作:丸山誠司 出版:光村教育図書
獲物を獲ろうと、「しめしめ」と近づくカエル。
ですが、その後ろでは「しめしめ」と笑う別の生き物が。
そんな「しめしめ」がどんどんと繋がって・・・。
あらすじ
黄色い花が咲いています。
その花の蜜をミツバチが吸いに来ました。
そのミツバチの後ろから、「しめしめ」とカエルが近づいてきて、ハチを食べようとしています。
そのカエルの後ろから、「しめしめ」と大蛇が近づいてきて、カエルを食べようとしています。
その大蛇の後ろから、「しめしめ」とハゲタカが近づいてきて、大蛇を食べようとしています。
そのハゲタカの後ろから、「しめしめ」とティラノサウルスが近づいてきて、ハゲタカを食べようとしています。
そのティラノサウルスの後ろから、「しめしめ」と鬼が近づいてきて、ティラノサウルスのしっぽを捕まえました!
ティラノサウルスは驚いて叫び声をあげます。
その声に驚いて、ハゲタカも叫び声をあげます。
その声に驚いて・・・。
一体、食べられてしまうのは・・・?
『しめしめ』の素敵なところ
- どんどん増える「しめしめ」の列
- どんどん帰ってくる「逃げろ逃げろ」の叫び声
- 衝撃的な最後の結末
どんどん増える「しめしめ」の列
この絵本のなによりおもしろいところは、捕食者だと思っていたら、実は自分も食べられそうになっているという、立場の逆転でしょう。
しかも、それが1回のサプライズではなく、ページをめくるごとに起こります。
ハチを食べようとするカエルを、食べようとする大蛇を、食べようとするハゲタカを、食べようとするティラノサウルスを・・・。
という風に、どんどん列になって繋がっていく捕食者たち。
そして、絵本を見ている人しか、後ろから狙われていることに気付いていない状況がおもしろすぎるのです。
子どもたちも、
「うしろうしろ!」
「逃げなきゃ食べられちゃうよ!」
と必死に訴えながらも、次にどんな生き物が出てくるかとワクワク。
しかも、このワクワク感を盛り上げるかのように、捕食者がどんどん大きくなっていくからたまりません。
しまいには、ティラノサウルスや鬼まで出てくるのだから、
「ティラノサウルス―!?」
「オニおっきすぎー!」
と、そりゃ驚きが止まりません。
さらに収拾がつかなそうな状況に、「これからどうなるのか?」「どこまで続くのか?」とワクワクドキドキもどんどん膨らんでいきます。
このどんどんスケールが大きくなる「しめしめ」の連鎖が、この絵本のとてもおもしろいところです。
どんどん帰ってくる「逃げろ逃げろ」の叫び声
そんな列の終点は、オニでした。
なんと、オニは狙っているだけじゃなく、ティラノサウルスのしっぽを捕まえてしまったのです。
これには叫び声をあげずにはいれらません。
だって、食べられそうになっているのですから。
もちろん、叫び声をあげれば、「しめしめ」と狙っていた生き物に気付かれ、叫び声があがります。
その声がさらに前に・・・。
と、「しめしめ」とは逆に、今度は後ろから前へと「逃げろ逃げろ」が連鎖していきます。
行って戻ってくる流れがまあおもしろいこと。
さっきまで舌なめずりして余裕顔だった生き物たちも、うってかわって大慌ての表情になっています。
そのドタバタ感はまるでドリフのコントを見ているみたいです。
これには子どもたちも大笑い。
さらに、ハチの行動で場がもっとしっちゃかめっちゃかに。
もうその収拾がつかない混乱具合に、子どもたちはさらに大笑い。
「しめしめ」と狙われている緊張感からの、ものすごい開放感が、ただ頭を空っぽにして大笑いさせてくれます。
衝撃的な最後の結末
さて、そんなこんなで最後に残ったのは一匹の生き物だけでした。
これで、不安なくごちそうにありつけます。
子どもたちも、ドタバタが収まり、めでたしめでたしだと思っていた瞬間事件は起こるのです。
この結末が衝撃的過ぎて、子どもたちも「え・・・?」と一瞬時間が止まるほど。
本当に「しめしめ」と思っていたのは、意外な生き物でした・・・。
この最後の大きすぎるどんでん返しも、この絵本のとてもとてもおもしろいところです。
きっと一週目と二週目では、あの生き物に対する見方が180度変わっていることでしょう。
二言まとめ
緊張感ある「しめしめ」の連続から、一気にドタバタ劇になるのがおもしろすぎる。
最後の結末の衝撃に、ドタバタ劇の笑いが一瞬で吹っ飛んでしまう絵本です。
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