せかいでいちばんのばしょ(4歳~)

絵本

作:ペトル・ホラチェック 訳:いわじょうよしひと 出版:BL出版

自分の住んでいるところは世界で一番の場所?

そんな疑問を持ったウサギが、世界で一番の場所を探す旅に出ます。

ウサギがたどり着いた場所とは・・・?

あらすじ

ノウサギが、自分たちの住む野原を見下ろしながら、友だちのアナウサギたちに聞いた。

「ぼくらのはらっぱは、世界で一番の場所かな?」

アナウサギたちは、おいかけっこをするのにもってこいだから、一番の場所だと言った。

それを聞いたノウサギは「おいかけっこならどこでもできる」と思った。

ノウサギは、野原に住む他の友だちにもたずねた。

クマは、ミツバチがいて、はちみつが取れ、それを友だちとわけあえるから一番だと言った。

ノウサギは「ミツバチならどこにでもいる」と思った。

小鳥たちは、木の上で歌を歌うのが好きだから、木がいっぱいあるはらっぱは一番の場所だと言った。

ノウサギは「木ならどこにでもある」と思った。

カモは、川で泳ぐのが好きだから一番の場所だと言った。

ノウサギは「川ならどこにでもある」と思った。

答えを探し続けたウサギは、ミミズクにも聞いてみた。

すると、ミミズクは「答えを知りたかったら、自分で世界中を旅して確かめてみたら?」と言った。

それを聞いたノウサギは、あくる朝、はらっぱを後にして旅に出た。

するとすぐに、広々とした野原を見つけた。

野原を見てノウサギは「アナウサギたちがかけっこをするのにもってこいの場所だ」思った。

しばらくいくと、滝と川があった。

ノウサギは「カモはきっとここで泳ぎたいと思うだろうな」と思った。

さらにいくと・・・。

ノウサギは世界で一番の場所を見つけられるのでしょうか?

『せかいでいちばんのばしょ』の素敵なところ

  • 答えのない疑問に自分なりの答えを出す物語
  • 自分の目で確かめに行くノウサギ
  • 「一番」に大切なもの

答えのない疑問に自分なりの答えを出す物語

この絵本の素敵なところは、答えのない疑問を考え続けるところです。

「自分の住んでいる原っぱが世界で一番の場所か?」

そこには絶対的な答えはありません。

自分がそう思うかどうかです。

その中で、「なんで世界で一番の場所だと思うのか?」という理由まで深く考えていくのがこの絵本。

他の動物に聞いても、その答えに納得できません。

そこで、まあいいかとならず、さらに答えを探し求めていくのが素敵なところ。

考え、探し続ける中で、自分が納得できる答えを自分なりに見つけるのです。

それは、他の動物たちの誰とも違う、自分だけの答えです。

絶対の答えではないけれど、自分が納得できる答えです。

ぼくらの日常でも、ふと答えのない疑問が湧くことはあると思います。

でも、深く考えずに終わってしまうことが多いのではないでしょうか?

きっと、子どもも同じでしょう。

そんな疑問への答えの出し方を、伝えてくれている物語なのかもしれません。

自分の目で確かめに行くノウサギ

この疑問への答えの出し方でとても大切な部分が、世界で一番の場所を、自分の目で確かめにいっていることです。

他の動物の意見を聞いて納得しているわけではありません。

自分で見て、考え、その上で辿り着いたところなのです。

誰かに納得させられるのではなく、自分で納得すること。

これがきっと「わかった」と思うことなのでしょう。

「わからないことがあれば、自分で答えを探しに行く」という大切なことが、ノウサギの姿から伝わってくるのです。

この旅をしながら考えるノウサギの姿があるからこそ、ノウサギの出した「世界一の場所の理由」にとても納得できるのだと思います。

「一番」に大切なもの

さて、ノウサギの出した「世界で一番の場所の理由」。

それは、最初の判断軸とはまったく違う判断軸での「世界一」でした。

最初は「かけっこができる」、「はちみつがある」、「川がある」など、物質的な判断軸で探しているノウサギ。

ですが、旅が進むにつれて、新たな判断軸へと考え方が変わっていきます。

きっと、動物たちから話を聞いていた時、どれも物質的な判断軸だったから納得感がなかったのでしょう。

自分の目で確かめながら、深く考えていくことによって、新たな判断軸を見つけ、納得のいく答えを出すことができたのです。

そして、この絵本がとても素敵なところも、この判断軸の変化を伝えてくれるところなんです。

始めは、

「もっと高い木があったらいいんじゃない?」

「こんな川なら、確かにカモも喜びそうだね」

と、物質的な判断軸で探していた子が、読み終わった時には、自分の世界で一番の場所を、新たな判断軸での理由付きで話していました。

もちろん、理論的なことは子どもたちにはわかりません。

ですが、物質的な判断軸とは違うものを感じてはいるのだと思います。

そして、感じることが、より子どもたちの考えを深める栄養になっていきます。

この絵本は、ノウサギが考え、探す姿を通して、哲学のように深く考え、自分なりに答えを見つける方法を伝えてくれるのです。

二言まとめ

答えのない疑問に、真正面から向き合い、その答えを探し、考え続けていく。

ノウサギの姿を通して、答えのない疑問に答えを出す方法を伝えてくれる絵本です。

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