詩:山﨑るり子 絵:石黒亜矢子 出版:福音館書店
オバケたちが通うオバケ園。
そこではオバケらしい、個性豊かな出来事ばかり。
でも、なんだか人間の子どもみたい?
あらすじ
おばけえんの入り口は、すぐそこにある。
廊下の暗がり、トイレの隅っこ、きみたちのすぐ後ろ・・・。
始まりの会
おばけえんの先生は、二又尻尾の古ギツネ。
毎日化けてやってくる。
ある日はツヤツヤピーマンオバケ。
ある日はツンツン鉛筆オバケ。
そして今日は、ムチムチベロロンくちびるオバケ。
みなさんおばよう。
ベロベロベエ。
散歩の途中で
からかさオバケ一大事。
散歩の途中であなぼこに、下駄がはまって抜けません。
その時だ。
強い風がどっときて、からかさオバケが飛んでった。
けばおさからかー。
あれよあれよあれよ。
けばおさからか、空の彼方。
道端に下駄ひとつ。
おばけえんでは他にどんなことが起きているのでしょう?
『おばけえんはすぐそこです』の素敵なところ
- 1オバケ1ページのオバケらしくて楽しい詩
- 人間の子どもみたいなオバケたち
- ゾクッとさせられる最初と最後
1オバケ1ページのオバケらしくて楽しい詩
この絵本のおもしろいところは、オバケの特徴がこれでもかと出ている詩にあるでしょう。
見開き1ページで、1オバケが紹介されていく詩。
三つ目小僧、化け猫、のっぺらぼう、ろくろっくび、からかさオバケ、河童、青鬼、雪女、天狗、やまんば、大入道。
全員の特徴を活かし、なおかつおちゃめな詩が綴られていきます。
お皿に水以外のものを入れると気分が変わる河童。
風で飛ばされるからかさオバケ。
首が長すぎて縄跳びが跳べないろくろっくび。
どれもそのオバケならではです。
詩に合わせたおちゃめな絵も相まって、詩を読むごとに、そのオバケを好きになってしまうことでしょう。
人間の子どもみたいなオバケたち
また、オバケらしさと一緒に、人間の子どもっぽさがあるのも、親近感を感じられるポイントです。
やっていることはとってもオバケなのですが、その気持ちはまるで子ども。
お腹が痛くて休んだり、
痛いのを我慢して涙ぐんだり、
落書きして先生に怒られたり・・・。
どれも、笑えたり共感できるものばかりです。
最初は怖がって警戒していた子も、オバケたちの子どもっぽい姿を見ると次第に笑顔。
心がほぐれてくるのがわかります。
「あーからかさオバケ飛んでっちゃう!」
「ぼくも転んだ時、泣くの我慢したよ!」
「明日はお腹治るといいね」
と、すっかりクラスメイトのようにオバケたちを扱う子どもたち。
そんな風に、オバケたちと友だちになれるのも、この絵本のとても素敵なところです。
ゾクッとさせられる最初と最後
さて、こんなに楽しい絵本ですが、オバケ絵本らしい怖さも忘れないのが素敵なところ。
おばけえんに行く前の始まりの詩と、おばけえんから出た後の終わりの詩が怪談話のように怖いのです。
真っ黒な背景、すぐそこにオバケの世界への扉がありそうな語り口。
あんなにも、明るく楽しかったおばけえんの1日が嘘のように、ゾクッとさせられ終わります。
オバケという存在の得体のしれない怖さと魅力。
その両方が一冊の中に詰め込まれているのです。
読み終わった時、
オバケの魅力に憑りつかれ「行ってみたいな」という子と、
最後の雰囲気に負け「やだ!やっぱり行きたくない!」という子、
それぞれにわかれるのが印象的。
オバケならではの色々な楽しさを感じさせてくれるのです。
二言まとめ
オバケそれぞれの、個性豊でおちゃめな詩がとっても楽しくておもしろい。
でも、楽しさだけじゃなく、オバケの怖さも忘れない、オバケならではの要素が思い切り詰った絵本です。
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