作:かがくいひろし 出版:講談社
雨が一滴も降らない暑い日照りの日々。
そこに現れた救世主たちは、なんとやかんやポットたち。
やかんたちは準備運動をすませると・・・。
あらすじ
何日も雨が降らず、大地が干上がっていた時のこと。
やかんが大急ぎで走ってきました。
やかんがたどり着いた先で待っていたのは、ポットに赤やかんにじょうろにきゅうす。
全員揃ったので、早速5人は始めることに。
まずは準備運動をして体をほぐします。
そして、準備運動が終わったらいよいよ本番。
みんなで大きく息を吸います。
大きく吸ったら息を止め、力を入れてためていきます。
しっかりとたまったら、今度はそれを鼻から出します。
すると、ぷしゅ~っと煙のようなものが出始めました。
でも、まだ足りません。
もっともっと出します。
やかんたちはみんな顔を真っ赤にして必死です。
さらにどんどん出していくと、みんなの煙が合わさって・・・。
一体、やかんたちは何をしているのでしょうか?
『もくもくやかん』の素敵なところ
- ついつい真似してしまうやかんの動き
- やかんたちならではの壮大な計画
- 健気に頑張る小さなきゅうす
ついつい真似してしまうやかんの動き
この絵本のなにより楽しいところは、やかんたちの真剣かつかわいい動きでしょう。
手足の短いやかんたちの準備体操や、全力で踏ん張る姿はかわいいとしか言いようがありません。
でも、楽しいのはかわいいところだけではありません。
「大きく息を吸ってー。」「す~う~」
「止めて。」「うっ」
のようにやかんたちは掛け声に合わせて動いていきます。
そして、その掛け声をを聞くと、やかんたちの全力の動きと相まって、つい一緒に真似したくなってしまうのです。
読んでいると、自然と一緒に大きく吸い込み、息を止める子どもたち。
やかんたちと一緒に力をためるその姿は、子どもたちからも「ぷしゅ~」っと煙が出てきそう。
このやかんたちとのかわいい一体感が、この絵本のとても素敵なところです。
やかんたちならではの壮大な計画
そんなやかんたちが、なぜこんなことをしているかというと、そこには壮大な計画がありました。
それはまさに世界を変えるくらいの壮大な計画です。
でも、そこにやかんらしさが加わると、なんだかとっても庶民的。
しかも、なんだか本当に出来てしまいそうな不思議なリアリティが生まれます。
この壮大なような、庶民的で親近感が湧くような不思議な感じも、この絵本の素敵なところ。
きっと、やかんから発想がスタートしたから、こんなにも親近感を感じる計画になったのかもしれません。
身近な生活道具と地続きだからこそ、この壮大な計画が、子どもたちにとても自然に感じられるのだと思います。
健気に頑張る小さなきゅうす
さて、そんな全力で壮大な計画に挑むやかんたちですが、その中に一人だけ、明らかに小さな者がいます。
それがきゅうす。
みんなが大きな体で煙を出していく中、煙が出せないでいるきゅうす。
それを見て子どもたちが、
「きゅうすだけ、煙出てないよ!」
「体が小さいから」
と心配の声を上げます。
けれど、きゅうすも頑張ります。
すると、一足遅れて、ついに小さな煙が。
「あ!煙出た!」
「頑張ったね!」
「でも、みんなの煙から遅れてる」
と子どもたちも喜んだり、次の心配をしたり。
小さな体で頑張るきゅうすに目が行ってしまうようでした。
子どもたちには、大人の中で頑張る子どもの姿に映っているのかもしれません。
この小さな体で自分なりに精一杯頑張るきゅうすも、この絵本のとても素敵なところです。
二言まとめ
かわいいやかんたちの楽しい動きと掛け声に、つい一緒に真似してしまう。
やかんたちの壮大過ぎる計画に、あっと驚かされる絵本です。
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