作:沢木耕太郎 絵:ミスミヨシコ 出版:講談社
誰もが心に秘めているいたずら心。
でも、普段は鍵をかけています。
その鍵を開け、思いきり解放できる絵本です。
あらすじ
ある家に一人の男の子がいました。
この男の子は、悪いことがしたくてたまりません。
そのことを家の人に言うと、悪いことってどんなことか聞かれます。
男の子はトイレットペーパーを転がしたり投げたりと、部屋をトイレットペーパーだらけにして見せました。
おもしろかったか聞かれると、男の子はもっと悪いことがしたいと言います。
どんなことか聞かれると・・・。
おもちゃを部屋中散らかして、そのおもちゃを壊して見せました。
おもしろかったか聞かれると、男の子はもっともっと悪いことがしたいと言いました。
どんなことか聞かれると・・・。
スパゲッティを手で掴み、あちこちに飛ばしながら食べて見せました。
おもしろかったか聞かれると、男の子はもっともっともっと悪いことがしたいと言います。
男の子の悪いことは、どこまで膨らんでいくのでしょうか?
『わるいことがしたい!』の素敵なところ
- やってみたいけど、やったら100%怒られる悪いこと
- 好奇心のままにやってみたい気持ちを解放してくれる
- 悪いことをした後は・・・
やってみたいけど、やったら100%怒られる悪いこと
この絵本のおもしろいところは、やれば怒られることを思いっきりしてくれるところです。
部屋中にトイレットペーパーを投げたり、転がしたり、巻きつけたり。
いつもは「大切にね」と言われるおもちゃを、思いっきり壊したり・・・。
年齢が大きくなるほど、自制がきいて出来なくなってくることを、この絵本では気兼ねなくやってみせてくれるのです。
これがなんとも気分爽快。
中途半端ではなく、これでもかとやってみせてくれます。
特に見開き1ページを使っての、部屋がぐちゃぐちゃになったり、スパゲッティが飛び散る様は圧巻。
その動きのダイナミックさと、やってやった感、やっちまった感がほとばしっているのです。
こんな風に、見るだけでその悪さが伝わってくるのが、この絵本のおもしろいところです。
でも、こんなに悪いことなのに、子どもたちからは「ダメだよ!」と言う声の中に「やってみたいな~」という声が。
いつもイタズラをしていたり、けんかをしがちな子は素直に惹かれるみたいです。
好奇心のままにやってみたい気持ちを解放してくれる
ただ、「いい子」にしている子も表情は嬉しそうなので、心の中では「やってみたい」「やったら楽しそう」という気持ちが感じられます。
きっと子どもならではの好奇心がそうさせるのでしょう。
乳児の頃には、おもちゃが壊れることなど気にせず投げたり、叩いたりしていたはず。
食べ物をこぼすのも気になんてしなかったはず・・・。
けれど、大きくなる中で、段々とそれはなくなっていきます。
ただ、心の中には好奇心という形で残っているのでしょう。
特に最近は、早い段階でその好奇心は、マナーや常識という形で抑えられがちでもあったりします。
そんな心に秘めた好奇心を、思いきり、誰にも迷惑をかけず解放できるのも、この絵本のとても素敵で大切なところだと思います。
悪いことをした後は・・・
さて、どんどん「もっともっと」と悪いことをしていくこの絵本。
ですが、悪いことをしたままでは終わらないことも、とても素敵なところです。
好奇心のままにやってしまう乳児の時と、物心ついてから悪いことをしようと思ってやる行動には、やはり違いがあります。
部屋がぐちゃぐちゃになって困ること、ものが壊れて困ること。
それがわかった上で悪いことをしているのです。
そこには一つの責任が生じます。
その責任を、しっかりと子ども自身に、子どもらしいやり方で取らせるのです。
同時に、悪いことも楽しいけれど、この責任を取る行動もそれはそれで楽しいことにも気付きます。
これは悪いことを思う存分やった後だからこそでしょう。
悪いことを我慢させるのではなく、思いきり発散させ、その上でしっかりと自分のしたことの責任も取らせる。
このメリハリも、この絵本のとても素敵で大好きなところです。
二言まとめ
いつもは我慢しているイタズラ心を、思いっきり発散できる。
でも、やった後にしなければいけないことも、同時に伝えてくれる絵本です。
コメント