おばけのしかえし(4歳~)

絵本

文:内田麟太郎 絵:山本孝 出版:岩崎書店

怖い怖いオバケたち。

でも、そんなオバケにも怖いものがありました。

それは、オバケ退治に雇われた、凄腕の剣豪でした。

あらすじ

真っ暗な夜中の墓場。

そこで、オバケの子どもたちが震えあがっていました。

だって、殿様にオバケ退治を頼まれた豪傑がやってきたのですから。

その強いことと言ったら、大入道も一ひねりの腕前です。

こんな時に限って、閻魔様は地獄へお出かけ中。

赤鬼も二の足を踏む中で、豪傑に勢いよく飛び掛かるものがありました。

化け猫でした。

でも、豪傑が木刀を一払いしただけで・・・。

化け猫は白目をむいてひっくり返ってしまいました。

さらには、倒れた化け猫のしっぽを踏んで行く豪傑。

それを見て、我慢できずに飛び出そうとしたのがろくろ首です。

それもそのはず、ろくろ首は化け猫の娘だったのですから。

ちなみにオバケの世界では、親と子で違うオバケなのはよくあること。

ダルマのお父さんは毒蜘蛛だったりします。

さて、飛び出すろくろ首を慌てて止めたのは一つ目小僧。

勝てないことはわかりきっていたので、閻魔様を待つよう説得しました。

そして、ついに閻魔様が地獄から戻って来た日。

豪傑にしてやられた話を聞いて、オバケたちの不甲斐なさにカンカンです。

赤鬼と青鬼に、豪傑退治を命じました。

後に引けない青鬼と赤鬼は、挟み撃ちで豪傑に襲い掛かります。

・・・が、あっという間に返り討ち。

馬のフンまで頭につけられてしまいました。

さらに怒った閻魔様は、次に毒蜘蛛へ豪傑退治の命令を下しました。

豪傑に糸を飛ばし襲い掛かる毒蜘蛛。

避ける豪傑。

ですが、毒蜘蛛も負けじと毒汁を吐き出します。

これにはさすがの豪傑も、よろり・・・。

ついに、毒蜘蛛が豪傑を討ち取るのでしょうか!?

『おばけのしかえし』の素敵なところ

  • 不気味で怖いけどすぐやられてしまうオバケ
  • ぎゃふんと言わせたくなる豪傑の意地悪さ
  • 豪傑に仕返ししたのは・・・

不気味で怖いけどすぐやられてしまうオバケ

この絵本のおもしろいところは、不気味なオバケたちがいとも簡単にやられてしまうところでしょう。

うす暗い墓場。

人間の倍近くある巨体。

おどろおどろしい見た目。

これだけ揃えば、普段なら人間が怖がる側ですが、この絵本では違います。

一瞬で、豪傑にバッタバッタとなぎ倒されていくのです。

すごい迫力で襲い掛かってくるのに、ページをめくる一瞬でなぎ倒されていく。

この流れが、迫力とあっけなさのギャップでおもしろい。

子どもたちも、

「豪傑つよっ!」

「あんなに怖かったのに・・・」

「すぐやられちゃうじゃーん!」

と驚いたり笑ったり。

絵本が始まった時に感じていたオバケの怖さは、どこかへ行ってしまったようでした。

ぎゃふんと言わせたくなる豪傑の意地悪さ

そんなオバケ退治をしてくれる豪傑。

本来ならば、人間の味方でヒーローみたいなもの。

当然、子どもたちも応援する・・・と思いきや、そうならないのもこの絵本のおもしろいところです。

この豪傑が、なんともはなもちならないやつなのです。

倒れている化け猫のしっぽをわざわざ踏んでいったり、

倒れた相手に馬の糞をつけていったりと、

強いだけならいいのですが、その強さをひけらかしたり、負けた相手をバカにしたような行動を取るのです。

段々と、弱い者いじめをしているように見えてきます。

きわめつけはその表情。

なんと腹立たしい表情をするのでしょう。

子バカにしたとはこのことかと思えるような、意地の悪い表情でオバケを退治していきます。

最初は豪傑の強さに応援していた子も、次第にオバケを応援するようになっていきます。

豪傑に襲い掛かるたび「今度こそやってくれ!」と心から思います。

豪傑に仕返ししたのは・・・

そんな中で来た、毒蜘蛛の千載一遇のチャンス。

胸が躍らないはずがありません。

毒蜘蛛が仕返しをしてくれるのか・・・と思いきや、そうはならないのもこの絵本のおもしろいところ。

むしろ、より豪傑が憎たらしく見えてきます。

ですが、オバケもこのままでは終わりません。

まさかのオバケが仕返しを成功させます。

これには子どもたちも、剣豪も、毒蜘蛛もびっくり。

まさか、このオバケにこんな力があったなんて。

大きなオバケが束になっても敵わなかった豪傑へ、意外なオバケが仕返しするという予想外でスカッとする結末も、この絵本のとても素敵なところです。

二言まとめ

不気味で恐ろしいオバケたちが、ころっとやられてしまう流れがおもしろい。

いつもは怖がるオバケたちを、応援したくなってしまう絵本です。

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