作:川之上英子・川之上健 出版:生命保険協会
怒っていると、「怒らないの」とよく言われる。
気持ちを発散しているのに。
だから、この絵本で思う存分怒りましょう。
あらすじ
お父さんが、男の子の部屋へきて、なにかを怒っている。
お父さんに怒られた男の子は、お姉ちゃんになにか怒っている。
男の子に怒られたお姉ちゃんは、お母さんになにか怒っている。
お姉ちゃんに怒られたお母さんは、お父さんになにか怒っている。
怒られた方だって怒っている。
お母さんはアイロンをかけながら、お姉ちゃんは宿題をしながら、お父さんは昼寝をしながら、男の子は金魚にエサをやりながら・・・怒っている。
男の子は、みんながどれだけ怒っているかを、飼いネコに話して聞かせた。
到底、仲直りなんでできないことも。
無言の夕飯。
無言のお風呂。
でも、あることに気付いた・・・。
「そういえば・・・」。
『おこってるんだからね』の素敵なところ
- 男の子と一緒に全力で怒ることができる
- 怒っている時の険悪なムードがリアル
- 怒っている時あるあるな最後のオチ
男の子と一緒に全力で怒ることができる
この絵本のなにより素敵なところは、怒ることを止められないことでしょう。
普段はなだめられたり、否定的に見られがちな「怒り」。
「そんに怒らないの」と言われがち。
ですが、この絵本では家族みんなが怒っています。
当然、止める人なんていません。
みんな全力で怒っています。
謝ったりもしないし、謝るようにも言われません。
だからこそ、見ているこちらも、思う存分怒ることができます。
なにか嫌なことがあった時、男の子と一緒に思いきり怒り、文句を言ってもいいのです。
もちろん、なんにもない時に読んでも、怒っている姿や一触即発のハラハラ感を楽しんでもおもしろい絵本です。
そんな風に、「怒り」をありのまま描き出し、肯定も否定もせず、ただ怒らせてくれるのが、この絵本のとても素敵なところなのです。
怒っている時の険悪なムードがリアル
また、この「怒っている」がとてもリアリティのあるものになっているのも素敵なところ。
より「怒っている」にリアルさが増します。
特に怒っている時の、ピーンと張りつめたような空気感。
ただ無言なのとは違う、怒っているからあえて話さない無言。
いつもは聞こえない生活音が妙にはっきり聞こえるしーんとした空間。
夕飯などは、食器の触れ合う「カチャカチャ」という音が聞こえてきそうなほどリアルに描きだされているのです。
これがなんとも、「まだ怒っている」を実感させてくれます。
同時に怒っている時に感じる気まずさも。
ちょっと「もう怒るのやめようかな」「ご飯美味しく食べたいな」と思い始めるかもしれません。
この痛いほどに「怒っている」が伝わってくる、チクチクヒリヒリしたリアルさも、この絵本の素敵なところです。
怒っている時あるあるな最後のオチ
さて、みんなで怒り続けたこの家族。
最後の結末は、なんともすっきりとしたものでした。
激しく怒れば怒るほど、あるあるなこの結末。
「怒りって、心のガスを抜いてくれるんだなあ」と、改めて感じさせてくれます。
そして、最後のページの「もう怒ってない」光景。
みんな怒り続けて、満足したのでしょう。
なんともすっきりとした表情をしています。
仲直りするわけでも、謝るわけでもなく、全力で怒り続けているのに、ものすごくスッキリした気持ちで終わることができる。
そんな、「怒り続けるのも悪くないな」と思わせてくれる結末も、この絵本のとても素敵なところです。
二言まとめ
男の子と一緒に、止められることなく、全力で怒り続けることができる。
思いきり怒り続けたからこその、スッキリ感を味わえる絵本です。
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