作:みやざきひろかず 出版:偕成社
自分の考えた理想の世界。
そんな世界を自由画帳や地面に描いたことのある人も多いのではないでしょうか。
そんな世界が実現したら、もしくはその中に入れたら。
何を感じ、何を考えるのでしょう。
あらすじ
ぼくは庭師をしている。
庭を作るのは絵を描くのに似ている。
ずっと通っている庭もある。
お父さんの植えた花などが、絵描きが絵に入れるサインのように、父さんのしるしとして見つかることもある。
庭師だった父さんが亡くなってずいぶん経つが、父さんのような庭は作れていない気がする。
ある晩、父さんが残した庭の本を読んでいたら「ほんのにわ」という不思議な庭を見つけた。
その中には見たこともない草や花がたくさんあった。
本の隙間から一枚の写真が落ちた。
そこには「ほんのにわ」の中にいる父さんが映っていた。
「ほんのにわ」は本当にあったのだ。
それ以来、ずっと「ほんのにわ」のことを考えていた。
そんなある日、その本を持ったまま昼寝をしてしまった。
すると急に雨が降って来て本がびしょぬれに。
しかし、それから何日か経ったある日、本から花が生えていた。
中を見てみると、「ほんのにわ」にある植物が育っていた。
そして、ぼくは絵本の中に落ちていった。
「ほんのにわ」は本の中にあったのだ。
ここは一体どんなところなのでしょう。
「ほんのにわ」の秘密とは。
『ほんのにわ』の素敵なところ
- 庭師の仕事の素敵さが溢れ出ている
- 優しい雰囲気の絵と温かい色使い
- とても優しい秘密と、さりげない仕掛け
この絵本を読んで一番に感じることは、庭師って素敵な仕事だなということです。
この仕事に真剣に向き合ったいる主人公の姿。
亡くなってずいぶん経つ父が、残したしるしが毎年見つかる歴史。
絵を描くように庭を作るという素敵な表現。
などから、本当に魅力的な仕事だなということが伝わってきます。
その仕事ぶりにさらなる輝きを与えているのが、この絵と色使いです。
主人公の優しそうな風貌だけでなく、作った庭に咲く草花、「ほんのにわ」の世界、全てが優しい雰囲気に包まれているのです。
その雰囲気が絵を描くように庭を作ると言う表現とぴったり合っていて、より魅力的にしているのです。
そして物語の終わりに明かされる「ほんのにわ」の秘密。
これが本当に素敵なのです。そして、それを本として持っていたお父さんもまた素敵。
最後のページには粋な仕掛けもあり、それによって子どもたちは「ほんとに行ったんだ!」とワクワクが改めて溢れだし、目をキラキラさせながら最後のページを見ていました。
優しく、温かく、なんだかほっとする絵本。
仕事っていいなと思える絵本です。
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