文:森くま堂 絵:いわさきさとこ 出版:BL出版
イケメン河童のカッパーノはみんなの憧れ。
でも、ある日、自慢の皿が取られてしまった!
人気が地に落ちたカッパーノは、皿を取り戻すことを決意する。
あらすじ
ある河童の町に、輝く皿を持つ人気者の河童カッパーノが暮らしていました。
みんなカッパーノに夢中です。
しかし、ある日、カッパーノはカラスに皿を取れらてしまったのでした。
皿のないカッパーノを見て、町の河童たちは「もはや河童じゃない」と噂しあい、カッパーノの人気は地に落ちてしまいました。
カッパーノはバケツやネコ、リンゴなど、色々なものを頭に乗せてみました。
けれど、どれも上手くいきません。
そこでカッパーノは、ついに皿を探し出すことを決意し、町を後にするのでした。
山を越え丘を越え、人里に辿り着いたカッパーノ。
さっそく、住んでいる人々に、取られた皿を知らないか訪ねて回りました。
けれど、誰も知りません。
町中巡りましたが、皿は見つからず、気付けば夜になっていました。
空を見上げると、そこには皿のような綺麗な満月が。
そんな月を見て、カッパーノは輝く皿を思い出しながら、藁にもすがる思いで月へと祈りました。
すると、月の光が、ある家の窓を照らします。
そこにはピザを食べようとする男の姿が。
さらによく見ると、ピザを乗せている皿はカッパーノの皿ではありませんか。
勢いよく窓から飛び込むカッパーノ。
果たして、皿を返してもらうことはできるのでしょうか?
『カッパーノ』の素敵なところ
- カッパーノの扱いの落差がひどい
- 探している間もカラスに弄ばれるカッパーノ
- さらにイケメンになって帰ってきたカッパーノ
カッパーノの扱いの落差がひどい
この絵本のおもしろいところは、皿ひとつで河童の運命が大きく変わってしまうことでしょう。
カッパーノの皿は、他の河童とは輝きが違います。
明らかに特別製です。
さらに顔つきも違います。
切れ長の目に決まった髪型。
明らかにイケメンです。
けれど、町の河童たちが噂するのは、皿ばかり。
「お皿が素敵」
「あんなお皿が欲しいわあ」
と、皿へと羨望の眼差しを向けるのです。
河童にとって、どれだけ皿が大事かが伝わってきます。
だからこそ、皿を取られた後の扱いが悲惨です。
まさに手のひらを返したように、
「頭の上になんにも無いなんて」
「もはや河童じゃないね」
「みっともないわあ」
と、すごい言われよう。
カッパーノの情けない表情と相まって、最初のイケメンっぷりとのギャップがすごいことになっています。
最初は鼻持ちならない感があるカッパーノですが、ここまでどん底だと流石に応援したくなってくるからおもしろい。
皿ひとつで立場が180度変わる、河童界の厳しさと皿の重要性が、この冒頭でひしひしと伝わってくるのです。
探している間もカラスに弄ばれるカッパーノ
そう考えると、カッパーノが皿を必死で取り戻そうとするのにも、ものすごい納得感が生まれます。
山越え、野を越え、たどり着いた町で皿を探すカッパーノ。
民家、街頭、映画館に、本屋さん・・・。
大きな町中を駆け巡って探します。
なんとこの時、カッパーノのすぐ近くにカラスと皿が隠れています。
これも、この絵本のとてもおもしろいところです。
民家であれば、窓からカラスが顔を出し、洗い物に積まれた皿の中にカッパーノの皿が、
街頭では、ショーウインドウの中に、カラスがいて、マネキンの頭に皿が・・・。
というように、カラスと皿がセットで隠れているのです。
もちろん子どもは気付きます。
「うしろうしろ!」
「カラスいるって!」
「気付いて~!」
と、必死で訴えますが、カッパーノには届きません。
このカッパーノと町の人だけが気付いていないという構図が、たまらなくヤキモキしておもしろいのです。
カッパーノも子どもたちも、見事にカラスに弄ばれてしまう。
そんなところも、この絵本の楽しいところです。
さらにイケメンになって帰ってきたカッパーノ
さて、さんざん弄ばれて夜になってしまうカッパーノですが、お月様の力を借りて、ついに皿へと辿り着きます。
ですが、このまま皿を返してもらい、めでたしめでたしとはなりません。
窓から必死で飛び込んだのがいけませんでした・・・。
カッパーノを絶望させるアクシデントが起こってしまったのです。
けれど、絶望するカッパーノを見たおじさんから一つの大きな提案が。
これにより、カッパーノはさらにイケメンにパワーアップすることになるのです。
ただ、このパワーアップが人間にはよくわからず、
「えーそれでいいの!?」
となってしまうオチも、この絵本のおもしろいところ。
でも、カッパーノが幸せそうでイケメンに戻ったことだけは伝わってきます。
この圧倒的な絶望を感じるアクシデントからの斜め上な復活も、この絵本のワクワクドキドキするとて素敵なところです。
二言まとめ
皿を失った河童が、皿を取り戻すまでの、カラスに弄ばれ続ける旅がおもしろすぎる。
河童にとっての皿の大切さが、ひしひしと伝わってくる絵本です。
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