作:さいとうしのぶ 出版:あすなろ書房
地面の穴、壁の穴、塀の穴・・・。
穴は色んなところに開いています。
そんな穴の中から飛び出してくるものは?
あらすじ
森の中でリスが見つけた地面の穴。
穴の中から・・・モグラが「ばあ!」。
家の中でネコが見つけた壁の穴。
穴の中から・・・ネズミが「ばあ!」でネコビックリ。
庭でお父さんが昼寝中。
塀に開いた穴の中から・・・ネコとイヌが「ばあ!」「ばあ!」っと飛び出した。
氷の上で釣りをする男の子。
氷に開いた、小・中・大の穴の中から・・・小・中・大のセイウチが親子が「ばあ!」「ばあ!」「ばあ!」
次の穴は・・・?
『あなのなかから・・・』の素敵なところ
- 穴の中から「ばあ!」と出てくるシンプルで楽しい繰り返し
- 期待を持たせてくれるいろんな穴
- 楽しすぎる驚いたリアクション
穴の中から「ばあ!」と出てくるシンプルで楽しい繰り返し
この絵本のなにより楽しいところは、穴の中から色々なものが飛び出してくることでしょう。
モグラにネズミ、イヌにネコ、さらには新幹線まで飛び出します。
そして、出てくる時の合言葉「ばあ!」。
「穴の中から・・・」という決まり文句から「ばあ!」と飛び出す楽しさは、まるで「いないいないばあ!」のようなシンプルな楽しさです。
子どもたちも、流れがわかってくると「ばあ!」と一緒に合わせるように。
同時に「わっ!びっくりした!」と驚く方を楽しむ子も。
そして、お互い顔を見合わせ「ふふふ」と笑顔。
「ばあ!」と驚かす側で見ても、驚かされる側で見てもとても楽しい作りになっているのです。
また、繰り返しの中で小さな変化があるのも楽しいところ。
「ばあ!」と出てくるものがどんどん増えていったり、「ばあーーー!」と飛び出し方が違ったり、楽しい変化が散りばめられていて、ページをめくるたびワクワクするのです。
期待を持たせてくれるいろんな穴
それと合わせて、ワクワク感をさらに高めてくれるのが、バリエーション豊富な穴。
地面に開いていたり、壁に開いていたり、穴と認識していないけどよく考えると穴なものだったり・・・。
色んなタイプの穴が出てきます。
さらに、穴の周囲の状況から、なにが出てくるのかなんとなく予想できたり、誰が驚くかわかったりと、穴の数が複数あって何匹出てくるか見当がついたりと、色々な予測がたてられるようになっています。
そして、色々な予想をしてからの、ページめくり・・・。
これがワクワクしないはずありません。
この「ばあ!」の前のワクワク感の高まりも、この絵本のとても素敵で楽しいところです。
楽しすぎる驚いたリアクション
最後に忘れてはいけないのが、「ばあ!」と出てきて驚かす相手。
「ばあ!」と出てきておもしろいのは、もちろん相手がいるからこそ。
この絵本ではその部分もぬかりありません。
リスでもネコでもお父さんでも、最大限のオーバーリアクションで応えてくれます。
ひっくり返りそうなほど後ずさるネズミ。
毛を逆立てて驚愕の表情を浮かべるネコ。
顔に乗せていた雑誌が吹っ飛ぶお父さん・・・。
などなど、「びくっ!!!」と驚いた様子がこれでもかと伝わってくるのです。
これが、「ばあ!」の楽しさと相まって大笑い。
「すごいビックリしてる!」
「ネコなのにネズミ怖いんだ!」
と、みんないたずらっ子の表情で大喜びしていました。
きっと、子どもが本能的に持っているんじゃないかと思える、「誰かを驚かせる喜び」をこの絵本から感じ取っているのでしょう。
思いきり驚かせて、思いきり驚いてもらえる。
それがこの絵本のとても素敵なところなのだと思います。
二言まとめ
穴の中から色々なものが飛び出して、それに驚くリアクションがとっても楽しい。
読めば、自分も「ばあ!」と誰かを驚かせたくなる絵本です。
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