だれかたすけて(4歳~)

絵本

文:角野栄子 絵:宇野亜喜良 出版:国土社

布団に入り、小さな電気を眺める女の子。

すると、その光が目となってクロヒョウに。

助けを求めたその時に、現れたのはなんとソファのカバでした。

あらすじ

ある日、女の子ヒロは、テレビを見ていました。

クロヒョウがシカを狙っている番組です。

でも、いいところでお母さんがやってきました。

お母さんはヒロの熱に気付き、テレビを消してベットに入れ、部屋の電気を小さな電気だけにしてしまいました。

ヒロは怒って天井をにらみつけました。

すると、小さな電気が二つになり、クロヒョウの目になりました。

テレビで見たクロヒョウです。

ヒロは自分を食べに来たのだと思い助けを求めました。

けれど、誰も来てくれません。

と、その時、「どれどれ」という声が。

見ると、その声はソファから。

なんと、ソファが膨れカバになったのです。

牙のある大きな口を開けたカバ。

そのままクロヒョウを食べてしまうかと思いきや、カバは大きなあくびをして眠ってしまいました。

ヒロがまた助けを呼ぶと、今度はピアノがシマウマになりました。

足には石のような蹄がついています。

その足で蹴飛ばしてくれると思いきや、シマウマは「ネコふんじゃった」を踊り始めてしまいました。

ヒロがまたまた助けを求めると、スリッパがハリネズミになりました。

針を飛ばしてクロヒョウを刺してくれるかと思いきや、お散歩中だと言って、どこかへ滑って行ってしまいました。

また助けを求めるヒロ。

一体、助けてくれる生き物は現れるのでしょうか?

ヒロとクロヒョウはどうなるのでしょう?

『だれかたすけて』の素敵なところ

  • 怖いけれど、どこかおちゃめで笑ってしまう物語
  • 変身前の家具に合わせた動物たち
  • 夢か現実かわからない不思議な体験

怖いけれど、どこかおちゃめで笑ってしまう物語

この絵本の魅力は、今にもクロヒョウに襲われそうになる緊迫感と、助けに来てくれた動物たちのおちゃめさのギャップです。

目の前まで来ているクロヒョウ。

必死で助けを求めるヒロ。

子どもたちも息を呑み、「食べられちゃうよ・・・」とドキドキ。

そこに現れる動物たち。

その動物たちは、どれも強そうな武器を持っています。

そして、戦ってくれるかと思いきや、あくびをして寝てしまったり、ネコふんじゃったを踊り始めたり・・・。

これには子どもたちも「ふふっ」と思わず笑ってしまいます。

緊張感のある状況で、ヒロは必死なのですが、動物たちはどれもどこかゆるい雰囲気。

このギャップがなんともおもしろく、ジェットコースターのような緩急があるのです。

緊張感とおちゃめさの落差が、この絵本のとてもおもしろいところです。

変身前の家具に合わせた動物たち

そんなおちゃめな動物たちですが、動きが元の家具とリンクしているのもおもしろいところ。

カバはソファのようにどてんと横たわり寝てしまうし、

シマウマは楽しい音楽を奏で躍り、

ハリネズミはスリッパなので、二匹仲良くスイ―っとどこかへ行ってしまいます。

こんな風に、どれも家具に由来した動きをしています。

特に最後の動物は「なるほど!」という動きをしていておもしろい。

もちろん、家具なので戦ったりもしないのです。

それに気付くと、自分の見の周りのものも動物に見えてくるから不思議なもの。

「青いベッドがクジラになるかも!」

「トイレがペリカンになるかも!」

など、なったら怖いや、なったら楽しい動物を想像している子どもたちでした。

この動物たちの家具らしさも、この絵本の素敵なところです。

夢か現実かわからない不思議な体験

さて、そんな不思議な物語ですが、色々な解釈の仕方ができるのも素敵なところ。

ベッドに入ってから、部屋の中で繰り広げられる逃走劇。

本当のことだったのかもしれないし、

眠った後の夢だったかもしれないし、

熱に浮かされてみた幻だったのかもしれません。

物語の結末もまた同じです。

「こうだったのかな?」

と、部屋の中の様子や、表情を見ながらそれぞれの物語を考えます。

色々な見方ができることで、想像力や子ども同士の話が膨らみます。

この想像や解釈の余白がある物語の描き方も、この絵本のとても素敵なところです。

二言まとめ

一人ぼっちでクロヒョウに追われる怖さと裏腹に、助けに来てくれたはずの動物たちのゆるさに笑ってしまう。

夢か現実かわからない、怖くておもしろくて不思議な物語です。

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