作:石津ちひろ 絵:壁谷芙扶 出版:小学館
散歩の中の出来事で、しりとりってできるでしょうか?
かなちゃんと、なおきくんと、きよかちゃんの3人は、
しりとりで散歩ができてしまったようですよ。
あらすじ
かなちゃんの散歩
ある日、かなちゃんが散歩に出かけると目の前に、
ひろいうみ
が広がっていました。
かなちゃんは嬉しくなって、海の空気を吸い込みました。
先へと歩いていくと大きな、
みどりのき
を見つけました。
さっそく木に登ってみると、遠くに光るものを見つけました。
近づいて見ると、それは、
きいろいじてんしゃ
でした。
ちょっとだけ乗ってみると、爽やかな風が髪を揺らしました。
かなちゃんが、自転車でぐるりと回り戻ってくると、目の前に、
ヤギのひげ
が現れました。
ヤギに近づいて見ると、草のようないい匂いがしました。
またかなちゃんが歩いていくと、
げんきなおとこのこ
が追い越していきました。
かなちゃんと男の子は走り続けました。
その時、
ことりのこえ
が聞こえてきました。
2人も一緒に歌い始めていました。
やがて、誰かのかわいい笑い声が聞こえてきたので、声の方へ近づいていくと、そこには、
えがおのあかちゃん
がいたのです。
それは、かなちゃんの弟のけんちゃんでした。
けんちゃんを連れたママがかなちゃんを迎えに来たのでした。
おうちへの帰り道、かなちゃんはママに今日あった出来事を話しました。
ひろいうみ
をみて、
みどりのき
にのぼって、
きいろいじてんしゃ
にのって、
やぎのひげ
にさわって、
げんきなおとこのこ
とかけっこをして、
ことりのうたごえ
をきいて、
えがおのあかちゃん
にあったのだと。
次のしりとり散歩は、さっき会った元気な男の子なおきくんの散歩です。
一体どんなしりとり散歩になるのでしょう?
『しりとりさんぽ』の素敵なところ
- 出来事がしりとりで繋がっていくおもしろさ
- しりとりのように繋がっていく3人の物語
- 誰かに話す最後のまとめ
出来事がしりとりで繋がっていくおもしろさ
この絵本のなによりおもしろいところは、散歩での印象的な出来事が、しりとりになって繋がっているところです。
でも、しりとりだけでできているわけではありません。
「ある日、気持ちのいい風に誘われて、かなちゃんはお散歩に出かけました。どんどこ歩いていたら、目の前にひろいうみが広がっていました。」
というように、普通の文章の中に、要所要所しりとりの文が現れるのです。
なので、見ている分には、普通に絵本を読んでいる感覚で、しりとりがわからなくても楽しめたりします。
同時に、しりとりがわかる子には、たっぷりと考える時間にもなっているのがおもしろいところ。
どれがしりとりワードかは、色がついているのですぐにわかります。
すると「み・み・み・・・」と、「ひろいうみ」なら「み」のつく言葉を考えながら絵本を見始めます。
すると、とたんにすごく頭を使う絵本に早変わり。
物語を見ながら、しりとりの繋がりを考えるという複雑な絵本の見方が誕生していました。
でも、その分次のしりとりワードが出てきて、繋がった時がおもしろく「あー!みどりのきね!」と、覚えて考え続けていた分、スッキリ感もひとしおのようでした。
また、しりとりワード以外にも、好きなように文章を作っていいので、自分のしりとり散歩を作りやすいのも素敵なところ。
自分の散歩の中で、しりとりになりそうなものならなんでも使えるし、2語でもいいので、ものすごくしりとりが作りやすいのです。
しりとりのなる言葉を探すというよりは、しりとりになるように言葉を作っていく感覚かもしれません。
これが、なんともおもしろい。
新たな言葉の繋がりや、しりとりになる修飾語を発見するきっかけにもなるのです。
この自由過ぎるしりとりも、この絵本のとても素敵なところです。
しりとりのように繋がっていく3人の物語
そんなしりとりを抜きにしても、楽しめる普通の絵本に近い作りをしているこの絵本。
普通の絵本のように楽しめる分、しりとりワードごとの距離が遠いという部分があります。
4歳児などだと、前のしりとりワードを覚えていなくて、しりとりとしての繋がりを見失いがちだったりもするでしょう。
そこで、しりとりの繋がりやおもしろさを感じられる、ある仕掛けがされています。
それが、物語の最後にある「誰かに散歩のことを話す」というまとめです。
かなちゃんなら迎えに来たお母さんに話します。
ここでは余分な文章はなく、しりとりワードが順番に出てくるので、しりとりになっていることに気付けるのです。
子どもたちも、
「ほんとだ!繋がってる!」
「全部しりとりになってるよ!」
と改めてしりとりになっているおもしろさを実感している様でした。
この誰かに今日あったことを話すという温かいシチュエーションで、しりとりのおもしろさに改めて気づかせてくれるのも、この絵本の素敵なところです。
誰かに話す最後のまとめ
さて、この絵本には3つのしりとり散歩が描かれています。
それがかなちゃん、なおきくん、きよかちゃんの3人の散歩です。
この3つの散歩も、しりとりのように繋がりがあるのも、この絵本のとてもおもしろいところです。
かなちゃんの散歩には、追い越していく元気な男の子としてなおきくんが描かれます。
そして、かなちゃんの散歩が終わると、なおきくんの散歩の話へ移ります。
なおきくんの散歩の中には、きよかちゃんが出てきます。
きよかちゃんの散歩の中にはかなちゃんが・・・。
というように、グルグルと3人の中で物語が繋がっているのです。
さらには、物語だけじゃなく、名前もしりとりで繋がっていたり、おそらく季節も巡っています。
このように、3つの物語が少しずつ繋がっているのです。
完全に繋がっているわけではなく、少しずつ繋がっているのがしりとりのようなのは偶然ではないのでしょう。
そんな、しりとり以外の色々な繋がりが散りばめられていて、それに気付く楽しさも、この絵本のとてもおもしろく素敵なところです。
二言まとめ
散歩の出来事がしりとりで繋がっている、言葉遊びと物語、両方のおもしろさが溶け合った。
しりとり以外にもたくさんの繋がりが散りばめられた、群像劇言葉遊び絵本です。
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