おばけえんはすぐそこです(5歳~)

絵本

詩:山﨑るり子 絵:石黒亜矢子 出版:福音館書店

オバケたちが通うオバケ園。

そこではオバケらしい、個性豊かな出来事ばかり。

でも、なんだか人間の子どもみたい?

あらすじ

おばけえんの入り口は、すぐそこにある。

廊下の暗がり、トイレの隅っこ、きみたちのすぐ後ろ・・・。

始まりの会

おばけえんの先生は、二又尻尾の古ギツネ。

毎日化けてやってくる。

ある日はツヤツヤピーマンオバケ。

ある日はツンツン鉛筆オバケ。

そして今日は、ムチムチベロロンくちびるオバケ。

みなさんおばよう。

ベロベロベエ。

散歩の途中で

からかさオバケ一大事。

散歩の途中であなぼこに、下駄がはまって抜けません。

その時だ。

強い風がどっときて、からかさオバケが飛んでった。

けばおさからかー。

あれよあれよあれよ。

けばおさからか、空の彼方。

道端に下駄ひとつ。

おばけえんでは他にどんなことが起きているのでしょう?

『おばけえんはすぐそこです』の素敵なところ

  • 1オバケ1ページのオバケらしくて楽しい詩
  • 人間の子どもみたいなオバケたち
  • ゾクッとさせられる最初と最後

1オバケ1ページのオバケらしくて楽しい詩

この絵本のおもしろいところは、オバケの特徴がこれでもかと出ている詩にあるでしょう。

見開き1ページで、1オバケが紹介されていく詩。

三つ目小僧、化け猫、のっぺらぼう、ろくろっくび、からかさオバケ、河童、青鬼、雪女、天狗、やまんば、大入道。

全員の特徴を活かし、なおかつおちゃめな詩が綴られていきます。

お皿に水以外のものを入れると気分が変わる河童。

風で飛ばされるからかさオバケ。

首が長すぎて縄跳びが跳べないろくろっくび。

どれもそのオバケならではです。

詩に合わせたおちゃめな絵も相まって、詩を読むごとに、そのオバケを好きになってしまうことでしょう。

人間の子どもみたいなオバケたち

また、オバケらしさと一緒に、人間の子どもっぽさがあるのも、親近感を感じられるポイントです。

やっていることはとってもオバケなのですが、その気持ちはまるで子ども。

お腹が痛くて休んだり、

痛いのを我慢して涙ぐんだり、

落書きして先生に怒られたり・・・。

どれも、笑えたり共感できるものばかりです。

最初は怖がって警戒していた子も、オバケたちの子どもっぽい姿を見ると次第に笑顔。

心がほぐれてくるのがわかります。

「あーからかさオバケ飛んでっちゃう!」

「ぼくも転んだ時、泣くの我慢したよ!」

「明日はお腹治るといいね」

と、すっかりクラスメイトのようにオバケたちを扱う子どもたち。

そんな風に、オバケたちと友だちになれるのも、この絵本のとても素敵なところです。

ゾクッとさせられる最初と最後

さて、こんなに楽しい絵本ですが、オバケ絵本らしい怖さも忘れないのが素敵なところ。

おばけえんに行く前の始まりの詩と、おばけえんから出た後の終わりの詩が怪談話のように怖いのです。

真っ黒な背景、すぐそこにオバケの世界への扉がありそうな語り口。

あんなにも、明るく楽しかったおばけえんの1日が嘘のように、ゾクッとさせられ終わります。

オバケという存在の得体のしれない怖さと魅力。

その両方が一冊の中に詰め込まれているのです。

読み終わった時、

オバケの魅力に憑りつかれ「行ってみたいな」という子と、

最後の雰囲気に負け「やだ!やっぱり行きたくない!」という子、

それぞれにわかれるのが印象的。

オバケならではの色々な楽しさを感じさせてくれるのです。

二言まとめ

オバケそれぞれの、個性豊でおちゃめな詩がとっても楽しくておもしろい。

でも、楽しさだけじゃなく、オバケの怖さも忘れない、オバケならではの要素が思い切り詰った絵本です。

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