リジ―と雲(4歳~)

絵本

作:テリー・ファン&エリック・ファン 訳:増子久美 出版:化学同人

雲売りから買った雲。

それはまるで、風船のようなペットのような不思議な雲。

雲との暮らしは、どんな日々になるのでしょう?

あらすじ

ある土曜日。

リジ―は、お父さんお母さんと公園へやってきました。

公園に着くと、リジ―はすぐに雲売りのところへ。

雲売りは、風船のように糸についてフワフワと浮かぶ雲を持っています。

その形は、ウサギやゾウ、魚など様々。

そんな色々な形の雲の中、リジ―が選んだのは、よくみかけるような普通の形の雲でした。

リジ―はその雲を家に持って帰り、自分の部屋で世話を始めました。

雲の世話には、たくさんの決まりごとがあります。

  1. 名前を付けること
  2. 毎日新鮮で綺麗な水をあげること。
  3. 水をあげすぎないこと
  4. いきなり雨を降らすことがあるので、雲の下にバケツを置いておくこと。
  5. 不満があると機嫌が悪くなり、雷を鳴らし大雨を降らすこと。
  6. 絶対に狭いところに閉じ込めないこと

リジ―は説明書を読むと、さっそく雲に名前を付けました。

雲の名前はミロです。

そして、毎日丁寧に水をかけました。

雲はお返し、リジ―の育てている花や植物に雨を降らせてくれました。

天気がよければ散歩にも連れていきます。

でも、雲のミロが一番好きなのは雨の日みたいでした。

季節は巡り、ミロはどんどん大きくなっていきました。

部屋の天井を覆い尽くすほどに。

段々と世話も上手くいかなくなってきたある夜のこと。

頭の上から雷が鳴り始め、大雨が部屋に降り注ぎました。

リジ―にはどうしてなのかわかっていました。

そして翌朝・・・。

『リジ―と雲』の素敵なところ

  • 雲と一緒に暮らすという夢のような日々
  • 見た目も性質もまるで本当の雲のようなミロ
  • 寂しく優しい最後の場面

雲と一緒に暮らすという夢のような日々

この絵本の大きな魅力は、雲の世話をし、一緒に暮らせるところでしょう。

「空の雲に乗れたらな」

「雲をつかむことができたらな」

誰もが、そんな風に考えたことがあるのではないでしょうか?

この絵本ではそれを越え、雲を飼えてしまうのだから驚きです。

その姿はまるで、イヌやネコのよう。

毎日のお世話をし、散歩をし、リジ―のために雨を降らせてくれたりもするのです。

しゃべることはないけれど、気持ちが通じているところも、とてもかわいく思えます。

また、お世話の仕方がきちんと、細かく描かれているのもおもしろいところ。

これを見ておけば、もし自分が雲を飼うことになっても安心だと思えるくらいしっかりと書かれています。

子どもたちも、まるで自分のことのように、真剣に6つの約束を覚えようとしていました。

このリアリティが、雲を飼うという夢のような物語に現実味を与えてくれるのでしょう。

リジ―と雲との楽しそうな日々を見ることを楽しみつつ、自分が雲を飼いお世話することも一緒にイメージできるのです。

この雲と暮らす夢のような日々が、本当に起こりそうだと思わせてくれるのが、この絵本の素敵なところです。

見た目も性質もまるで本当の雲のようなミロ

さらに、雲との暮らしに現実味を与えてくれているのが、雲のリアルな描き方です。

この絵本では、リジ―はとてもかわいくデフォルメされています。

それに対し、雲はものすごくリアルに描き出されているのです。

雲ならではの陰影や、輪郭がぼやっとしたつかみどころのない感じ。

フワフワとした質感や、質量の少なそうな軽量感・・・。

どこをとっても、空に浮かぶ雲そのもの。

写真なのではないかと思えるほどにリアルなのです。

加えて、そこから降る雨の軌跡や、かかる虹も本物そっくり。

特に虹はその鮮やかな美しさと、透き通って今にも消えてしまいそうな儚さの両立がまさに本物の虹そのものです。

また、見た目だけでなく、世話の仕方の説明書に載っている雲の性質がリアルなのもおもしろく、

適度に水をあげないと消えてしまうこと

水をあげすぎると大雨を降らすこと

雲が小さい時には、急な雨を降らすかもしれないこと

など、まさに雲の性質そのもの。

見た目のリアルさと相まって、本当に雲を育て、一緒に暮らしている感覚にさせてくれるのです。

この夢のような物語に、雲の現実感が見事に融合しているのも、とても素敵なところです。

寂しく優しい最後の場面

さて、そんな物語の最後の場面は、とても悲しく優しいものでした。

雲がリアルに描かれているがゆえの宿命とも言えるでしょう。

人が世話をするには、やはり限界があったのかもしれない。

そんな自然の大きさや、雄大さを感じさせてくれる終わりでした。

けれど、そこにリジ―とミロの絆がしっかりと感じられるのが、この結末のとてもとても素敵なところなのです。

お互いに好きなことが伝わってくると同時に、どうしようもない思い通りにならなさも伝わってきます。

このままでいたいけど、このままではいられない残酷さ。

そこでの愛情や優しさがあるからこその、勇気ある決断。

様々な感情の末に辿り着いたこの結末。

それは悲しく、優しく、けれどとても美しくて幻想的。

きっと忘れられない物語になると思います。

そして、自分が雲を飼った時にどうしようかという加藤を感じることにも。

たくさんのことを感じ、考えさせてくれる終わりところも、とても素敵なところです。

二言まとめ

リジ―を通して、雲と一緒に暮らすという夢のような暮らしを体験できる。

同時に、一緒に暮らしているからこその悩みも味わう、色々な気持ちを感じられる優しい物語です。

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