作:サトシン 絵:細川貂々 出版:集英社
犬が飼いたいけれど、ダメと言われた。
しょんぼり道を歩いていると、拾ったのはわらしべ。
さらに歩いていると、わらしべにアブが。
あれ?この展開って・・・。
あらすじ
イヌを飼いたい男の子。
でも、お父さんに家が狭いからダメだと言われた。
それでも諦めきれずに、イヌを飼いたいと思いながら歩いていると・・・。
石につまずき転んでしまった。
転んだ先はわらの山。
手にはいつの間にかわらしべを握りしめていた。
「なんだかこんな話聞いたことあるぞ」
と、思いながら歩いているとアブが飛んできた。
男の子はアブをわらしべの先に繋いでみた。
すると、それを見た別の男の子が、アブとカエルを取りかえてくれと言ってきた。
男の子はアブとカエルを取りかえた。
そのままカエルを連れて歩いていると、また別の男の子がカエルとカメを取りかえてくれと言ってきた。
男の子はカエルとカメを取りかえて確信した。
やっぱりあの話と同じだと。
こうして、カメがトカゲに、
トカゲがウサギに、
ウサギがネコに変わっていった。
そしてついに、ネコとイヌを交換する時がきた。
予想通りわらしべがイヌになり大喜びの男の子。
ですが、そこにイヌとウマを交換してほしいと言う男の子が・・・。
元々イヌが欲しかった男の子は、一体どうするのでしょうか?
『いぬがかいたかったのね』の素敵なところ
- 男の子がわらしべ長者を知っているおもしろさ
- 段々イヌに近づいていくワクワク感
- イヌが飼いたかったのに・・・。
男の子がわらしべ長者を知っているおもしろさ
この絵本のおもしろいところは、なんと言っても現代版わらしべ長者なとろころでしょう。
さらにおもしろいのが、主人公の男の子もわらしべ長者を知っているというところ。
わらしべを拾った時に、
「なんかこんな話聞いたことあるぞ」
アブとカエルを交換すると、
「ほーらね、聞いたことあるんだよ」
と、何の話とは言いませんが、わらしべ長者のことを思い起こしている様子が描かれます。
それを見た子どもたちも、
「あ~!あの話か!」
「どんどん交換していくんだよね!」
とわらしべ長者の流れだと気付きます。
こうして次々に交換していくことや、「きっとイヌがもらえるんじゃないか?」という期待感を前提に物語が進んでいくのです。
これが予想できるからのワクワク感と、わらしべ長者とはまた違った交換物、さらには予想を裏切る展開のおもしろさへと繋がて行くのが、この絵本のとても楽しく素敵なところです。
ぜひ、この絵本の前にわらしべ長者を読んでおきたいところでもあります。
段々イヌに近づいていくワクワク感
そんな交換のワクワク感をさらに高めてくれるのが、交換していくものの流れです。
目標がイヌなので、この絵本では生き物を交換していきます。
この流れが、着実にイヌに近づいているのを感じさせてくれるのです。
わらしべから、アブという生き物へ。
アブという虫から、カエルへ。
カエル→カメ→トカゲと、徐々に大きいものへ。
そして、トカゲから、ウサギという動物へ。
きわめつけは、ネコという、数々の物語でイヌの前に出てくる動物へ。
子どもたちも、
「だんだん大きくなってる!」
「ウサギになった!もうすぐイヌじゃない!?」
と、確実にイヌに近づいているのを感じている様子。
特にネコになった時には大盛り上がり。
「絶対、次イヌだよ!」
と、ほぼ確信の声を上げていました。
こんな風に、感覚的にイヌに近づいているのがわかるワクワク感も、この絵本のとても楽しいところです。
イヌが飼いたかったのに・・・。
さて、そんなイヌ版わらしべ長者ですが、昔話のように「めでたしめでたし」とはならないのがおもしろいところです。
わらしべ長者を知っているからこその、予想外の展開が待っています。
ついにイヌに辿り着いた男の子ですが、まさかの交換依頼が舞い込みます。
それはウマと交換してほしいと言うもの。
もちろん、これまでと違い男の子は渋ります。
だって、目的は達成されたのですから。
けれど、この相手が中々の大物。
言葉巧みに説得にかかります。
ウマのいい所をプレゼンされ、揺らぐ心。
子どもたちも、
「え!?交換しちゃうの!?」
「イヌが欲しかったんでしょ!」
と、まさかの展開にドキドキし始めます。
そしてついに・・・。
こうして、予想を裏切り、わらしべの流れが続くことになるのです。
こうなったら、もうどこまで行くのか男の子にも子どもたちにも予想がつきません。
ドキドキワクワクが入り混じった物語の始まりです。
この前半の予想通りの展開と、後半の予想外の展開の切り替わりとギャップが、なんとも楽しくおもしろいところです。
その結末も・・・。
二言まとめ
わらしべ長者の流れで、イヌへと近づいていく交換のワクワク感がとっても楽しい。
と思いきや、イヌをさらに交換する予想外の展開に、さらにワクワク感させられる絵本です。
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