いをしてくれると言います。
その方法は、入れ物へ気持ちをわけていくというものでした。
まずは、黄色の嬉しい気持ち。
笑ったり、遊んだり、他の人とも一緒に感じたい気持ち。
次は青の悲しい気持ち。
泣きたくなったり、一人になりたくなったりする。
次の赤は怒りの気持ち。
怒ったり、叫んだりしてしまう。
でも、優しくされると消えていく気持ち。
さらに、黒は不安で怖い気持ち。
自分がちっぽけで何もできないと感じる気持ち。
最後は緑の穏やかな気持ち。
ゆっくり深く息をして、心が落ち着き安らぐ気持ち。
それぞれの気持ちをわけて入れ物に入れると、気持ちがすっきりしてわかりやすい。
と、その時、女の子は大切な気持ちを忘れていることに気付いた。
その気持ちとは・・・?
『カラーモンスター』の素敵なところ
- 色に例えたわかりやすい気持ちの整理の仕方
- 気持ちごとの雰囲気がイメージできる説明の言葉
- マイナスの気持ちへの向き合い方や関わり方
色に例えたわかりやすい気持ちの整理の仕方
この絵本のなにより素敵なところは、「見えない気持ち」を見えるようにしているところです。
普段は目に見えず、心の中に渦巻いている色々な気持ち。
見えないからこそ、その気持ちに吞まれたり、振り回されたりしがちです。
そんな気持ちを、この絵本では色に例えて、目に見えるようにしてくれているのです。
目に見えれば、子どもでも自分の気持ちを見つめることができます。
すると、今の気持ちを表現したり、自分の中の気持ちに気付いたり、気持ちと向き合うことができるようになってきます。
これは自分の気持ちをコントロールする時の入り口です。
この絵本は、自分の中には色々な気持ちがあるということに、気付くきっかけをくれるのです。
気持ちごとの雰囲気がイメージできる説明の言葉
また、その気持ちごとの説明もとてもわかりやすく、子どもがイメージしやすい言葉で説明されているのも素敵なところです。
例えば、黄色の気持ちなら、
「これは嬉しい気持ち。お星さまやお日さまのように輝いているわ。笑ったり、ジャンプしたり、ダンスしたり、遊んだり。それは他の人とも一緒に感じたい気持ち。」
というように、わかりやすい言葉で描かれています。
その中で色のイメージが伝わるよう、星やお日さまなど、親しみのあるものに例えたり、
その気持ちを感じる時の「笑ったり、ジャンプしたり・・・」といった、シチュエーションを描くことで、「あの時感じている気持ちか」と、その気持ちを感じた時の情景が浮かぶようにしたりと、
色をイメージしたり、自分の中にあるその気持ちを感じた時のことを思い出せるようになっているのです。
そのため、色と気持ちがしっかりと繋がるようになるのでしょう。
子どもたちも見ながら、
「この前転んだ時、青い気持ちだった」
「今日、公園言ったから黄色い気持ち」
「ケンカした時、赤い気持ちだったよ」
と、実体験と気持ちと色を繋げてしゃべっていたのが印象的です。
この自分事としてイメージできるところが、この絵本の本当に素敵なところだと思います。
マイナスの気持ちへの向き合い方や関わり方
さらに、気持ちの説明とわけることだけで終わらないのも、この絵本の素敵なところなんです。
悲しみや、怒り、不安などのマイナスな気持ちには、女の子の言葉を通して、自分がその気持ちになった時の向き合い方や、誰かがその気持ちになっている時の関わり方も添えられているのです。
悲しい気持ちなら「そんな時は泣いていいのよ」
怒りの気持ちなら「でも、私はあなたに優しくするわ。そうすれば、あなたの怒りはきっと消えてゆくと思うの」
というように、女の子が寄り添って言葉をかけてくれます。
この言葉があることで、その気持ちを否定するのではなく、受け入れたり、受け止めたりすることや、それをしてあげることの大切さが伝わってきます。
実際にそうしてコントロールしていく経験が、自分の気持ちと向き合うことへ繋がっていくのでしょう。
女の子の言葉が、どんな気持ちも大切なものだと感じさせてくれるのも、とても素敵なところです。
二言まとめ
気持ちを色に例えることで、子どもにも気持ちを見えるようにしてくれる。
見えるようにすることで、自分の気持ちと向き合うきっかけをくれる絵本です。
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