作:山本孝 出版:ほるぷ出版
いつも遊んでいる公園に隕石が落ちてくる!?
それを止められるのは我々しかいない!
というごっこ遊びを壮大に描いた絵本です。
あらすじ
ある公園を本部に置く小学生の五人組。
その名も放課後スペシャル探検隊。
探検隊は、地球に迫りくる巨大隕石バナスを破壊するため宇宙に上がるところだった。
ロケットに乗り込み出発する。
宇宙に着いたら、イダリー・ベースに移るため、イテンウ・ブリッジを渡っていく。
そして、イダリー・ベースからそれぞれのマシンに乗って出動。
すると、目の前に巨大隕石バナスが現れた。
5人はバナスに降り立ち、任務を開始する。
バナスの中心部まで穴を掘り、隕石破壊装置ルーボをセットしなければならないのだ。
穴を掘り続け、みんなの気持ちが一つになったその時。
「あのお兄ちゃんたち、、あた変な遊びしてるよ」
という声。
下校途中の女の子たちだった。
いや、任務の邪魔をしに時々現れるドッチラケ星人だった。
なにはともあれルーボをセットし作動。
バナスの崩壊が始まった。
崩れる足場を伝って逃れる探検隊。
果たしてバナスから無事脱出できるのでしょうか?
『アブナイこうえん』の素敵なところ
- ごっこ遊びの脳内が壮大に描かれる
- 遊具を逆さ読みしたかっこいい名前
- 我に戻される瞬間
ごっこ遊びの脳内が壮大に描かれる
この絵本のなによりおもしろいところは、ごっこ遊びをしている時の子どもの脳内が、描き出されていることです。
ロケットに乗り込む時には宇宙服を着ているし、宇宙にだって行ってしまいます。
公園の遊具はどれも、ハイテクメカに大変身。
爆発もするし、隕石だって落ちてきます。
それらが、本当に起こっているかのように描かれるこの絵本。
空想の世界が本当かと思えるくらいの臨場感で、描き出されます。
でも、子どものごっこ遊びは、本当にこれくらいの没入感なのであなどれないところ。
また、よく見ると、ちゃんと公園の遊具になっているのもおもしろく、どれがどの遊具かわかります。
現実を忘れるほどの没入感ですが、しっかり現実の公園とリンクしているのです。
読み終わった後に、公園の全体図を見ながら、空想と本物を見比べるのもこの絵本の楽しみの一つです。
遊具を逆さ読みしたかっこいい名前
加えて、見た目だけはなく物語に出てくる固有名詞が、遊具の逆さ読みなのに、物凄くSF感がありかっこいいのもこの絵本のすごいところ。
ルグンジャーロケット→ジャングルジム
イダリー・ベース→すべり台
イテンウ・ブリッジ→うんてい
巨大隕石バナス→砂場
というように、ほぼ逆さ読みにしただけなのに、こんなにもしっくりきてしまいます。
特にイダリー・ベースは伸ばし棒をつけただけで、すべり台が宇宙ベースになってしまうのだから驚きです。
子どもたちも最初は気が付かないのですが、バナスやルーボなど、短いものから気付くと、他のものも調べ始めます。
そして、全部よく知っている遊具の名前になることに気付き、
「すごい!」
「確かにうんていの形だ!」
「そういうことか!」
と大興奮。
一つ解読するたびに大騒ぎなのでした。
このおしゃれな言葉遊びも、この絵本のとてもおもしろいところです。
我に戻される瞬間
さて、完全に世界に入り込んでいる探検隊と子どもたちですが、現実に戻される瞬間があります。
それが、通りがかりの女の子たちにさげすまれる時。
とても気まずく、意志の強い探検隊と言えど小学生に戻ってしまいます。
宇宙服は普通の服に、
マイクは定規に、
穴を掘っていたドリルは靴に、
レーダーは三角定規と分度器に・・・。
しかもこれが、ルーボを埋めるため、心が一つになった瞬間やってきます。
盛り上がりとの落差がすごい。
ごっこ遊びの楽しさと同時に、弱点もしっかりと描き出されているのです。
ですが、流石は探検隊。
すぐに女の子をドッチラケ星人として、自分の世界に戻ってきます。
このごっこ遊びならではの、現実に戻される瞬間とその対処法がが描かれているのも、ごっこ遊びを題材にした絵本ならではのおもしろさだと思います。
二言まとめ
ごっこ遊びの世界を、本当に起こっているような壮大さと臨場感で描き出す。
その中に、ところどころ入ってくる現実世界とのリンクがおもしろい絵本です。
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